衆院解散に伴い休眠していた有識者による第三者機関「衆院選挙制度に関する調査会」が協議を再開した。1票の価値に不均衡があっては、有権者の民主主義への信頼を損なう。是正に向けた検討が迅速に進むことを期待したい。
衆院の任期は始まったばかりだが、来年夏の参院選との同日選の可能性などが取り沙汰される。調査会の佐々木毅座長が再開早々に具体的な是正方法の試案を提示したのは妥当な判断である。
座長案は都道府県に割り振る小選挙区の数を青森など9県でそれぞれ1減し、その分を東京3増、神奈川2増など都市部に回す内容だ。この9増9減案が実現すれば2010年の国勢調査に基づく衆院の1票の格差は最大1.998倍から同1.598倍に縮まる。
ここまで縮小しておけば今年秋にある次回の国勢調査の結果が出ても、すぐ2倍を超えることはあるまい。自民党内に「9つもの選挙区で候補者調整するのは容易でない」との声もあるが、この程度の痛みを甘受するのは当然だ。
問題は最高裁がどうみるかだ。座長案は都道府県にまず各1議席を配分し、残り議席を人口比に応じてドント方式で割り振る仕組みだ。最高裁が過去の判決で廃止を求めた1人別枠方式の同工異曲といえなくもない。2倍未満ならば理屈はどうでも最高裁は合憲と判断するのか。そこが不透明だ。
1議席ずつ配分するのをやめれば、そうした心配は無用になる。しかし、議席が減る都道府県が増えるほど自民党内の反発は強まろう。その辺りの折り合いをどうつければよいのか。
とりあえず座長案を軸にいったん決着させ、その後に抜本的な制度改革を含めた検討を継続するのが妥当なところだろう。
調査会は次回の会合で、民主党などが強く主張してきた定数削減について話し合う。「身を切る改革」も大事ではあるが、議論の間口を広げすぎて1票の格差是正が遠のいては本末転倒だ。優先順位をよく考えて議論すべきだ。