The Economist

西側に対するプーチンの戦争

2015.02.16(月)  The Economist

(英エコノミスト誌 2015年2月14日号)

ウクライナが苦しんでいる今こそ、ロシアの脅威の深刻さを認識し、それに立ち向かわなければならない。

プーチン氏、ロシア大統領に就任 4年ぶりの復帰

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News

彼はその虚言癖を嘲笑され、世界の首脳たちの輪から締め出されている。彼の支配する経済は急速に縮み、通貨は急落している。

 国際的な制裁のせいで、権力に群がり私腹を肥やしていた彼の友人たちは、不正な手段で得た地中海の豪邸での休暇を楽しめなくなっている。

 15年前にロシアの大統領職を引き継いだ際に、ウラジーミル・プーチン氏が掲げたとされる目標――繁栄、法の支配、西への統合――からすると、彼を成功者と見なすのは、寒々しいほど滑稽に思えるかもしれない。

ウクライナだけではない

 だが、そうした目標は、仮にかつて本心から出ていたとしても、もはやプーチン氏の目指すものではない。

 本人の視点から世界を見れば、プーチン氏は勝利を収めつつある。彼を失脚させようとする敵方の策謀にもかかわらず、押しも押されもせぬロシアの支配者の座を守っている。ウクライナの喉元もしっかり握っている。その締めつけは、先日ミンスクで成立した危うい合意にも緩んでいない。

 プーチン氏の最優先事項は、威嚇と賄賂という常套手段でウクライナを手なずけることだったが、侵略には副次的な効果があった。まず、ロシアに服従しないとどうなるかを知らしめることができた。

 また、プーチン氏にすればウクライナ政府は欧米の操り人形に過ぎないため(ウクライナ国民の意思とされているものは、彼の超冷笑的な思考回路からすれば、欧米の陰謀を覆い隠すものにすぎない)、ウクライナの紛争は、ロシアの裏庭の真の支配者が誰かを明らかにするのに役立った。

 そして何よりも、敵の中に――欧州諸国の間、そして欧州と米国の間に――不和の種を播くことができた。

 プーチン氏の全般的な目標は、敵の同盟を分断して弱体化させ、安全保障に対する集団的アプローチを砕き、敵の前進を食い止めて押し戻すことにある。中東を巡る癇癪にしても、グルジア侵攻やウクライナの数々の災難にしても、プーチン氏は時に、包囲に対する被害妄想的な不安に駆り立てられるあまりに欧米との偶発的な衝突に陥ってしまったように見えることがあった。

 だが、今にして思えば、プーチン氏の世界観からすると…
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