21世紀の資本:広がるピケティ現象…異例のベストセラー

毎日新聞 2015年01月31日 08時31分(最終更新 01月31日 13時47分)

 03〜05年にブッシュ共和党政権で大統領経済諮問委員長を務めたグレゴリー・マンキュー米ハーバード大教授は今月上旬の米経済学会の大会で、「21世紀の資本」が格差拡大の要因と指摘している「r>gの不等式」を批判的に取り上げた。

 「r>gの不等式」とは、「株式、預金、不動産などの資本の収益率(r)が、経済の成長率(g)を歴史的に上回っており、資本を多く持つ人ほど収入が増えて格差が拡大する」という「21世紀の資本」のキーワードだ。

 だが、マンキュー氏は「rを引き下げようとすれば、(企業などへの)投資が鈍り、(経済活動が弱まって)資本家も労働者も貧しくなる」と強調し、「ピケティ氏は富裕層が嫌いなようだ」と語った。この大会には、ピケティ氏も出席していて「富裕層は政治家や学者さえも『買って』しまう」とやり返した。

 「21世紀の資本」に関しては、膨大なデータを駆使して、格差の歴史を実証的に示したことを評価する声が多い。ただ、英紙フィナンシャル・タイムズが「データが恣意(しい)的」と指摘(ピケティ氏は反論)したほか、米経済学者らの間で「なぜ『r>g』が成り立つのか理論的な説明が不十分。今後、格差が拡大するとは限らない」との見方もある。今後も賛否両論を巻き起こしながら、ピケティ氏の主張を巡る論争が熱を帯びそうだ。

 ◇21世紀の資本◇

 欧米や日本など20カ国以上の膨大なデータを基に富の分配や格差の歴史を明らかにし、資本主義の下では格差が拡大しやすいと警告。上位1%の富裕層が国全体の所得の何%を得ているかなど、分かりやすいデータをふんだんに盛り込んだ。

 格差拡大の要因として示したのが「r>g」という不等式。株式や預金、不動産などの「資本」の収益率(r)が、経済の成長率(g)を上回るのが歴史的な事実と指摘。この結果、資本主義社会では、相続などで資本を多く持つ人ほど豊かになり、自動的に格差が拡大する懸念があることを示した。

 格差を解消する手段として、資本に対する国際的な累進課税を提唱。富裕層ほど高い税金を課すのが特徴だが、その実現性を疑問視する声も多い。

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