(テーマ音楽)
(江守徹)これは私があの夜身に着けていた仮面と夜会服である。
私はこの仮面を着けて舞踏会の輪の中にいた。
やがて私は黒い仮面の男たちに囲まれた。
そして…凶弾が私の背中を貫いた。
私は暗殺された。
私の名はグスタフ3世。
18世紀末のスウェーデン国王として強大な権力を持っていた。
ストックホルム郊外の湖メーラレン湖。
そのほとりにたたずむのが私の住まいだったドロットニングホルム宮殿である。
広い庭を持つ宮殿はその気品の高さから「北欧のベルサイユ」と呼ばれている。
私が生まれたころ国王の力は弱く有力な貴族が議会を牛耳り国政は彼らの意のままであった。
父アドルフ。
お飾りの国王だったが不満はなかったようだ。
父は宮殿内に大工仕事の部屋を造らせ一日中家具を作っていた。
父は孤独な国王だった。
そんな父をしり目に宮殿内で力を振るったのが母ロビーサ・ウルリカである。
母は強い王を望んでいた。
母が改築させた王妃の寝室。
威光を示すように部屋を金ぱくで飾らせた。
母は国王の絶対的な権力を復活させようと執念を燃やした。
母の化粧室に私の幼い時の肖像が掲げられている。
母は私を強い王にしようと帝王学を学ばせた。
25歳で即位した私は近衛兵を率いてクーデターを起こし貴族たちから権力を奪回した。
母の願いもかなったというわけだ。
私の妻ソフィア。
彼女との間に待望の息子が生まれたのは結婚して10年後であった。
待ちわびた王子の誕生に私は歓喜したがあろうことか母はその子が妻と側近との間にできた子だと言うのだ。
大学の図書館にその時私が母にあてた手紙が残されている。
手紙の最後に私はこう書いている。
私は母ロビーサを遠く離れた館に幽閉した。
悩んだ末に王として決断した。
私はスウェーデンの国力を高めようとロシアに戦いを挑んだ。
ロシアの艦隊にスウェーデン軍は大勝利した。
私は偉大な王としてたたえられるようになった。
私は貴族よりも市民や農民を重視し彼らの支持を得ようとした。
そのため恨みを持つ貴族に狙われていたのだ。
悲劇は私が46歳の時に起きた。
(銃声)この夜の出来事はヴェルディのオペラ「仮面舞踏会」となって今に伝わっている。
2015/02/09(月) 04:15〜04:20
NHK総合1・神戸
シリーズ世界遺産100「ドロットニングホルムの王領地〜スウェーデン〜」[字]
悲劇の仮面舞踏会 ▽文化遺産 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
詳細情報
番組内容
悲劇の仮面舞踏会 ▽文化遺産 【語り】江守徹 【テーマ音楽】久石譲
出演者
【語り】江守徹
音楽
【テーマ音楽】久石譲
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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