「もやし」が一大事!悲鳴をあげる生産者

岐路に立つもやし(後篇)

2015.01.23(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 緑豆の値上げにかかわらず、スーパーなどはむしろもやしの小売価格を下げている。客寄せの目玉商品と化しているのだろう。

 「20年前は1袋40円ほどでした。いま、平均29円ほどですが、40円にしていただければ、日本のもやし生産者はなんとか生きていけると思います。消費者のみなさんにもこの点のご理解とご支援をお願いしたいと思います」(林氏)

 同協会には、中国産のもやし向け緑豆を、栽培コストのより安いミャンマーで栽培して、同質の原料豆を収穫できるかなどを検討していく予定もあるという。生産者の窮状打開への模索が続く。

もやしの真価を見つめ直そう

 江戸時代から近現代に時代が移り、もやしは日本に広がった。さらに戦後、日本人の食の多様化が進む中で、どんな料理とも相性のよいもやしの価値は、高まっていったと言えるだろう。

 そんなもやしに訪れた危機。

 旭物産では、わりと高い値で売られる、野菜ミックスもやしなどの商品に力を入れていくという。だが、もやしという食材自体の収益改善が図られるわけではない。もやしのみを製造するメーカーなどは廃業を余儀なくされていく。「もやし生産者は激減しています。この5年間でも、208社から148社まで減りました」(林氏)。

 業界の構造的問題であるため、消費者ができることはそう多くない。だが、いま、もやしの真価を見つめなおすことはできる。豆からは想像できない食感と風味。どんな料理とも調和し、栄養価も高い。そして手頃な値段。

 身近すぎる食材ゆえに見過ごされがちだったもやしへの関心が高まるとき、日本のもやしの行く末にほのかな光明が差してくるのではないだろうか。

【訂正】 記事初出時に、旭物産のもやし生産量について、「1日60万トン」とありましたが、正しくは「1日60トン」でした。記事内では修正済みです。(2015年1月23日)

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漆原 次郎 Jiro Urushibara

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の安全に対して国民の関心が高まっている。国民が健康を意識しているのはもちろんだが、今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。このコラムでは、日本や世界における食の安全への取り組みを様々な角度から取り上げていく。