「後藤さん殺害」:安倍首相「決して許さない」
毎日新聞 2015年02月01日 21時02分(最終更新 02月01日 21時40分)
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)とみられるグループが日本時間2月1日朝、拘束していた仙台市出身のフリージャーナリスト、後藤健二さん(47)を殺害したとする新たな映像をインターネット上で公開した。同日午前6時過ぎに首相公邸から官邸に移った安倍晋三首相は、間もなく記者団の前に姿をみせた。「政府として全力で対応してきたが、まことに痛恨の極みだ。非道、卑劣きわまりないテロ行為に強い怒りを覚える」。その目はやや赤く、手元の紙に目を落として「ああ」とうめく場面もあった。
政府は同日未明、新たな映像が公開された直後に把握し、後藤健二さん(47)が殺害された可能性が高いと判断した。ヨルダン政府などを通じたイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)との交渉に望みをつないでいただけに、首相は「テロリストを決して許さない。罪を償わせるために国際社会と連携する」とISを厳しく批判。中東の難民らに対する食糧、医療などの人道支援を拡充することも明言した。
昨年8月、湯川遥菜さん(42)がシリアで拘束されたことが表面化。続いて10月末に後藤さんが行方不明になり、政府は首相官邸の情報連絡室を中心に情報収集を続けてきた。12月2日には後藤さんの妻に犯行グループから電子メールも届いたが、政府がそれでも公表を控えたのは「国内の誘拐事件と同様、人命がかかった交渉を表ざたにすれば、動きが縛られて立場が弱くなる」(政府筋)と判断したためだ。
政府は後藤さんが何者かに拘束された可能性が高いとみて、即座に米国に機密情報の提供を求めるなど水面下で調査を続けた。しかし、1月20日に2人の殺害予告動画が公開され、事態は一変。要求と交渉期限を次々に変えるIS側の手の内を読めないまま、駆け引きに引きずり込まれていった。
首相は21日の関係閣僚会議で「厳しい時間との闘いの中で、徹底した情報戦を展開していく必要がある」と強調した。ISと直接交渉できない「圧倒的に不利な状況」(首相官邸関係者)で、政府は交渉期限の先延ばしに活路を見いだそうとした。「時間をできるだけ確保し、あらゆる情報を流して相手の動揺を誘う。政府の戦いはそこにあった」。政府関係者はそう明かした。