みなさん、お久しぶりです!
やっとやっとブログ更新できました。
今日は、9月のSS書いたのでその掲載をします。
その前にちょっとお知らせを。
我がお姉ちゃん、伊勢原ささらさんの電子書籍『アイスドールは恋愛禁止』が、Hontoさん、Amazonさんなどたくさんの書店さんで取扱い始まりました。
ぜひチェックしてみられてください。
そしてもうひとつ。
我がトライアングルのメンバー、墨谷佐和さんのイラストカードSSが、対象商品についてくるフェアが行われています。
こちら← (ちるちるさん)
コミコミスタジオさんでも行われています!
です。ぜひぜひチェックしてみられてください。『シェアパラ』の番外編SS、未発表の新作ですゾ!
それでは、私のSSです。
今月の幹事は甘楽さんです。ブログはStage Direction 素敵なお題をありがとうございます。
私が選んだのは(A)タイプ。
(A) 5つのワードから、3つ選んでストーリーを作って下さい。
「猫」 「蜜」 「月」 「動く」 「赤」
(Aの補足)
動くは動詞として用い、動いた、動かす、などに変形させても構いません。
名詞は不可とします。
「猫」 「蜜」 「月」 「動く」 「赤」
(Aの補足)
動くは動詞として用い、動いた、動かす、などに変形させても構いません。
名詞は不可とします。
ということでね、私は5つすべてのお題キーワードを入れて書いてみました。
文字数は、かなりオーバー気味の4887文字。えろも入ってないのにごめんなさい。
タイトルは『守りたい、ずっと…』
やめた、と言ったはずの日常ものです。
実はこれ、間もなくJガーデン37に出品を予定している私の新刊同人誌の番外編SSになっています。
でも、まだこれ誰も読んでないと思うので、初読でも大丈夫なようになっております。
ただのSSとしてお読みいただければと思います。
同人誌用の原稿を改稿して、そのままの勢いで書いてしまいました。
日常もの、とか言って舞台がアメリカなのが沙色ですが(笑)
ではでは、お時間のある方だけ、続きからどうぞ。
☆拍手コメント、返信不要とおっしゃってくださいましたTさん。コメント嬉しく拝読しました! またどこかでお会いしましょう。
☆---------------------------------------------------☆
『守りたい、ずっと…』
休憩時間に店から下りて外に出ると、カリフォルニアの午後の太陽が眩しい。
ポケットのサングラスをかけ、通りを横切って本屋に向かう。今日は、脩が気に入っている日本のファッション誌の入荷日だ。
日本を離れて、もう八年になるのか、と思う。
外国での暮らしに慣れ、英語も不自由なく使えるようになったのに、日本語で書かれた書物はいつも脩の心を癒してくれる。
いつ帰国するかもわからない。いや、もう一生帰らないかもしれないのに、気になってしまう。いま日本でどんな服が流行っているのか。どんな髪型がトレンドなのか。
そして彼はいま、誰と、どうしているのだろうかと。
目当ての雑誌を手に入れて、車の流れが途切れるのを待つ。大通りの向こう側、ドラッグストアの二階にあるヘアサロン『FREEDOM』がいまの脩の仕事場だ。二十歳のときに日本を出て、ロサンゼルスのヘアスクールに二年通った。その後ニューヨークやフロリダを転々として、去年からまたロサンゼルスに戻ってきている。
少々強引なタイミングでガードレールを乗り越え、通りを横切ったら古ぼけた白のキャデラックが思い切りクラクションを鳴らした。
「まあまあ、うるさいわねえ、昼間っから」
一階のドラッグストアから、日系人のヒロエ小母さんが顔を出す。
「すいません、俺が無理やり渡ったから」
「いいのよう、クラクションより前に、ブレーキ踏めっての」
のんびりとした口調で話しかけてくる。ヒロエは今日も愛猫のマーシャを腕に抱いていた。
「ご機嫌だね、マーシャ」
このあたりには珍しい三毛猫の頭を撫でてから、サロンへの階段を駆けあがる。スタッフルームに戻ってコーヒーを淹れ、残りの休憩時間を買ったばかりの雑誌とともに過ごす。
ページをぱらりとめくると、一面にスマートフォンの広告が載せられていた。
『いつでも君と繋がっていたい』
童顔の男性アイドルが満月の下でスマートフォンを操作している写真だった。そのアイドルが、どことなく彼に似ている。
――雅也……。
やわらかそうな茶色の髪も、少し目尻の下がった愛嬌のある顔立ちも、甘えるように小首を傾げたしぐさも。
もう十年も前のことだ。雅也とふたりで夜の埠頭に行き、この写真と同じような満月を見たのは。
あのとき彼が伝えようとしたことを、脩が止めた。
彼の気持ちはわかっていた。わかっていたから聞けなかった。聞いてしまったらあの夜の埠頭で、脩は獣のように雅也を奪ったかもしれない。
好きで好きで、どうしようもなかったから、雅也の人生に傷をつけるのが怖かった。
脩がどうしても手に入れられないものを、雅也はすべて持っていた。あたたかい家族も、周囲の人々を和ませるやさしさも、他人に譲れる強さも全部。
だから大切にしたかった。雅也の人生を壊したくなかった。少なくとも自分のせいでだけは。
「シュウ、どうしましたか? 具合でも悪いんですか」
問いかけられてはっとした。振り向くと、店主のデニーが心配そうに眉を寄せている。
「いや、何でもないです」
「そうですか。ずいぶん苦しそうな顔してたから、頭でも痛いのかと思いました」
日本人の奥さんを持つデニーが、少したどたどしい日本語で語りかけてくる。白に近いプラチナブロンドに青い目を持つイケメンだが、髪がやや薄目なのが残念だ。
『ボクは自分のヘアに手がかからない分、みなさんの髪のお世話したいんです』とは、ひょうきんなデニーの口癖だ。
「それ、日本の雑誌ですね。ウチの奥さんも愛読してます」
デニーが脩の持っていた雑誌を興味深そうにのぞき込んできた。そして、例のスマートフォンの広告に目を留める。
「日本のオトコノコ、可愛いです。みんなこんな感じなんですか?」
「いや……、俺みたいのもいるから」
脩は身長百九十二センチ。日本人としては破格のサイズだ。顔立ちも目つきも鋭くて、そんな自分が嫌いだった。無意識に周囲を威嚇してしまう自分の容貌や、醸し出す陰鬱な雰囲気が。
「確かにシュウはアメリカ人の中でも大きいほうですね。でもそれ、いいことです。愛する人を守る力、強いです」
「……」
返答に詰まって、脩は黙り込む。自分はその愛する人を、守るどころか一緒にいることすらできなかった。
高校時代、バレー部のエースアタッカーだった脩と、セッターだった親友の雅也は、ゴールデンコンビと言われ、母校をインターハイまで導いた。
雅也のあげるトスは、脩の心を読んだようにピンポイントであがってきた。ふたりの間にサインはいらない。試合中もそれ以外の時間も、友人たちが呆れるほど一緒にいて、少しも違和感を覚えなかった。
水商売の母とふたり暮らしで孤独だった脩は、部活が終わると毎日のように雅也の家に行き、家族同然に夕飯をもらい、夜中まで雅也と過ごした。そんな日々が永遠に続くのだと思っていた。
高校三年の、あの夏までは。
インターハイが終わって家に帰ると、土色の顔をした母が「ごめんね」と言った。「母さん、末期ガンだって」と。
母子家庭で育った脩は、余命一年と宣告された母を置いて地元九州を出るわけにはいかなくなった。だから、家族の転勤と同時に東京の大学への進学を希望していた雅也に、そのことを話せなかった。
話したら、雅也は絶対に東京に行かない。地元の大学に進み、母の看病に明け暮れる脩を支えると言ったはずだ。
だから、言えなかった。
誰よりも雅也のことがわかっていたから、彼が自分を強く思ってくれていることがわかっていたから。
そうして脩は、自分の退路を断つために、バレー部のマネージャーだった梶原さゆりと交際を始めたのだ。
彼女を好きになりたいと思った。そうやって雅也と別の道を進んで、いつか大人になったら友人として会える日も来るかもしれないと。
それなのに十年経っても脩はまだ、少しも雅也を忘れられない。見知らぬ日本のアイドルに彼の面影を探してしまうほどに。
仕事を終えて外に出たら、カリフォルニアの空に丸い月が出ていた。アメリカで見る月は、日本のそれより黄色く見える。
昼間とは打って変わって肌寒い空気に上着の襟を合わせて歩き出すと、シャッターの閉まったドラッグストアの前に猫のマーシャがいた。
「こら、出歩いてるとヒロエさんが心配するぞ」
丸くうずくまった姿が可愛くて、傍らにしゃがみ込む。
それほど動物好きでもなかった脩だが、マーシャだけは大好きだ。ヒロエが「マーシャ」と呼ぶのが、どうしても「マサ」と聞こえる。脩はいつも、雅也のことをそう呼んでいた。
少し垂れ目なところも、色素の薄い蜂蜜色の瞳も、どことなく雅也に似ているような気がする。こんなことを思うことじたい、末期症状だとわかってはいるのだが。
そのとき、至近距離から猫の鳴き声が聞こえてきた。ふと見ると、隣の酒屋の石塀の上に見知らぬ猫がいる。煌めく緑の瞳で、脩を威嚇するように睨みつけている。
「なんだよ、おまえ、彼氏がいたのかよ」
そういえば季節はそろそろ秋。猫も恋のシーズンだ。
仰ぎ見る空には蜂蜜色のフルムーン。ポケットからスマートフォンを取り出してみても、雅也の連絡先は登録されていない。そもそも彼がいま、どこでどうしているのか脩は知らない。
脩と雅也は繋がっていない。
雄猫の鳴き声に追い立てられるようにして、脩はその場を立ち去った。
昼間とは打って変わって肌寒い空気に上着の襟を合わせて歩き出すと、シャッターの閉まったドラッグストアの前に猫のマーシャがいた。
「こら、出歩いてるとヒロエさんが心配するぞ」
丸くうずくまった姿が可愛くて、傍らにしゃがみ込む。
それほど動物好きでもなかった脩だが、マーシャだけは大好きだ。ヒロエが「マーシャ」と呼ぶのが、どうしても「マサ」と聞こえる。脩はいつも、雅也のことをそう呼んでいた。
少し垂れ目なところも、色素の薄い蜂蜜色の瞳も、どことなく雅也に似ているような気がする。こんなことを思うことじたい、末期症状だとわかってはいるのだが。
そのとき、至近距離から猫の鳴き声が聞こえてきた。ふと見ると、隣の酒屋の石塀の上に見知らぬ猫がいる。煌めく緑の瞳で、脩を威嚇するように睨みつけている。
「なんだよ、おまえ、彼氏がいたのかよ」
そういえば季節はそろそろ秋。猫も恋のシーズンだ。
仰ぎ見る空には蜂蜜色のフルムーン。ポケットからスマートフォンを取り出してみても、雅也の連絡先は登録されていない。そもそも彼がいま、どこでどうしているのか脩は知らない。
脩と雅也は繋がっていない。
雄猫の鳴き声に追い立てられるようにして、脩はその場を立ち去った。
それから二ヶ月ほど経った頃、休憩時間に店の外に出たら、ドラッグストアの前でヒロエに呼び止められた。
「脩、ちょっといらっしゃい。いいもの見せてあげる」
手招きされて店の前に行くと、マーシャの隣に籐の籠が置いてあって、子猫が四匹入っていた。ひとつは白猫、あとの三つはグレイの縞模様だ。
「わあ、可愛いっすね」
「でしょう? どう、ひとつ持っていかない?」
「え……」
「いつもマーシャを可愛がってくれてたでしょう? 猫好きなんじゃないの」
「あ、いや……」
脩は激しく逡巡した。猫は可愛いと思う。マーシャの子供ならなおさら。
「でも、俺は……」
いつ日本に帰るかもわからないし、と続けそうになって驚いた。この八年、日本に帰ろうと思ったことなど一度もない。
帰りたくなかったのだ。雅也が幸せに暮らしている姿を見るのが嫌だから。
彼も二十八歳。もう結婚して子供もいるかもしれない。いや、それならばまだいい。彼に男の恋人でもいたら……。
そう思うと怖くて、日本に帰国するという選択肢からずっと逃げていた。
「やっぱりやめておく?」
ヒロエが少々落胆した声を出したときだった。
籠に入っていた白い子猫が、何を思ったかぴょんと床に降りてとことこと歩きだした。あっと思うまもなく歩道を越え、ガードレールの下をくぐって車道に出てしまった。
脩が追いかけようとするより早く、マーシャが飛び出していって白猫をくわえた。ほっとしたのもつかの間、通りの向こうから大型トラックが猛スピードで走ってくるのに気づいて、マーシャが動きを止めた。驚きと恐怖で、身体が固まってしまったのだ。
「危ない!」
叫ぶより早く、脩は身を翻していた。
トラックの前に飛び出して、マーシャと子猫を抱きあげる。耳をつんざくようなブレーキ音とクラクションが響いた。
自分のことは考えなかった。ただマーシャと子猫を守りたくて、背中を丸めてガードレールに身を寄せる。ぎりぎりのところをトラックが通過していって、爆風に髪が逆立った。
「ばかやろう! 何してやがる!」
数メートル先で停車したトラックの窓から、髭面の男が顔を出す。
「そっちこそふざけんな! 前見て走れ、このタコ!」
負けずに言い返すと、男が忌々しげに唾を吐き捨てる。そのままトラックは発進していった。
「脩、あなた、大丈夫なの!」
ヒロエが悲鳴をあげて駆け寄ってきた。
立ちあがってガードレールを乗り越えても、まだ鼓動が治まらない。
もし、あのままマーシャが轢かれていたら。
想像しただけで、心臓が破れそうになる。
「まあ、いったいどうしたの? 脩」
驚いた声で気がついた。脩の頬を、熱い何かが流れている。
「どうしましたか。大丈夫ですか」
二階の店で騒ぎを聞きつけたデニーも外に出てきた。
「あ……」
何か言おうと思ったのに、声が出なかった。
よかった。マーシャが生きていてくれてよかった。子猫が無事で。
そんな思いだけが狂おしいほどこみあげてきて、言葉にならない。
「シュウ……」
デニーが傍らにやってきて、脩の肩を抱いた。
「キミ、好きな人がいますね」
「え……」
「ずっと前からそう思ってました。キミ、いつも誰かのこと考えてました」
「……」
デニーの言葉に、ヒロエが大きくうなずいた。
「そう、それであなた猫をもらうの、ためらったのね。こんなに猫が好きなのに」
「あ……」
脩の腕からマーシャと子猫を受け取りながら、ヒロエがにっこり笑う。
「離れたところにいるの? だったらあなた、その人のところに行きなさいよ。人生はね、いつ、何が起こるかわからないの。ほら、いまのマーシャみたいにね」
「そうです。愛する人のいる場所が、キミの居場所です」
デニーとヒロエの言葉に、目の前が開けた気がした。
――日本に帰ろう。雅也のいる場所に。
彼が生きている姿を見たい。見守るだけだっていい。もし結婚して子供がいたとしても、それも含めて彼を守りたい。ずっとずっと、命が尽きるまで。
「デニーさん、俺……、日本に帰ります」
涙を拭いてそう告げたとき、マーシャが甘えた声で鳴いた。
「脩、ちょっといらっしゃい。いいもの見せてあげる」
手招きされて店の前に行くと、マーシャの隣に籐の籠が置いてあって、子猫が四匹入っていた。ひとつは白猫、あとの三つはグレイの縞模様だ。
「わあ、可愛いっすね」
「でしょう? どう、ひとつ持っていかない?」
「え……」
「いつもマーシャを可愛がってくれてたでしょう? 猫好きなんじゃないの」
「あ、いや……」
脩は激しく逡巡した。猫は可愛いと思う。マーシャの子供ならなおさら。
「でも、俺は……」
いつ日本に帰るかもわからないし、と続けそうになって驚いた。この八年、日本に帰ろうと思ったことなど一度もない。
帰りたくなかったのだ。雅也が幸せに暮らしている姿を見るのが嫌だから。
彼も二十八歳。もう結婚して子供もいるかもしれない。いや、それならばまだいい。彼に男の恋人でもいたら……。
そう思うと怖くて、日本に帰国するという選択肢からずっと逃げていた。
「やっぱりやめておく?」
ヒロエが少々落胆した声を出したときだった。
籠に入っていた白い子猫が、何を思ったかぴょんと床に降りてとことこと歩きだした。あっと思うまもなく歩道を越え、ガードレールの下をくぐって車道に出てしまった。
脩が追いかけようとするより早く、マーシャが飛び出していって白猫をくわえた。ほっとしたのもつかの間、通りの向こうから大型トラックが猛スピードで走ってくるのに気づいて、マーシャが動きを止めた。驚きと恐怖で、身体が固まってしまったのだ。
「危ない!」
叫ぶより早く、脩は身を翻していた。
トラックの前に飛び出して、マーシャと子猫を抱きあげる。耳をつんざくようなブレーキ音とクラクションが響いた。
自分のことは考えなかった。ただマーシャと子猫を守りたくて、背中を丸めてガードレールに身を寄せる。ぎりぎりのところをトラックが通過していって、爆風に髪が逆立った。
「ばかやろう! 何してやがる!」
数メートル先で停車したトラックの窓から、髭面の男が顔を出す。
「そっちこそふざけんな! 前見て走れ、このタコ!」
負けずに言い返すと、男が忌々しげに唾を吐き捨てる。そのままトラックは発進していった。
「脩、あなた、大丈夫なの!」
ヒロエが悲鳴をあげて駆け寄ってきた。
立ちあがってガードレールを乗り越えても、まだ鼓動が治まらない。
もし、あのままマーシャが轢かれていたら。
想像しただけで、心臓が破れそうになる。
「まあ、いったいどうしたの? 脩」
驚いた声で気がついた。脩の頬を、熱い何かが流れている。
「どうしましたか。大丈夫ですか」
二階の店で騒ぎを聞きつけたデニーも外に出てきた。
「あ……」
何か言おうと思ったのに、声が出なかった。
よかった。マーシャが生きていてくれてよかった。子猫が無事で。
そんな思いだけが狂おしいほどこみあげてきて、言葉にならない。
「シュウ……」
デニーが傍らにやってきて、脩の肩を抱いた。
「キミ、好きな人がいますね」
「え……」
「ずっと前からそう思ってました。キミ、いつも誰かのこと考えてました」
「……」
デニーの言葉に、ヒロエが大きくうなずいた。
「そう、それであなた猫をもらうの、ためらったのね。こんなに猫が好きなのに」
「あ……」
脩の腕からマーシャと子猫を受け取りながら、ヒロエがにっこり笑う。
「離れたところにいるの? だったらあなた、その人のところに行きなさいよ。人生はね、いつ、何が起こるかわからないの。ほら、いまのマーシャみたいにね」
「そうです。愛する人のいる場所が、キミの居場所です」
デニーとヒロエの言葉に、目の前が開けた気がした。
――日本に帰ろう。雅也のいる場所に。
彼が生きている姿を見たい。見守るだけだっていい。もし結婚して子供がいたとしても、それも含めて彼を守りたい。ずっとずっと、命が尽きるまで。
「デニーさん、俺……、日本に帰ります」
涙を拭いてそう告げたとき、マーシャが甘えた声で鳴いた。
***
それから三ヶ月後のある日のことだった。
日本に戻った脩が、働き始めたヘアサロン『THE ERA』のスタッフルームを出ると、受付に華奢な身体つきの男性が立っているのが見えた。
色白の童顔で、やわらかな茶色の髪は伸ばし放題。黒スーツに赤系統のネクタイを締めていると、二十八歳のいまでも高校生に見える。
――雅也……。
ずっと待っていた。彼がこの店に来てくれる日を。
声をかけようとした瞬間、目が合うと、雅也は身を翻して店を出て行ってしまった。
たったそれだけでわかった。
雅也もこの十年、脩のことを決して忘れていなかったことを。
――ありがとうな、マーシャ。
日本に帰る勇気をくれたロサンゼルスの三毛猫に、脩は心の中で小さく呼びかけた。
日本に戻った脩が、働き始めたヘアサロン『THE ERA』のスタッフルームを出ると、受付に華奢な身体つきの男性が立っているのが見えた。
色白の童顔で、やわらかな茶色の髪は伸ばし放題。黒スーツに赤系統のネクタイを締めていると、二十八歳のいまでも高校生に見える。
――雅也……。
ずっと待っていた。彼がこの店に来てくれる日を。
声をかけようとした瞬間、目が合うと、雅也は身を翻して店を出て行ってしまった。
たったそれだけでわかった。
雅也もこの十年、脩のことを決して忘れていなかったことを。
――ありがとうな、マーシャ。
日本に帰る勇気をくれたロサンゼルスの三毛猫に、脩は心の中で小さく呼びかけた。
<end>
☆---------------------------------------------------☆
※読んでくださってありがとうございました! 沙色みお