インドネシアの反テロ対策を指揮する政府高官は「昨年下半期でインドネシアのISIL戦闘員は3倍以上に膨れ上がった」と指摘した上、「これまで514人がインドネシアからシリアやイラクに戦闘員として渡った。その多くは学生や労働者と偽って渡航しているケースで、マレーシアなど近隣諸国にすでに滞在しているインドネシア人だ」と明かす。
さらに、日本企業の現地法人や工場があるマレーシアのセランゴール州で、ISILへの資金調達容疑でマレーシア人3人が逮捕された。3人は役所職員やイベント会社のマネージャーで、ISIL支援の目的でフェイスブックを通じ資金調達活動を実施。また、シリアなどでのISILのジハード参加を希望するマレーシア人テロ義勇兵派遣目的の募金活動も行っていた。
また別件では、同州でISILの新規メンバーのリクルート活動を展開していたマレーシア人14人も逮捕。 うち1人は、シリアでISILのテロ活動にすでに参加、帰国後、マレーシアでのISIL支援拡大を画策していたという。
さらにテロ専門家は、マレーシア人のISIL参加者が、金融機関などからの融資を通じ渡航費用などを調達している実態も明らかにした。今年に入って、ISILに参加した2人の女性が、民間融資で資金を調達していることが発覚。1人は大手銀行のRHB銀行から2万リンギ(約66万円)、もう1人は政府認可の金融機関から6千リンギ(約20万円)、それぞれ「個人融資」を受けていた。
こうした金融機関の融資審査を“すり抜け”、ISILへの渡航費用などを捻出する方法は、マレーシアに居住するISIL関係者が指示を出していると見られている。
また、最近ではイスラム教の宗教学校が過激派の養成所になっていないか警戒が強められているが、マレーシア治安当局は「ISILへの参加者や賛同者が後を絶たない」と深刻だ。
昨年4月から6月には、政府関連施設やビール醸造工場のカールスバーグ襲撃を計画していたISIL関係者19人を逮捕。シリアやイラクのISIL拠点でテロ活動を行っているマレーシア人のジハーディストは、当局が把握してるだけで60人に上る。
しかし実際は数百人以上(米政府筋)と見られ、1月末、マレーシア当局は「120人のテロ戦闘員や支持者を渡航直前に拘留した」と明らかにした。また、国連は昨年、シリアでISILに参加のマレーシア人15人、また、別のマレーシア人がイラク警察のSWAT本部でそれぞれ自爆テロを決行したと発表。彼らはISのテロ活動の中心的役割を担いつつある。
イスラム教国からの留学生の違法ビジネスがテロの資金源に?
さらに、マレーシアは近年、中近東やアフリカ、東南アジア諸国からテロリストの予備軍になり得る留学生の“ホットスポット”として熱い眼差しを受けている。
マハティール元首相らが卒業生で、外国政府が研修機関と位置づける国立マラヤ大学では「近年、同圏内から留学生を積極的に誘致している」(マラヤ大学関係者)という。キャンパスでは特にアフリカ系の学生が目立つ。
先の大学関係者は「留学生の国籍内訳上位10カ国のうち7カ国がイスラム教国。インドネシア、イラン、バングラデシュ、イエメン、スーダン、イラク、パキスタンで、最近はナイジェリアからも急増」と明かす。
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