マラヤ大学のモフマッド・アフマッド講師は、1月に警察と反政府イスラム系勢力の衝突事件があった「フィリピン南部のミンダナオ島に潜伏している」(マレーシア国家警察)とされ、同過激派「アブサヤフ」と連携し、学生などをISIL戦闘員で募集、シリアなどに派遣した容疑で国際指名手配中だ。マラヤ大学も「国家警察の捜査に全面的に協力する」と声明を発表。
筆者も最近、元総長から明かされたが、「アフリカ諸国の留学生が入国できないケースが増えている。マレーシアで極刑となるドラッグを持ち込もうとしている(2011年、ドラッグ・ミュール=麻薬運び屋の日本人女性が死刑を宣告された)」のだという。
アフリカ系ムスリム学生が豊富な資金をバックに学生ビザで入国し、麻薬密売や国際的な売春シンジケートの“手配師”として違法ビジネスに関わるケースも増加。その資金が本国や国際的なテロ組織の活動資金として流れているのでは、と見られている。
こうした状況で日本人もすでに標的となっている。2011年、クアラルンプール市内で宝石商の日本人男性2人が襲われ1人が死亡し、地元警察がナイジェリア人容疑者3人を逮捕。日本人に暴行を加え縛った上、宝石や現金11万リンギ(約400万円)を奪って逃走したもの。
また、2013年には日本人エンジニアが、ナイジェリア人シンジケートの売春ネット詐欺グループの罠に嵌った。いわゆる「ロマンス詐欺」にあったのだ。ナイジェリア人男性らに監禁され、犯人グループは男性の日本の家族に身代金15万リンギ(約540万円)を要求した。
マレーシア航空失踪事件でも明るみに出た取り締まりの緩さ
アジアの入管関係者は「マレーシアは“同胞”には寛容。いったん入国すれば、すり抜けられる」と暴露する。同胞に寛容な穏健派のマレーシアは、言い換えれば、カネや物資、人材を通過させ、テロリストを育む”環境”に甘んじてきた。
その寛容さは、行方不明のクアラルンプール発北京行きのマレーシア航空370便墜落事件でも証明された。
同機は当初、テロ事件の疑惑があった。というのは、乗客2人が偽名の旅券で搭乗。2人はそれぞれ同機の搭乗者名簿にあったイタリア人とオーストリア人の盗難旅券を使い搭乗していたからだ。
しかし、この事実をマレーシア当局は把握しておらず、しかも問題は、国際刑事警察機構(ICPO)が事前に国際ルートを通じ水際での取り締まりを要請していたにも拘わらず、2人がチェック機関のお咎めなしに通関、飛行機に乗ってしまっていたマレ-シアの寛容さだった。
さらに、「2人はイラン人」とICPOのノーブル事務総長が異例の記者会見をする形で発表、「マレーシア当局の対応に満足していない」と不満を露にした。
また、マレーシアがテロの武器輸送の経由地としての疑惑が高まったのも同事件。マレーシア航空のジャウリCEOが、7トン以上の貨物の中に運送書類記録のない「リチウム電池(200キロ)が格納されていた」と公表。
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