年金:「マクロ経済スライド」4月から初適用 実質目減り

毎日新聞 2015年01月30日 11時18分(最終更新 01月30日 12時49分)

2015年度の年金改定率
2015年度の年金改定率

 政府は30日、2014年の物価上昇率の公表を受け、15年度の公的年金改定率を本来より1.4ポイント低い0.9%にとどめることを決めた。物価が上昇基調に転じたため、4月から年金の伸び率を物価や賃金の伸びより抑える「マクロ経済スライド」を初めて適用する。年金は物価や賃金の伸びに追いつかず、実質的な価値は目減りする。

 年金改定率は前年の物価に連動させるのが原則。ただし、物価上昇率が現役世代の過去3年度分の平均賃金改定率を上回った場合は賃金の伸びにそろえる。30日に公表された14年の物価上昇率は2.7%(生鮮食品を含む)、過去3年度分の賃金の伸び率は2.3%で、従来なら今年4月からの年金は前年比2.3%増となる。

 しかし、15年度はマクロ経済スライドが適用されるため、年金の伸び率は本来の2.3%から少子高齢化による財政悪化分(0.9%)を差し引いた数値となる。

 さらに、過去の物価下落時に年金を下げなかった分を調整するため、0.5%引き下げる。このため、年金の伸び率は計1.4%低くなり、前年比0.9%増に抑えられる。ただし、00年の制度改正で年金の伸び率が高くなる1937年度生まれの厚生年金は1.3%増、38年度以降生まれは1.4%増となる。

 0.9%増にとどまる結果、1カ月の満額の国民年金(14年度6万4400円)は6万5008円、標準専業主婦世帯の厚生年金(同21万9066円、妻の基礎年金も含む)は22万1507円となる。

 マクロ経済スライドは07年度から適用予定だった。しかし、物価が下がるデフレ時には適用しないなどの決まりがあり、これまでは一度も適用されていなかった。

 厚生労働省はスライドを2043年度ごろまで続け、最終的に厚生年金を今より2割、国民年金を3割削減する方針だ。【吉田啓志】

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