「イスラム国」:リビアでエジプト人21人殺害映像
毎日新聞 2015年02月16日 10時30分(最終更新 02月16日 12時50分)
◇シシ大統領、「報復」表明
【カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)は、リビアで誘拐したキリスト教徒のエジプト人21人を一斉に殺害したとする映像を15日、インターネット上で公開した。エジプト政府は殺害の事実を確認した。シシ大統領は15日夜、国営テレビで「非道な殺人だ。適切な時期に適切な手段で報復する権利がある」と述べ、報復を表明した。
ISが、シリアやイラクの支配地域以外で、誘拐した多数の外国人を一斉に殺害したのは初めて。中東屈指の軍事力を誇るエジプトは、米国主導の対ISの空爆などの作戦には参加していないが、事件を契機に国外で軍事行動に踏みきる可能性がある。
殺害されたのはキリスト教の一派、コプト教の信者たち。リビアへの出稼ぎ労働者らで、昨年12月から今年1月の間に誘拐されたとみられる。
映像はIS広報部門のロゴ入りで約5分間。首都トリポリ近くの地中海沿岸だとされる場所で、オレンジ色の服を着た人質が一斉に殺害される場面が映っている。ISの分派「ISトリポリ州」の戦闘員らしき男が英語で「お前たち十字軍に平安な場所などない」と述べた。
ISは、2010年にエジプトでイスラム教への改宗を妨害され、コプト教会で拷問を受けた中部ミニヤ県の女性の報復だと主張。コプト教会は女性の拘束や拷問を否定し、「保護している」と説明していた。
エジプトはイスラム教徒が多数派だが、コプト教徒と共存してきた歴史があり、人口の約1割はコプト教徒。今回の映像公開は、リビアでの勢力誇示や、エジプトでも影響力を伸ばしたい思惑があるとみられる。
リビアでは11年にカダフィ独裁政権が崩壊した後、反カダフィ派が世俗派やイスラム主義者に分裂し、武力闘争を続けている。ISは混乱に乗じて、東部デルナや中部シルトに進出し、訓練キャンプも設置。豊富な石油資源を狙っているとの見方もある。今年1月に外国人5人を含む9人が死亡したトリポリの高級ホテル襲撃事件でも犯行声明を出した。
一方、エジプトでも東部シナイ半島を拠点に別の分派「ISシナイ州」が活動しており、エジプト軍が掃討作戦を続けている。