ピケティ氏:東大で講義 「極端な不平等は脅威になる」

毎日新聞 2015年01月31日 20時17分(最終更新 02月01日 13時11分)

東大生らに講義するトマ・ピケティ氏=東京都文京区の東京大で2015年1月31日、石戸諭撮影
東大生らに講義するトマ・ピケティ氏=東京都文京区の東京大で2015年1月31日、石戸諭撮影

 経済書としては異例の世界的ベストセラーとなった「21世紀の資本」の著者で、フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が31日、東京大で講義した。東大生や市民約500人を前に、「民主主義は脆弱(ぜいじゃく)でもろいものであり、極端な不平等は脅威になる」と語り、持論の累進課税の強化による格差の解消を説いた。

 講義では、膨大なデータをもとに執筆した「21世紀の資本」の内容を解説した。世界各国で一部の富裕層に所得が集中し、格差が生まれていると指摘する。格差拡大の要因として示した「r>g」の不等式は、資本から得られる年間収益の比率(r)が、経済成長率(g)を上回ることを表す。

 相続した財産など資本を持つ富裕層が富を蓄積できる一方、相続する財産がなく自分で働いて稼ぐしか手段がない人たちとの格差は広がる。「格差解消の方法として、最も文明的なやり方は累進課税を強化することだ。過去の推移を研究し、議論を展開すべきだ」と述べた。

 「r>g」の不等式については「資本収益率が経済成長率を上回ることが問題なのではなく、富が一部に集中しすぎることが問題だ」と語った。さらに「経済学者はもっと実証的、歴史的な研究をすべきだ。(この本では根拠となる)エビデンスやデータの収集に時間を使い、理解しやすい形で社会にお返ししたかった」と経済学者の役割にも言及した。

 質疑応答では、参加した東大生200人や研究者らの質問に答えた。学生からは「親の所得と子どもの学力が比例しているとの指摘があるが、学力が高い学生は高所得を得られる可能性がある。そのような状況で、学生にメッセージはありますか」と質問が上がった。

 ピケティ氏は「親は選べない。公的予算を教育に配分することが大事で、それを決めるのは市民だ。制度を改善する役割は我々が負っている。家が貧しいか富んでいるかにかかわらず、社会に貢献すべきだ。共に世界をよりよいものにしていこう」と呼びかけた。【石戸諭/デジタル報道センター】

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