Updated: Tokyo  2015/02/16 19:15  |  New York  2015/02/16 05:15  |  London  2015/02/16 10:15
 

「黙って乗っ取る」ブラムソン氏の投資戦術-シティーが動揺

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  (ブルームバーグ):「乗っ取り屋」の異名をとるエドワード・ブラムソン氏は寡黙なニューヨーカーだが、シティーの流儀に反するやり方がロンドン金融界を揺るがしている。ブルームバーグ・マーケッツ誌3月号が報じている。

サドラーズ・ホールに集まったのは、ロンドンでも有数の古い歴史を誇る株式上場のプライベートエクイティ(PB、非公開株)投資会社、エレクトラ・プライベート・エクイティ の株主。華麗な装飾のシャンデリアの下で激しい議論が繰り広げられると予想していた。同社の役員や経営陣は会場の前列に陣取り、遅く会場入りしたブラムソン氏と同氏が率いるシェルボーン・インベスターズの面々は後列に座った。

この会合が開かれた昨年10月、シェルボーンはエレクトラの株式20%を取得しており、同社取締役会から1人を排除しブラムソン氏ともう1人を加えるよう提案、株主説得を図っていた。数週間前の書簡で同氏は、エレクトラ がポートフォリオの運用を誤り、コスト構造に問題があるほか、キャッシュの活用が不十分だと批判していた。

エレクトラのロジャー・イエーツ会長はブラムソン氏提案に対する取締役会の反対決議を説明し、出席者に質問を募った。会場中が一斉にブラムソン氏に注目したが、この青白い顔をした銀髪の紳士は一言もしゃべらず、沈黙を守った。株主の1人が立ち上がり、ブラムソン氏と会ったが良い印象は持っていないと述べた。もう1人がこの委任状争いそのもののコストに不満を表明した。

米国流

次に発言したのは英国でも有数の名家の出身であるエドワード・ボナムカーター氏。ジュピター・アセット・マネジメントの副会長だ。「ブラムソン氏は10億ポンドもの価値が未発掘だと考えるのなら、当社を買収してはいかがだろうか」と述べた。

この言葉こそ、ロンドンの金融界がブラムソン氏に対して抱く不安を浮き彫りにするものだ。買収資金を差し出さずに主導権を要求する米国人のやり方に、英国流とは全く異質のものをシティーは感じている。同氏はこの戦略で、2003年から6度にわたって英企業を標的としてきた。注目を集めるようになったのは10年。1868年創業の歴史を誇るF&Cアセット・マネジメントに狙いを定めて以降だ。

この投資はシェルボーンに成功をもたらし、F&Cの株価は75%上昇、ブラムソン氏を一躍有名人にした。ロンドンの新聞は同氏をニューヨークからやってきた乗っ取り屋として書きたて、由緒ある英国企業を片っ端から「囲い込み」、「芝生に戦車で乗り付けた」と表現した。

ブラムソン氏には反論がある。しかし、今回の会議では説明しなかった。採決では株主の61%がシェルボーン の案に反対票を投じた。敗れたブラムソン氏は一言も発することなく会場を去った。

寡黙な物言う株主

エレクトラの株主採決で喫した敗北は、ブラムソン氏のアクティビスト(物言う株主)としてのキャリアの中ではめずらしいことだ。同氏は常に静かに行動する。投資を決めたらまず、その会社が抱える問題点を株主に書簡で説明する。ただ、経営陣を公に批判することはしない。ビル・アックマン氏やカール・アイカーン氏とは違う。長時間に及ぶ記者会見を開いたこともなく、ターゲット企業についてテレビでまくし立てたこともない。

エレクトラ株主総会から約1カ月後、ブラムソン氏はマンハッタンのオフィスで非常に珍しくインタビューに応じ、自身の投資手法について語った。同氏によるとここ数年、実に様々な異名を付けられてきた。「企業乗っ取り屋」や「ハゲタカ投資家」などはまだましな方だという。

ブラムソン氏の投資手法は、経営に積極的に参加して内部からの変革を導き出す。できれば会長ポストがいいが、取締役会で少なくとも1議席を獲得する。その後は疑問を解消し話を聞くために、1カ月か2カ月かけて会議を重ねる。「セオリーはほとんど変わらないが、実際にどのように適用し、最終的にどうするかはそのたび異なる」という。

「崖から落ちる」

寡黙であることは、事業好転を図る上で戦術的に理にかなうとブラムソン氏は言う。早い段階で狙いを詳細に明らかにすれば、社員らの抵抗に遭い、後々必要な支持を得られなくなるかもしれない。「人間というのは大抵の場合、公に反対意見を言わないものだ。そういう行為がキャリアの面で望ましくないからだろう。だから反対する人は実際にどうするかというと、あなたを助けないという姿勢で抵抗する。つまりじっと動かず、あなたが崖から落ちるのを見守るわけだ」。

エレクトラの委任状争奪戦での敗北は予想外だったというブラムソン氏は、「正直に言って、行けると思っていた」と語る。その一方で、エレクトラでは同氏が提唱した変革が一部実行されているのだという。10月の株主会議のすぐ後に、同社は手数料構造の戦略的見直しを発表した。「われわれは今でも最大株主であり、事態の展開を見守るつもりだ」とブランソン氏は述べた。

実際のところ、シェルボーンはエレクトラ株 を10月以来買い増し、現在の持ち株比率は約24%だ。シェルボーンが最初に株式を取得した14年2月からエレクトラ株は22%急伸した。利益としては上々だが、ブラムソン氏の狙いはもっと大きい。次の一手は何か。シティーは注意してこの寡黙なアクティビストの一挙手一投足を見守らなくてはならない。

原題:Raider Bramson Pursues U.K. Fund Managers One Campaign at a Time(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Jeremy Kahn jkahn21@bloomberg.net;ロンドン Kiel Porter kporter17@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 西前 明子

更新日時: 2015/02/16 07:30 JST

 
 
 
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