乗務員にとって近くて遠い駅のトイレ(2014年3月、恵 知仁撮影)※本文と写真は関係ありません。

写真拡大

電車の乗務員も人間です。急に便意を催すこともあります。もしそうなってしまった場合、いったいどうするのでしょうか。また乗務員はそうした事態になることを極力回避するため、乗務前から様々なことに気を使っているようです。

においが取れず運行中止

 2007年8月31日の早朝、JR福知山線に乗務していた車掌が体調を崩し、折り返しの塚口駅(兵庫県尼崎市)へ到着する間際に大便を漏らすというトラブルが発生しました。

 折り返し駅に到着し、車掌は運転室へ入ってきた運転士に向かって「漏らしてしまった」と真っ青な顔で告げると、すぐにトイレへ急行。運転士は清掃を試みますがにおいが取れなかったことから、やむなくその車両は運行中止になり1700人に影響が出ました。

 車掌は乗務前からお腹に異変を感じていたようで、当初は「我慢できると思った」そうです。しかし、その夢は叶いませんでした。

 この一件はネットニュースでも報じられましたが、「出物腫れ物所嫌わず」ともいうように、こうした事態は誰にでも起こりうるからでしょうか。怒りよりも同情の声が多かったと記憶しています。

 とはいえやはり、出てしまっては何かと面倒です。もしお腹の具合が悪くなってしまった場合、乗務員はどういった対応をすればよいのでしょうか。

乳酸菌飲料はNG

 気軽にトイレへ行くことができない乗務員の事情について、関西圏の私鉄運転士に取材したところ、次のような回答が返ってきました。

――お腹が痛くなった場合はどうする?
「腹痛などの体調不良により乗務交代が必要な場合は無線で指令に連絡し、交代要員を駅に手配してもらいトイレに行きます」

――交代はどうやって行われる?
「マニュアルは特にありませんが、途中駅に代わりの乗務員がスタンバイし、すぐ交代できるようにします。また迅速に異常へ対応できるよう、運転係の助役(管理者)が途中から添乗することもあります」

――交代した後は?
「その日の乗務から外されることが多いですが、支障がないと判断されれば復帰します」

――体調管理は大切ですね
「大切です。個人で責任を持って行っています」

 乗務前にはコーヒーを飲まない、お腹の動きを活性化させる乳酸菌飲料は摂取しないなど徹底した体調管理を行っているといい、誰もが同情を禁じ得ない生理現象とはいえ、「腹痛による交代は恥ずかしい」と捉えている印象を受けました。また体調不良で交代する乗務員は何回も同じ要請を繰り返すことが多いようで、あまりに頻繁な場合は運転業務から外されることもあるのだとか。

 ちなみに乗務時間が長い貨物列車の運転士は、携帯トイレを持参している人も多いようです。