人質事件をきっかけに、日本人にとって脅威のレベルが格段に上がったことは確かだ。なぜなら、イスラム国がどうのというより、今回の事件が世界中に知れ渡ったからだ。世界中の多くのテロ組織も「日本」を認識したし、イスラム国にシンパシーを感じている連中も世界中に存在しており、カナダの議会襲撃事件やオーストラリアの人質立てこもり事件など、すでに様々なテロ事件を起こしている。彼らが今回の事件に触発されて、日本人を狙わないとも限らない。もはや日本人は、中東地域に行かなければ安心とは言い切れない。だからこそ日本の外務省も、全世界の日本人を対象に、注意を呼びかけているのだ。
また、日本国内におけるテロのリスクにも注意が必要だ。日本は来年にG8サミット、2020年には東京五輪など、各国から要人などが多数集まる大きなイベントを控えている。政府は、原発や先進国の在日大使館の警備を強化したり、入国管理を強化したりする必要がある。
脅威のレベルは格段に上がった
個人が海外渡航時に身を守る術
個人としては、海外に渡航する際、渡航先の治安状況はもとより、航空機への搭乗、ホテルへの宿泊などにも、これまで以上に注意が必要だ。たとえば、外務省の「海外安全ホームページ」は参考になるので、海外に渡航する際には最低限チェックする必要がある。各国の大使館にいる治安の専門家が、現地の治安当局と情報交換をして更新しているものだ。何よりも、日本人が日本人向けに作成しており、しかも無料で入手できる。これ以上の情報は他では得られない。
また、同じく外務省が運営する外務省海外旅行登録システム「たびレジ」も便利だ。旅券法の規定により、海外に3ヵ月以上滞在する人は外務省に届け出が必要であり、滞在地で治安悪化、クーデター、テロなどが起きた場合は大使館から注意を喚起する情報が届く。ただ、届け出を必要としない短期の旅行者は、そうした情報を受け取ることができなかった。その点、「たびレジ」に登録しておけば、旅行者も在外公館などから緊急時に情報提供を受けることができる。
最後に、後藤さんと思われる男性の殺害映像が公開された際、安倍首相は「テロリストたちを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携していく」と語った。安倍首相のこうした強硬姿勢が過激派組織を刺激するのではないかという世論もあるが、私はそうは思わない。テロに屈しないことは、G8の一角をなす国のポリシーとして当然だからだ。そのことも含め、グローバル社会で生きる日本人にとって、今回の事件を通じて考えるべきことは多いと思う。