スターバックス コーヒー ジャパン

プロジェクトストーリー Ⅰ

プロジェクトストーリー Ⅰ

プロジェクトストーリー Ⅰ

inspired by STARBUCKS™

まったく新しいコンセプトのストアを創る

1996年、銀座松屋通りに日本一号店を出店してから17年。スターバックスは、ついに1,000店舗の規模に到達した。1,000店舗の節目を超えて、さらに成長し続けるためには、いったいどのような戦略を取るべきなのか?

既存の店舗の成長を継続させることに加えて、プラスアルファの成長戦略を模索するプロジェクトが、今、動き出している。そのひとつが、2013年4月、東京 二子玉川の閑静な住宅街にオープンした「inspired by STARBUCKS™」だ。

にぎやかな繁華街やビジネス街、ショッピングモールへの出店が多かったスターバックスが、閑静な住宅街にサードプレイスを創ろうとするその狙いとは?

そこには、ビジネスの拡大にとどまらない、コーヒーを通じたサービスの追求と、スターバックスで働くバリスタたちへの想いが込められている。

“夢”のあるビジネスを

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プロジェクトの始まりは、当時マーケティング本部に在籍していた根岸に投げかけられた「スターバックスがビジネスを拡大するとしたら、なにをするべきか考えてみて欲しい」という一言だった。社内外にアンテナを張り巡らせ、さまざまな分野の情報収集を行っていく過程で、根岸は「パートナーが、あの店で働きたいと思うようなカフェをつくりたい」という想いを強くしていく。結局は、働く人の気持ちが動かなければ、ビジネスは強くならないのではないのかと。

根岸の活動がチームとして動き出すのは、後のプロジェクトリーダーとなる、当時経営企画室の山田が参画してからのこと。山田は経営陣と何度も議論を重ねながら、自らの想いを確固たるものにしていった。「単にビジネスを拡大するだけでは“夢”がない。スターバックスで働くパートナーが、未来に希望が持てるようなプロジェクトにしたかったんです。」と山田は当時を振り返る。それは、山田と根岸の想いが見事にシンクロした瞬間でもある。

新しい日本の“KISSATEN(喫茶店)”を模索する

さらに情報収集と議論が積み重ねられる中で、徐々に新しいカフェのあり方が具体化されていく。二人がたどり着いた結論、それは「住宅街の中にある、落ち着いた雰囲気でコーヒーを楽しめるカフェ」だった。昔から住宅街にある小さな喫茶店。その日本の古き良き喫茶店“KISSATEN”文化をスターバックスらしいアプローチでとらえ直そうというのだ。地元で集い、くつろぎながらコーヒーを楽しむ習慣に新しい風をもたらすことで、消費者の生活に新たな価値を提供できるのではないのかと。

このアイデアには、いくつもの利点があると山田は言う。「住宅街立地でのフォーマットが確立できれば、ビジネスの可能性はさらに広がります。住宅街の場合は客数を望めない一方、ひとりひとりのお客様とじっくり向き合うこともできます。忙しい既存のお店では展開できなかったラテアートやハンドドリップなどのコーヒーを提供することでサービスの幅も広がりますし、パートナーの働き方の選択肢を広げることにもつながりますので、新たなモチベーションになってくれると思うんです。」

二人は、さまざまな想いを集約して、ひとつのコンセプト・ワードを設定した。「Your Neighborhood and Coffee」。このお店が大切にしている2つのことをストレートに表現した。

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KISSATENのビジネスモデルを再構築

最大の問題は、客数の少ない住宅街でいかに利益をあげるかだった。プロジェクトチームが出した答えは、既存店にとらわれない商品を開発し、そのマーケットのお客様に合った満足度の高いサービスを提供することだった。目標の売上や利益と、提供したいと思っているサービスに必要な設備コストや仕入れコストを何度もシミュレーションする。そして、立地、商品、サービス、設備、内装、ビジネス、すべての領域を網羅する形で新しいビジネスモデルを完成させるために大胆な発想で創造していく。

店舗名には、米スターバックスCEOのハワード・シュルツから、「inspired by STARBUCKS™」というブランド名をプレゼントしてもらった。

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おもてなしをドリンクで表現する

商品開発を担当することになった清水は、ビバレッジのスペシャリスト。「コーヒー ジェリー フラペチーノ®」を開発し、ヒットさせた立役者である。

inspired by STARBUCKS™で提供しているドリンクメニューについて、清水は「友人宅に遊びに行って、おもてなしされているような気安さとくつろいだ感じが、このお店にはフィットするだろうと思いました。」と言う。珍しい食材を使うことも、華美な演出をすることもない。それは、お店で表現したいコンセプトと雰囲気を重視してのことだ。それでも、人を楽しませることは忘れない。

「なじみの素材でつくったドリンクであるものの、実際に口にした瞬間、その楽しさが伝わるように細部まで気を配りました。また、ドリンクは、味や香りだけで楽しむものではありません。ドリンクを仕上げるプロセスや、容器、見た目の美しさ・楽しさなども商品の一部だと思うのです。そういったことをトータルに考えて開発に取り組みました。」

また、このお店の商品開発のノウハウは、既存のお店にも良い循環をもたらすと言う。

「既存の店舗では、容器や機材、ドリンクの作成時間に制限があったりして、これまで実現できなかったアイデアがたくさんあります。この店舗ではもっと自由度がありますから、私たちの商品開発の幅を広げてくれるはずです。近い将来、ここでの経験が、既存店のビジネスに役立つこともあると考えています。」

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魅せるコーヒー ─ 具体化する店舗創り

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想いやアイデアだけでビジネスは始まらない。コンセプトを図面に落とし込み、カフェ空間、調理スペースを実際に形作っていったのは、これまで1,000店以上のお店を開けてきた店舗開発の精鋭たちだ。そして、見落とされがちなのが、パートナーたちの“仕事”をデザインし、機材選定や配置関係、業務プロセスに落とし込んで具体化していくこと。それを担当したのが中元だ。

店長として長年勤務したのち、抽出機材の選定や管理を担当していた中元は、美味しいコーヒーをいれる「技術」のスペシャリストでもある。

「最初に、コーヒーの“美味しさ”を見つめなおしてみました。もちろん味や香りも重要ですが、目の前で、人が気持ちを込めて、手間をかけて作ってくれたと思うと美味しく感じるという側面もあると思うんです。新しいお店では、バリスタの顔と気持ちが見えて、そして、味わえるコーヒーを提供したいと思いました。」

inspired by STARBUCKS™では、カウンターをはさんだお客様とバリスタとの会話を重要視している。ラテアートやハンドドリップなど、お客様の目の前でコーヒーをいれ、ドリンクを仕上げていく姿も、その時に伝えられるコーヒーの知識やお客様を想ってかける一言も、味わいを広げるスパイスになるのだ。

幕開け

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inspired by STARBUCKS™の一号店店長を任されたのは宮崎だ。「一号店は、そこからブランドの歴史が始まっていく象徴。お客様に新しいブランドの価値をしっかりと感じていただけるようなお店にしたい。」

全てが順調に進んできたわけではない。さまざまな困難に直面し、それを乗り越えた分だけお店への思い入れが強くなる。精神的なタフさを持つ宮崎だが、それでも、「オープン日の朝に、お店の灯りをつけた瞬間に、お店の外から拍手が聞こえてきたんですね。オープン前から楽しみに待っていてくださったお客様が列をつくっていたんです。さすがに、いろいろ思い出して熱いものが胸にこみ上げてきました。」と言う。

最後に、プロジェクトメンバーにたずねてみた。

── オープンも大変だったとは思うのですが、達成感・満足感を感じながら美味しいお酒を飲めるのはいつになりそうですか?

「具体的にいつとは言えないですが、まだトライアル段階なので、これからが本番です。お客様からも評価されて、きちんと利益も出るようになって、社内からも、お客様やデベロッパー様からも『うちのエリアにもinspired by STARBUCKS™をつくってくれ』って言われるようになったときじゃないですかね。」

お客様もパートナーも幸せになる新しいビジネスを創る。

スターバックスの挑戦は、今日も続いている。

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店舗開発本部 店舗開発戦略部 業態開発チーム
部長 兼 チームマネージャー
山田 英輔 EISUKE YAMADA
店舗開発本部 店舗開発戦略部 業態開発チーム
根岸 豊 YUTAKA NEGISHI
店舗開発本部 店舗開発戦略部 業態開発チーム
中元 雅也 MASAYA NAKAMOTO
マーケティング・カテゴリー本部 カフェプロダクト部 ビバレッジチーム
清水 拓 TAKU SHIMIZU
inspired by STARBUCKS™ 玉川3丁目店
ストアマネージャー (SM)
宮崎 哲夫 TETSUO MIYAZAKI
Frappuccino®に、更なるイノベーションを

※組織名称は2013年12月1日現在のものです。