エアコン住民投票:設置賛成5万対反対3万…市の判断は?

毎日新聞 2015年02月15日 23時37分(最終更新 02月16日 02時08分)

開票作業が進む所沢市の住民投票=埼玉県所沢市並木の市民体育館で2015年2月15日午後9時4分、大島英吾撮影
開票作業が進む所沢市の住民投票=埼玉県所沢市並木の市民体育館で2015年2月15日午後9時4分、大島英吾撮影

 埼玉県所沢市で15日、航空自衛隊入間基地に近い防音校舎の小中学校にエアコンを設置すべきかどうかを問う住民投票が行われた。即日開票の結果、賛成が5万6921票で反対の3万47票を上回ったが、投票率は31.54%にとどまり、市条例の「多数票が投票資格者の3分の1以上」の条件を満たさなかった。

 条例は「多数票が投票資格者の3分の1以上の場合、市長や市議会が結果の重みを斟酌(しんしゃく)しなければならない」と定めている。投票者数は8万7763人で、投票資格者数は27万8248人。無効は795票。

 条例に基づけば、エアコン設置中止の方針が変更される可能性は低くなった。しかし、今回の賛成票数は藤本正人・所沢市長が2011年の市長選で獲得した3万8655票を大きく超え、市が自発的に方針を変更する余地は残っている。

 エアコンの設置が問題とされたのは、市立の47小中学校のうち自衛隊機の騒音対策として特殊サッシなどの防音対策が施されている防音校舎29校。市は2006年にエアコンの設置方針を決定し、1校への設置を2億1700万円で完了後、新たな2校への設置準備を進めていた。

 しかし、11年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の同年秋の市長選で当選した藤本市長が「これまでの(快適で便利な)生活を変えるべきだ」と方針を転換。準備していた2校へのエアコン設置を取りやめていた。

 このため、エアコンの設置が中止された中学の保護者代表らが「(エアコンのない不快な環境で)生徒らの学習する権利を妨げてはならない」と住民投票条例を直接請求し、市議会が昨年12月に可決。今月8日、住民投票が告示されていた。

 自衛隊機の騒音について、藤本市長は、12年に市が実施した測定結果に基づき、多くの人が「うるさい」と感じる70デシベル以上を記録したのは1日平均4・8回しかなかったと主張。これに対し、保護者側は専門家が調査した別の測定結果を参考にして「(市長の測定方法は)実態と合っていない」と反論していた。【海老名富夫】

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