ヤマト運輸が、宅配便の配送網を活用してダイレクトメールやカタログなどを運ぶ「クロネコメール便」を3月末に廃止する。手紙などの「信書」をメール便で送った顧客が郵便法違反に問われるケースが相次いでいるためだ。取扱数が年間20億冊を超える人気のサービスにもかかわらず、同社が撤退の判断に踏み切った背景には、監督官庁とヤマトとの間で30年間にわたって繰り広げられてきた確執の歴史がある。
1月22日の夕方、国土交通省5階の記者会見場にヤマト運輸の山内雅喜社長が姿を見せた。発表内容は新商品としか予告されておらず、配布資料のタイトルに「クロネコメール便の廃止について」とあるのを見て、報道各社の記者に驚きが走った。トップの出席も想定外だ。
山内氏は言葉を選びながら語った。「信書の定義や範囲が曖昧で、お客さまが容疑者になるリスクを放置できない」
ヤマトのメール便は1997年に法人向けサービスをスタートし、2004年には個人向けにも拡大した。A4サイズの荷物を郵便受けに投函(とうかん)するサービスで、厚さ1センチまでなら82円、2センチまでなら164円と、荷物などを扱う同社の宅急便よりも割安。主に法人がダイレクトメールなどを発送する際に使われ、最近はインターネットオークションや通信販売の商品発送でも利用されている。
13年度のヤマトの取扱数量は20億8220万冊、売上高は1200億円に上り、日本郵政グループの「ゆうメール」と市場を二分している。
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