斎藤健一郎
2015年2月16日11時59分
中部空港(愛称・セントレア)の開港から17日で10年。愛知県常滑市沖に空港島が建設されたために潮の流れが滞り、ノリの養殖に適さなくなった海が、思いがけない新たな名物を生んだ。海藻のアカモクが空港島を足がかりに自生しているのだ。当初は漁船のスクリューに絡まり「海の厄介者」と嫌った漁師たちが、セントレア名産の商品として育てている。
常滑市の常滑漁港から、5人も乗ればいっぱいの小さな漁船で伊勢湾に出た。
約10分。空港島の北東岸に接近したところで、エンジンが止まった。
「ここが一番のポイントです」。漁師の鯉江(こいえ)光隆さん(55)が立ち上がる。目の前には「上陸禁止」の看板と鉄柵、コンクリート製の消波ブロック。轟音(ごうおん)を立てて飛行機が頭上をかすめた。「こんな人工的な風景に海の恵みがあるのか」
そんな疑問を差し挟む隙もないくらい、海中にはたくさんのアカモクが揺れていた。深さ約4メートルの海底から水面まで伸び、護岸に沿って左右に約20メートル、幅約3メートルの帯状で漂う。
まだ冷たい海に鯉江さんが手を伸ばし、アカモクを鎌で刈り取った。深緑色で、魚のうろこのように輝いている。そのまま口に入れるとシャキシャキとした歯ごたえ。モズクのような粘りもある。「3、4月の収穫期には、糸を引くくらい粘りが強くなる。これが、おいしさの秘密です」
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