Updated: Tokyo  2015/02/16 12:45  |  New York  2015/02/15 22:45  |  London  2015/02/16 03:45
 

「優しく殺す」中央銀行、暖かく抱きしめたつもりが景気は冷える

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  (ブルームバーグ):キューピッドの矢には、射られた者を恋の衝動に駆り立てる金の矢と、逃げ惑わせる鉛の矢の2本があると言われる。世界の中央銀行は自分たちが放つ景気刺激策という矢で、企業や個人の投資と消費行動に久しぶりに火が付くことを期待している。

しかし一部のエコノミストは、中銀が放っているのは実は鉛の矢で、人や企業をますます支出から遠ざけるのではないかと懸念している。

今、世界の中銀からは絶え間なく矢が降ってくる。先週はスウェーデン中銀が量的緩和(QE)組の仲間入りをした。今年に入って既に十数行の中銀が金融を緩和している。

利上げに向かう英国と米国でも、イングランド銀行のカーニー総裁が必要なら利下げは依然として可能だとし、そのうち始まる利上げも「限定的で緩やか」になると繰り返した。イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長は昨年12月、利上げを実施した後も金融政策は長期にわたり緩和的にとどまると言明した。

こんな中銀からの愛のメッセージに動かされないのはロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)のリチャード・バーウェル氏とADMインベスター・サービシズ・インターナショナルのスティーブン・ルイス氏だ。

中銀が暖かく抱きしめているつもりでも、景気は熱くなるどころか冷めてしまうことを両氏は懸念する。

ルイス氏によれば、中銀の刺激措置を家計や企業は景気の弱さの指標と受け止める恐れがある。中銀が安価な資金のばらまきを続けねばならないほど経済を不安視している時に、消費や採用はできないというわけだ。

「そんな環境下で長期のコミットメントをするような大胆な人間はいないだろう。中銀の政策姿勢そのものが、足元の経済状況が長期計画を立てるには適さないことを喧伝(けんでん)している」と同氏は言う。

バーウェル氏は、金利が上がり始めてもかつての景気拡大期のような水準までは上がらないという説を懸念する。イングランド銀のチーフエコノミストのアンドルー・ホールデン氏は先月、「金利のニュー・ノーマルは恐らく2%か3%、せいぜい4%だろう」と発言した。

バーウェル氏に言わせれば、このような観測は投資家の根拠なき熱狂を誘って金融を不安定化させるか、見通しを悪化させて需要を減退させる。

「善意のコミュニケーションによって中央銀行が景気回復を優しく殺すというリスクがある」と同氏は述べた。

原題:Killing With Kindness Is Risk as Central Banks Send Valentines(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Hertling jhertling@bloomberg.net Zoe Schneeweiss, Eddie Buckle

更新日時: 2015/02/16 07:01 JST

 
 
 
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