最近、話題になってるから「小説家になろう」と言うサイトを見てきた。
特に、ランキング部分が驚くほど「魔王」「勇者」「異世界」などどっかで聞いたことあるワードがマシマシに、山盛りに、男盛りに積み上がっていた。
いや、「どこかで」なんてもんじゃない!
フリーゲームばかりやる僕には馴染み深すぎて「あれ?これじゃふりーむ!の新着ゲーム欄を見てるのとあまり変わらないぞ?」とデジャブすら感じた。
いや、フリーゲーム陣営の名誉のためにいうが、ふりーむのランキングの方がまだ多様性がある!
確かにRPGツクールやWOLFエディターのお陰で「魔王と勇者のRPGが作りやすい環境にあり、異世界ファンタジー作品は多い」が、ヒットするゲームだけを抽出するとホラーや脱出ゲーム、学園やBLのノベルゲなど多様性はある!
なぜ差がついたかは追々語るとして、まず着目したいのは「どうして、小説家になろうでそれらが増えた」という話。
異世界は実は説明が楽
良くも悪しくも…異世界に行ったことがないやつしかいないので、右も左も分からない異世界に打ち込まれたり、そっちからやってきた人物を扱うと小説の設定を説明していくのが楽だ。
学園モノで起こっている事件やすでに構築されている人間関係を語るよりも、当たり前のことを違和感なく説明できる。
例えばキャラの名前を聞き出す時、例えば自分の目に写ってる風景・情景・状況を説明する時にそれが説明調であっても、実際に説明を受けないとわからない人が作品の中にいると滑らかに入っていける。
特に「ネットに小説を書く」という長いものを書きにくい・読みにくいところではこの手法で書く方がつかみやすい。説明までの経緯を短く、それでいて話のテンポを早くできるから題材としていい。
…これ自体は特に新しいことでもセコいことでもない。
古くはガンダムやエヴァの主人公はロボットの存在やロボットを管理する組織のことなんか知らないところから話が始まる。
有名なライトノベルではゼロ魔や織田信奈の野望…はたらく魔王さま!などが顕著である。
また「はたらく魔王さま!」に言えることだが、技法としての異世界モノであると同時に「既存の魔王と勇者のイメージやキャラ設定を借りて作った」二次創作的なポジションでもある。
ここで言う二次創作的とは「特定の作品の二次創作」の意味でなく、「特に説明しなくても誰もが連想するような設定を拝借する」という意味だ。
一番露骨なノベルとしては「まおゆう魔王勇者」は完全に自分で設定した魔王と勇者の下地に「昔からの作品にあった魔王や勇者のイメージ」がある。
実際、ステレオタイプな勇者や魔族世界とそれらに対するメタ構造としてのイメージとは違う魔王を用意することで双方の…特に魔王のキャラが立つように作られてる。
小説家になろうのランキングや最近アニメ化されるような商用のラノベにこのやり方で描かれる作品が増え、フリーゲームでも量産しやすいのはこの種類。
悪く言えば、「オリジナリティが少ない」が、ネットのようにヘビーなものを読むのに向いてないメディアでは、スピード感が出る上に筆者のやりたいことがきっちりと示されて作品にまとまりが出て良い…とも言える。
敢えて「悪く言えば」を付けたのは、文章力や構成力がないと一番罵倒されやすい作り方であり、ここ数年で増えすぎたせいで食あたり気味だから。
もちろん、「オリジナリティが少ない」「連想される何かのパクリ」などの批判があれど、コンセプト自体が一発ネタであってもそれらを具体的にきっちりと描く構成力・下調べなどの土台があれば、立派なコンテンツとして認められる。だが、このジャンルは「俺でも書ける」と一番勘違い野郎が踏み込みがちなジャンルでもある…。
一時期の萌え系学園ライトノベルみたいなもので「文章書きたくてやってないやろ?」「絵が描けない人が妄想書きなぐった感じ」のものができてしまうように映ってしまうわけだ。学園モノもまた描きやすさゆえに増えたモノでもあるため。
当然、本1冊分の小説作る時点でそれはすごい労力ではあることを知らないからそんな頭ごなしな批判が出るのだが…文章はイラストや音楽と違ってだれでもできると思われてるから不幸だよ…。
何度も言うが、「作りやすいものを作る」事自体を否定する気はなく、そこにはちゃんと技法や考えの上で、当然の結果としてそうなってる。
ただ、僕が言いたいのは「それをランキング方式で列挙した途端にすごい閉塞感になるよなぁ…」ということだ。
ニコ動が楽しくなくなったのはランキング方式のせい?
小説家になろうのランキングに載ってるようなものだけを見ると「こんなのフリーゲーム界隈では、【魔王物語物語】【巡り廻る。】【前向き勇者】が出揃った時点でもう総括された分野じゃないか!読む気にならない以前にフリーゲームが追求してきた文化を3周ぐらい遅れてやってるようにしか見えない」とキレそうになった自分がいる。
いや、言っちゃ悪いが、ライトノベルに於ける異世界ファンタジーにはハーレム要素だの、主人公最強だのというゲームならクソゲーと呼ばれてぶん投げられても文句が言えない話がなんの申し訳もなさもなく浮き出てるからかえってタチが悪い!
だから、正直「汚い手でそれに触れるな」とキレてる。
ウェブで小説をアップしている人自体は他にも色々見たことあるから決してそれだけではないはずだが、「こんなのが流行ってるのか!嘆かわしい!」と言う気持ちにその時にはなってしまう。
同じく、ニコニコ動画もランキングが強いサイトで、ニコ動自体の多様性はあるのに、ランキングだけを見ると実況プレイ動画とくだらない生放送しかないような時期があってその時にはがっかりしたことがある。
ちなみに、今日現在のニコ動ランキングでも実況プレイ動画とMMDとアニメの本編だけで7,8割を占めているので、いかにジャンルが偏っているかがよくわかる!
ここまで偏ってしまうと、今度はジャンルごとの面白いものよりもむしろ「面白い人の真似をした面白くない人」がランキングに混ざるようになってしまい、そのジャンルが好きな人にさえ、幸せにならないランキングになってしまう。(自分の好きなジャンルならなんでも見るやつのためのランキングになってるから劣悪品でも人気が取れる事がしばしば…)
検索の仕方を知ってる初期からのユーザーならともかく、そうでない場合好みのものを探すための検索方法から調べないといけなくなるため、辛い。
一方で、最近の僕が生息するふりーむ!やはてなブログ・はてなブックマークにもランキング自体は存在する。しかし、ニコ動や小説家になろうほどでかでかとランキングが前に出てくるわけではなく、また運営側がおすすめするものもランキングにさほど左右されない。
あくまでジャンルが均一化するような紹介の仕方を維持しているため、そのとき時のブームはあっても一週間ぐらいすると沈下して次のブームが来る仕掛けとなる。
ブーム自体の大きさが内輪のものにとどまってしまうかわり、 欲しい人に情報が届きやすく、それでいて可能な限り上澄みだけを抽出できるような仕掛けになっている。
またふりーむにかぎらず、ゲームサイトの多くは「賞」やランキングを1年に一度作るため、そのランキングを決めるためには色んなゲームが人目に触れる環境にしないと議論が盛り上がらない。だから盛り上げるためにも色んなゲームに触れさせておく必要があり、その界隈でフリーゲームが趣味の人は色んなゲーム触れることで、賞や個人サイトのおすすめには常にブレが出るようになってる。
ツイッターのトレンド制度も似ていて、リツイート数が多いものから順番ではないため、自分の興味の有無に関わらず、色んな人気のネタが出てきてくれるから世界が狭まらなくて済む。こちらの興味のあるジャンルやフォロワーの間での人気のネタであるため、全体のトレンドと内輪ネタのトレンドがごちゃごちゃに出る。
この試みのお陰で、世界観が狭まらず長くサイトを利用できることに感謝している。
だから、小説家になろうで作ってるものを否定する気はなく、人気投票制度自体を否定する気もない。ある程度の選別の昨日として投票は必要だと思う。
でも、 抽出方法を変えないとそれなりに活字を読んでる小説が好きな人から見ても、別媒体でいろんな作品にふれた異世界ファンタジー好きから見ても「あー低俗なものが流行ってきましたね。文化が退廃してますね」という気持ちにしかならない!
そうじゃないはずなのに、出版社が「人気はこれだな」と言って本にしちゃうもんだから「面白いものを掘り出す編集者のプロデューサー的役割すら他人の投票に委ねて、放棄したか」と僕の怒りの矛先はどんどんそちらの方へ向かっていく。
ほんとどうにかしてほしいよ。
プロが選ぶ時代のものが全部面白かったわけではないさ。けど、一人一票の原則で流行りを決めたら、どんどんジャンルとして退廃していくということをいい加減学んでほしいよ…。面白いものを知ってる人や、身を滅ぼすほど時間やお金をかけたくなる魅惑のコンテンツがどんどん減っていくよ!
だから、どっかしらで投票に依存しないシステム、数の暴力以外の提案力を残せる形のシステムを残してほしいよ。特に新しいジャンルを扱うような人気サイトにはさ。
僕はまおゆうの影響が大きいと思うなぁ…。ネットでヒットしたこともしかりだが、ネットで読ませるためのテンポの良い設定・運び方・ジャンル選びのすべてが発明だと思う。
ついでに言うと、アニメ版で小清水亜美さんを魔王役に当てたのが狼と香辛料ファンの僕にとってはすごく雄弁かつ明確な意思表示で、まおゆうは見やすく、コンセプトもしっかりしてて好感が持てる。今考えると心得ていらっしゃる!
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ネット論繋がり。こっちはランキングではなくSNSの話。