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規制委、最悪の想定甘く 原発「過酷事故」審査、専門家が疑問視 注水遅れ試算10分まで

2015年02月16日(最終更新 2015年02月16日 00時16分)

 原発が新規制基準を満たしているかどうかを判断する原子力規制委員会の審査が「不十分」とする声が専門家の間で高まっている。特に原子炉(鋼鉄製)内で核燃料の温度コントロールがきかなくなり、核燃料などが超高温になって炉を破損する過酷事故対策を疑問視。事故ともなれば大混乱が予想されるが、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の場合、九電は注水作業の遅れを計画より10分遅れまでしか想定していないのに、規制委は新基準に適合とした。専門家の試算では35分遅れると事故は防げない恐れが高まり、「作業遅れの影響評価が不十分だ」と指摘する。

 問題点を指摘するのは、旧原子力安全委員会事務局で8年間、技術参与だった滝谷紘一さん(72)=埼玉県所沢市=ら。

 大地震などで原子炉につながる配管が破断し、注水によって核燃料を冷やせなくなった場合、電力会社は移動式発電機車をつなぎ、原子炉格納容器内で注水を再開。原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する燃料などの炉心溶融物を徐々に冷やす対策を行う計画だ。溶融物を冷やせないと事故の進行を止められず、外部に放射性物質が漏れ出す恐れが一気に高まる。

 九電は、この事故発生から原子炉が破損し、炉心溶融物が流出するまでの時間を川内1、2号機では約90分と推定。だが作業員の人員態勢などを基に49分後には注水を再開し、キャビティーには水位約1・3メートルの水をプールのように貯水でき、落下溶融物を十分に冷やせるとした。さらに、注水作業が計画より10分遅れ、事故発生から59分後に始めても、水位約1メートルの貯水が確保できることをコンピューター解析で確認したとしている。

 滝谷氏は、東京電力福島第1原発事故直後の大混乱を念頭に、この作業遅れを10分までしか想定していない点を疑問視する。

 規制委は昨夏、注水再開が35分遅れた場合の過酷事故の進行モデルを公表している。これに基づき滝谷氏が試算したところ、35分遅れでは川内原発の貯水水位はわずか20センチ、玄海3、4号機では、注水前に溶融物が落下することになり、冷却が難しくなる。

 ところが規制委は、過酷事故対策で作業の10分遅れまでしか想定していない川内原発について、新基準を満たすとした「審査書」を決定した。12日に審査書を決定した関西電力高浜原発の過酷事故対策も、川内原発とほぼ同じだ。

 滝谷氏は「35分遅れる想定だと、事故を食い止められない解析結果となるのを恐れ、あえて計算、審査しなかった疑いがある。福島の事故を考えると、さらに作業が遅れることもあり、規制基準を満たしているとは言えない」と批判。原子力規制庁も「10分以上作業や判断が遅れれば、この対策が機能しなくなる恐れが出てくる」と認めている。

=2015/02/16付 西日本新聞朝刊=

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