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「イスラム国」事件、あぶり出された人々 首相批判、護憲派の自己矛盾

産経新聞 2月14日(土)7時55分配信

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人2人の人質「殺害」事件は、さまざまな人間の本性を浮かび上がらせた。湯川遥菜(はるな)さんが殺害されたとみられる画像の公開直後の1月25日夜。首相官邸前では、安否不明だった後藤健二さんの救出を求めるデモが行われ、「見殺しにするな!」と訴えていた。

 安倍晋三首相が救出を願わなかったはずがない。同時にテロ組織の要求に屈してもならない。その兼ね合いの中、道路1本挟んだ官邸で首相や職員は奔走していた。知ってか知らずか、デモ集団は次のようなシュプレヒコールも上げた。

 「平和憲法を守れ! 集団的自衛権はんたーい! 戦争反対! 命が大事!」

 人質救出と直接関係ない大声は出したが、テロへの非難は聞こえなかった。

 翌26日は「世界平和を願い踊る」として「官邸前DISCO化計画」と称したイベントが行われた。社民党の福島瑞穂副党首はツイッターに「歌とダンスで、戦争反対」と投稿。ビール缶を手にした参加者との楽しそうな写真も掲載した。「歌とダンス」が終わっても、官邸の奔走は続いた。

 懸命に努力している人たちの面前で楽しもうが、誇大な言説だろうが、憲法は表現や集会の自由を保障している。だが、国会議員となると、次元は異なる。

 民主党の徳永エリ参院議員はフェイスブックで「イスラム世界の国々は親日でした」と過去形で事実誤認を記述した上、首相の人道支援表明を批判。共産党の池内沙織衆院議員はツイッターで「こんなに許せないと心の底から思った政権はない」と投稿した。イスラム国への怒りと思いきや、矛先は首相で、イスラム国の代弁者のようだった。

 首相は事件が明らかになる前の1月17日にイスラム国に対峙(たいじ)する中東諸国への人道支援を表明。その前から支援は決まっていたが、支援や首相の中東訪問を批判していた野党は寡聞にして知らない。結局、後付けの批判でしかない。

 事件に絡めて首相を批判する勢力には護憲派が目立つが、憲法の前文には「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とある。

 2人「殺害」後、中東への人道支援拡充を表明した首相は憲法改正に意欲的だ。その首相が現行憲法に忠実なのに「自分たちさえよければいい」と聞こえる首相批判の人たちは、大好きな憲法の精神にもとる自己矛盾に気づいていないのだろうか。(酒井充)

最終更新:2月14日(土)9時4分

産経新聞

 

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