アジア

日本の近くにある脅威:東南アジアに潜むISILの影多くのジハード参加者を生むインドネシア、テロリストの交差点となるマレーシア

2015.02.09(月)  末永 恵

 リチウムは小型核爆弾の材料にもなるなか、イランがクアラルンプール経由で中国に武器輸出を図ったのではなかったか。それをインド洋に海軍基地(ディエゴ・ガルシア)を持つ米軍が阻止するため何らかの軍事行動を起したのではないかとの仮説がある。

テロのグローバル化で日本人が標的になるリスクが上昇

フィリピン警官49人死亡、ミンダナオ島でイスラム勢力と衝突

フィリピン・ミンダナオ島で、反政府イスラム武装勢力との衝突で死亡した隊員の遺体を運ぶ警察の特殊部隊(2015年1月26日撮影)〔AFPBB News

 ジェマー・イスラミア(JI)はインドネシアやマレーシアだけでなく、フィリピンやシンガポールのイスラム過激派ともつながりがある。また、米国防総省は、JIと米国同時多発テロ事件の容疑者、ザカリアス・ムサウイとの関連性も捜査している。

 シンガポール政府によると、JIの指導者はマレーシアの永住権を持つインドネシア人、ハムバリで、ザカリアス・ムサウイもマレーシアに滞在していた。

 東南アジアのテロ専門家は、「東南アジアのジハーディストが母国に帰還し、過激な思想や軍事経験で国際的ネットワークを駆使し、今後域内に危険をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 JIの創設者で東南アジアのイスラム過激派の精神的指導者、バシル師がISILへの忠誠を誓ったのを受け、インドネシア政府はJIを復活させるテロ活動を厳しく取り締まる新たな対策を打ち出した。

 だが、前述のインドネシア政府高官は「インドネシアはアセアン域内で最大のジハーディストを輩出し、最大のISIL支援国になりえる。彼らが帰国し、武装集団を活気付ける危険性がある」と警戒するとともに、マレーシアのアフマド内務相も「国内外の戦闘員の連携拡大はテロによる脅威を全く新しいレベルにまで引き上げている」と危機感を露にする。

 ここ数年のISILの活動は、1979年の旧ソ連のアフガニスタン侵攻を髣髴させる。旧ソ連がアフガニスタンへ軍事介入を始めると、東南アジアを含めた世界各地からジハーディストがぞくぞくと戦闘に参加。彼らが母国、東南アジアへ帰還後、バリ島爆発テロなどの事件を首謀したJIの組織創立につながった経緯がある。同爆発事件では日本人も犠牲となった。

 今回の日本人人質事件は、拘束された2人が殺害されるという最悪の結末となった。安倍首相は、日本人が海外でイスラム過激派組織などによる事件に遭遇しないよう対策強化を指示するとともにテロに屈せず、イスラム国対策で巨額の経済協力を拡充すると新たに表明。

 しかし同時に今回の事件で、皮肉にも日本から軍事作戦などの報復を受ける脅威がないことも国際社会で明らかになったことで、中近東だけでなく日本人が彼らの格好の標的になる「グローバルリスク」はさらに高まっている。

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