彼は愛する人を奪われた者たちの心も救おうとする
(直子)最後の声を聞かせてくださいよ!まだ根こそぎ拾えてねえ!
(倉石義男)おはよう。
待ってた?ああそうかそうか。
え?待て待て待て…。
ん?おいしい?そうかそうか。
え?今…今やるから。
わかるよお前。
顔見りゃわかるよ。
あー…はあ。
はあ。
(樋口雅代)うんわかった。
じゃあ待ってるね。
は〜い。
(人々の悲鳴)
(人々の悲鳴)逃げろ!
(波多野進)ハハ…ハハハ…。
うっ!うわっ!
(人々の悲鳴)
(関本好美)やめて!
(カメラのシャッター音)
(パトカーのサイレン)
(北山)お疲れさまです。
この先において犯人を確保したもようです。
(立原真澄)一ノ瀬確認しろ。
(一ノ瀬和之)はい!
(北山)こちらへ。
遺体はこの2名とバスの中に2名だ。
始めるか。
(一同)はい。
採証!
(一同)はい!まずこの2つ。
(鑑識官)はい!写真撮るぞ。
はい。
ブツを踏むな!
(一同)はい。
正中より左方8.5センチの部位に創縁接着時2.2センチの刺創1個。
次背部。
(鑑識官)はい。
右肩こう部の…。
(一ノ瀬)管理官!
(永嶋武文)左方7センチに同じく刺し傷1個。
犯人は確保した。
これが凶器だ。
(一ノ瀬)はい。
(小坂留美)凶器は両刃のナイフ。
刃の最大幅は2.3センチです。
他の被害者の創ともほぼ一致。
確認作業は終わりだな。
終わってねえ!容疑者は波多野進24歳。
所持していた運転免許証から身元が判明してます。
(五代恵一)動機は?なんて自白してんだ?それが…。
(一ノ瀬)「もう一度聞くぞ」「なんでこんな事をやったんだ?」天…。
(一ノ瀬)天?神…。
(一ノ瀬)「神がなんだ?」お告げ…。
(一ノ瀬)お告げがどうした?
(波多野)殺せ…。
(坂東治久)さっきから何を言ってるんだお前は!
(波多野)殺せー!殺せ殺せ殺せ…。
(坂東)おい!
(波多野)殺せ殺せ…!おいまさか…。
刑法39条に当たる可能性が。
(舌打ち)
(関本直子)好美…何してんのよ?こんなとこで何してんのよ?起きなさい!起きなさい好美!
(関本幸彦)直子…。
好美…ほら好美起きて。
帰るわよ起きなさい。
ごめんなさい。
娘がご迷惑をおかけしちゃって。
ほら帰るわよ好美。
起きてったら。
ねえ…!好美?…好美?
(直子)お父さん!
(泣き声)おかしいわよ!ねえ好美が変よ。
ねえ…起きてくれないの。
(直子)起きて…。
(直子の叫び声)
(波多野)うう…はあ…。
(波多野)はいやりました!やりましたよー!
(坂東)おとなしくしろこの野郎!
(波多野)やった!やりました!
(波多野)イエーイ!やりました!ハハハ…。
(携帯電話)俺だ。
臨場要請です。
港区新橋西3丁目高村総合法律事務所内において男性の刺殺体発見。
直接向かう。
車現場に直行!
(永嶋)はい。
(刑事)あっいいんだ。
検視官だ。
(刑事)お疲れさまです。
(一同)お疲れさまです。
検視官…。
うん…。
(刑事)お疲れさまです。
相変わらず重役出勤か倉石。
あ…?ああ。
(坂東)マルガイはこの法律事務所の所長で高村則夫さん51歳。
事務員の話によると…。
お話はホトケ見たあと。
(一同)お疲れさまです。
始めるか。
(一同)はい。
小坂。
はい。
はい。
頭部を北東に向けてうつぶせ。
左頸部鎖骨上1センチの部位に創縁接着時4センチの刺切創1個。
(永嶋)左の鎖骨上に刺切創1個。
前胸部左乳頭部右斜め下方10センチ正中左方4センチの部位に創縁接着時4センチの刺切創1個。
(永嶋)左乳頭部右斜め下方に刺切創1個。
腹部正中臍下方1センチの部位に創縁接着時4センチの刺切創1個。
(永嶋)腹部正中に刺切創1個。
下半身異常なし。
(永嶋)はい。
直接の死因は…。
おい!これは?その染みは刺されて倒れた時にテーブルに置いてあったあの湯飲みが落ちてついたものだと思います。
代われ。
え?あと俺がやる。
あっこれ写真。
(鑑識官)はい。
(一ノ瀬)珍しいな。
(坂東)何が?小坂さんが検視をする時はいつも最後まで任せています。
4か所の傷はいずれも動脈を損傷しているとみられる。
死斑が出ていないのは動脈損傷による大量出血のためと思われる。
検視官。
復唱。
どうした?大量の出血のため死斑なし。
死因は大量出血による失血死。
凶器は?ない。
犯人が持ち去ったんだろう。
死亡推定時刻は?直腸内温度は24.1度。
ですから死亡推定時刻は昨夜午後6時から8時の間と思われます。
死亡推定時刻は保留。
保留?どういう事だ?どうもこうもねえ。
ホトケはすぐ解剖だ。
(一同)はい。
ちょっと待ってください!検視官。
直腸内温度からの推定時刻に間違いはないはずです。
気に入らねえんだよ。
気に入らないって…。
(西田守)刺創管の長さから刃長15センチ前後の片刃のナイフ。
(西田)この傷じゃ死斑は出ないね。
胃の内容物は?
(西田)消化されちまってるね。
となるとだ死後硬直の程度と直腸内温度から割り出した死亡推定時刻は昨夜の6時から8時の間に合致すると考えていいと思うよ。
(永嶋)やっぱり。
ごめんよ。
(西田)倉ちゃん何するんだ!怒るなよ先生。
ちょっとちょっと…待って待って。
これ見てほら。
(西田)30度!?な?おかしいだろ?
(永嶋)どういう事ですか?文献で読んだ事がある。
アメリカやカナダでは肝臓から温度を測って死亡推定時刻を割り出してるって。
今の時点で30度って事はだ死亡推定時刻はそれより遅い昨夜午後8時から10時の間って事になる。
(永嶋)つまり2つの死亡推定時刻が出たって事ですか?一体どっちが正しいんですか?どっちが正しいかは今はいい。
問題はなんで1人の人間から2つの違う値が出たかって事だ。
わかる?
(永嶋)わかりません。
俺もわかりません。
考えろ!
(永嶋)うっ…。
謎だねえ…。
(パトカーのサイレン)
(一同)お疲れさまです。
(刑事)足元お気をつけください。
こちらです。
こちらです。
よろしくお願いします。
(一同)お疲れさまです。
(繁野)被害者はここの院長で精神医学者の加古川有三43歳独身。
通いの看護師が発見しています。
(川相)本業の傍ら歯に衣着せぬ辛口のコメンテーターとしてテレビにも出てる男です。
(仲根達郎)知らんな。
どうだ?
(大沢)死亡推定時刻はゆうべの午後8時から10時の間。
凶器は刃幅3センチの鋭利な片刃の刃物。
似てるな…。
そうそうそう…。
あの時先生目白黒させてた。
(安永泰三)トイレまで追いかけて質問攻めにしてきたのは後にも先にも君だけだ。
ハハハ!検視官になるんで必死だったからなあの頃は。
けどあの時の3か月の講義と実習があったからこそ今の俺があると思ってる。
先生のおかげだ。
(安永)いやあ買いかぶりだよ。
そうじゃねえよ。
「物言わぬ死者の声を聞くのが私たちの仕事だ」って…。
目に涙浮かべてよ。
あの時の先生の最初の言葉今でも俺の胸にしっかり刻まれてる。
そうかねえ…そんな事言ったかね。
おい頼むよ先生。
もうろくするの早すぎるぜ。
ハハハハ…相変わらずだな倉石。
ところで見事な野菜だがわざわざこれを届けに来たわけじゃないだろう。
ああ…。
もしかしたらこいつを解剖したのは先生じゃないかと思ってよ。
私だが。
俺の扱ってるヤマと似てるんでさ。
凶器は創の長さから刃幅3センチ前後。
刺創管の長さから刃長17センチの片刃のナイフだ。
同じかね?いや凶器は違うようだが…。
刺切創のそれぞれの部位は?傷は4か所。
右総頸動脈左腋窩動脈心臓それと総腸骨動脈を切断していたよ。
やっぱりな…。
場所は微妙に違うがこっちも動脈を4か所切断されてた。
なるほど。
手口は似てる…。
うっ…。
うう…。
先生?いやあすまん。
どうした?ここのところちょっと無理をしすぎたようだ。
いや…。
大丈夫か?ああもう大丈夫だ。
脅かしっこなしだよ〜。
君でも驚く事があるとはね。
当たり前だよ。
連続殺人?東京も神奈川も犯人はわざわざ動脈という動脈を切りまくってる。
一見感情的にメッタ刺しにしたように見せかけてな。
見せかけた…?めったやたらとナイフを振り回して動脈を正確に切断出来るはずがねえ。
今回の2つのヤマの刺切創は全て計算の上でやってるって事だ。
そんな事出来る奴が同時に2人も出てくる偶然があるか?ないだろうな。
ああ?実はこっちもうちと神奈川のヤマは繋がってるんじゃないかって見立てが出始めたところだ。
見立ての根拠は?殺された高村弁護士と加古川院長には重大な共通点があった。
覚えてるか?2年前に起こった無差別通り魔事件。
うん…。
無差別通り魔っつったらお前波多野…。
実行犯の波多野進は刑法39条に守られ無罪となった。
この事件の弁護士と弁護側鑑定人となった精神科医が今回殺された2人だ。
(坂東)敬礼!休め!
(坂東)刑事部長お願いします。
(五代)うむ。
え〜諸君も承知しているとおり先日都内で起きた弁護士殺害事件と神奈川の病院長殺害事件にはその犯行手口の類似性また被害者が両名ともに2年前の無差別通り魔事件に深く関与しているという事実から同一犯による犯行ではないかという線が浮かび上がりこうしてここに合同捜査本部が設置された。
諸君には社会的な関心も高いところから捜査を徹底し一刻も早い検挙を望む。
以上だ。
地取り鑑取りは必ず班長への報告を義務づける。
班長は分析検討し我々に報告。
決して情報を抱え込むな!各班ごとに今までの両事件の情報をすり合わせたあと明日からの捜査に備えてくれ。
以上。
(仲根)解散!
(一同)はい!倉石!弁護士殺害の死亡推定時刻が二通りのままだ。
どちらが正解なんだ?そのうちわかる。
あれが噂の検視官ですか。
組織にはそぐわない男のようですね。
警視庁さんも大変だ。
こっちもやっぱり死斑出てねえんだなあ。
(大沢)動脈からの大量失血がありましたから。
着衣はどうだ?下半身濡れてなかった?下半身ですか?ああ。
あ…こちらの遺体のズボンが濡れていたんです。
いえそういう事はありませんでした。
本当に〜?よく見た?はい。
ああそう。
続けて。
はい。
う〜ん…。
あっちょっと…1個前1個前。
なんですか?縫合したあとの写真ですね。
(鐘の音)こちらは都内にある斎場前です。
本日ここで2年前に起きました無差別通り魔殺人事件における被害者4人のご遺族による三回忌合同法要が営まれようとしています。
(場内の音楽)
(樋口祐輔)ねえどうしてママ死んじゃったの?
(樋口康夫)ううっ…!あの…ちょっといいですか?
フランスパリ
歴代の皇帝芸術家たちが愛した伝説のホテル
あなたの期待を裏切る事は決してございません
ただしこよいのお客様はちょっと変わった方ばかり
あの時…いてくれたんですよね?霊安室に。
私ろくにあいさつも出来なくて…。
申し訳ありませんでした。
いや…。
わかんないんですよ。
なんでこんな事になったのか。
2年経ってもまだわからなくて…。
なんで好美があんな目に遭わなきゃならなかったか。
どうして好美じゃなきゃならなかったかって。
だから私あの街を…あのあと何度も歩いたんですよね。
(直子の声)だってあんなとこに好美がいる理由がないんです。
知り合いもいないしあそこに行く理由がないんです。
だから…歩いたんですよ。
何度も何度も。
でも結局なんにもわからなくて…。
わかったのは事件の事なんかもうなんにもなかったような顔してあの街をみんなが歩いてるって事だけで…。
(直子)私思うんですよ。
私の育て方が間違ってたんじゃないかって。
だから好美があんな目に遭ったんじゃないかって…。
そう思うと…生きる事がつらくなって…。
つらいのに…頭の中もうその事しか考えられなくなって。
そんな事の繰り返しで毎日毎日そんな事の繰り返しで…。
それもこれもみんなあいつのせい…!好美は死んだのにあいつは生きてるんです。
責任能力ってなんですか?なんであいつが生きてるんですか?好美が死んで私たちがこんなに苦しんでるのになんであいつはみんなに保護されて生きてるんですか?ねえ倉石さんって警察の方ですよね?なんでなんですか?教えてくれませんか?俺の仕事はホトケの声を拾い尽くす事。
それだけ…。
そう…。
そうですよね…。
結局みんな…私たちの事なんてわかってくれないんです。
そんな事ありません。
私たちは…。
だったら…教えてください。
最後の声。
教えてくれませんか?好美の最後の声!ねえ聞かせてくださいよ。
ねえお願いですから!ねえ!最後の声を聞かせてくださいよ!教えてくださいよ!ねえ!教えて!おい!どうしたんだ?
(直子)ねえなんとか言って!私がこれから生きていけるような言葉をちょうだい…!直子!私を助けてよ!申し訳ありません!こっち来い!
(直子)お願いだから…!
(直子)ああ…!好美の最後の声…。
(仲根)容疑者が挙がらないなんて報告はいらない。
遺体の状況を思い出せ。
被害者に対して恨みを持った者の犯行だ。
被害者両名は2年前無差別通り魔事件の犯人波多野進を無罪にしている。
…となれば容疑者はこの中にいる!徹底的にアリバイを洗い出せ!俺のとは違うなあ…。
高村弁護士の死亡推定時刻は2つ出た。
午後6時から8時と午後8時から10時…。
なぜだ?犯人が死亡推定時刻を欺くために死体に細工をしたからだ。
恐らく加古川院長もおんなじだ。
今あんた方が考えてる死亡推定時刻から犯人を絞り込むのは…意味がねえ。
倉石。
出て行ってもらえないか?倉石検視官。
鑑識の君が捜査に口を挟む権利はないと思うんだが。
権利?ホシを挙げるのに鑑識もデカも関係ねえや。
君たちの仕事は我々の捜査を円滑に進めるため迅速に鑑識報告をあげる事だけだ。
検視官風情が推理をひけらかしたところでなんの意味もない。
それともう一つ。
君は検視してもいない加古川事件の鑑定にケチをつけている。
しかし解剖を行った法医学の権威安永教授の鑑定書には君の言ったような事実は一つも見受けられない。
確か安永教授は君の恩師のはずだ。
君は今恩師の安永教授を愚弄している事になる。
違うかね?死体に細工をするような人間が遺族の中にいるわけねえだろ。
あきれた男だ。
(柱時計の時報)ちょっとすいません。
(仲根)これで波多野を殺す気だったんですか?知りません。
(仲根)高村加古川の両名は波多野を無罪にした張本人ですよね?憎かったでしょう?そうね。
でもどこかの誰かが殺してくれたし。
(仲根)どこかの誰か…。
その誰かっていうのがあなたっていう事もあるんじゃないですか?知りません私。
(仲根)2つの事件の当日ともパート先のスーパーを出たのが午後8時。
それ以降は自宅にいた。
本当ですか?何度答えれば済むんですか?何度でもです。
本当ですか?本当です。
(永嶋)本当に波多野を殺そうとしたんですかね?人は…そんな簡単に人を殺せるものじゃない。
でも…。
本部じゃ高村加古川も殺害した可能性があると踏んでるって話です。
まさか…。
(永嶋)どうかしたんですか?いや…へへ。
なんでもねえ。
ちょっと出てくるわ。
食べないんですか?ん?やる。
食べていいよ。
ん?体の具合よくないんじゃありませんか?少し休んだらいかがですか?留守は私と永嶋君で守りますから。
何眠てえ事言って…。
お願いですから!もう二度と言いません。
無理せず休んでください。
お願いします。
お願いですから。
俺は平気だ。
でも…。
まだ根こそぎ拾えてねえ!お前も同じだろ?
(パトカーのサイレン)
(仲根)倉石!よう!警視庁の検視官は泥棒まがいの事をするらしい。
高村と加古川を殺したのは遺族じゃねえ。
他にいる。
高村と加古川が扱った他の事案の中に恨みを持つ人間がいるんじゃねえか?なーんて思ってよ。
へへ…。
え…?なんか…思い当たる節でもあるの?誰もそんな事は言ってない。
ええ?心当たりあるはずだ神奈川県警さんには。
おう。
(仲根)なんの話ですか?立原管理官。
とぼけないで頂きたい。
8年前高村と加古川が組んで殺人事件の被告となったある男を心神耗弱で減刑しようとした案件が神奈川管内であったはずだ。
おお〜!
(一ノ瀬の声)殺されたのは女子大生の松川千晶さん。
当時22歳。
死因は電気コードによる絞殺。
2日後容疑者が浮上。
当時被害者のバイト先の同僚で元恋人だった浦部翔太23歳。
(浦部翔太)僕じゃありません。
僕はやってません。
殺害当日の夜君と似た男がマンション周辺で目撃されてる。
彼女の部屋にも君の指紋があった。
行ったんじゃないのか?彼女のところへ。
お前がやったんだろ?お前がやったんだろ!えっ?君が…やったんだね?やりました。
この時弁護についたのが高村弁護士。
彼は浦部翔太に高校時代不登校などに悩み心療内科に通っていた事実を探り出しすぐさま精神鑑定を要求した。
当時慶長大学の准教授だった加古川の鑑定の結果は心神耗弱。
ところがその浦部翔太が…。
公判中に拘置所で自殺した。
被告人死亡により控訴は棄却されたがそれから2か月後別の事件で逮捕された男が被害者に乱暴しようとして部屋に押し入り暴れたので殺したと自白した。
つまり浦部翔太は…無実だった。
唯一の肉親である父親の浦部謙作は当時神奈川県警の現職刑事で今は所轄の駐在所で勤務をしています。
そうですよね?事件当時浦部は身内であるという理由で捜査から外されている。
自白を強要された揚げ句に高村と加古川によって息子は心神耗弱の判断を押しつけられ自殺に追い込まれた。
浦部がこの2人に恨みを抱いたとしても不思議はない。
あなたもそう思ったはずだ仲根管理官。
浦部は今回の事件には関係ありませんよ。
高村加古川両事件ともアリバイは証明されていますから。
そんな事は聞いてはいない!私が言いたいのはなぜこの事をあなた方が隠していたのかという事だ。
情報は共有するとお互い決めたはずだ。
今回の事件にかかわりない以上そちらに伝える必要がないとそう思ったまでです。
そんな言いぐさあるか!?貴様!!私はあなたの部下ではない。
どなられる覚えもない。
この事上に伝えます。
(好美)やめて!
通り魔殺人事件発生
検視にあたった倉石は愛する人を奪われた遺族の悲しみに触れる
帰るわよ好美。
最後の声を聞かせてくださいよ!殺せー!
しかし犯人は心神喪失とされ無罪となった
(裁判長)無罪。
それから2年被告を無罪に導いた弁護士と精神科医が殺され捜査の目は通り魔事件の遺族に向けられた
容疑者はこの中にいる!俺のとは違うなぁ…。
ホシを挙げるのに鑑識もデカも関係ねえや。
死体に細工する犯人の影を一人追う倉石
そこに立ちはだかったのは…
アリバイはこの際関係ねえや。
お前のような男は必ず潰される。
倉石さん!まだ根こそぎ拾えてねえ!病気だったら人を殺してもいいって言うんですか?拳銃用意!ふざけるんじゃねえ!向こうの刑事部長から厳重抗議を受けた。
倉石合同捜査本部にこれ以上波風を立てるな。
お前のせいで本部が混乱する。
俺のせいじゃないでしょう?もういい。
ゆっくり食わせろ。
次はないからな。
なんだ?呼びつけといてよ〜。
あらどしたの?部長。
浦部謙作をこちらで調べさせてください。
今の時点で奴の事がマスコミに漏れたら以前の誤認逮捕が蒸し返される。
いい事はなんにもない。
やめておけ。
上からそうお達し受けたんだ?組織っていうのはそういうもんだ。
お前にはわからん。
部長。
浦部謙作にはアリバイがあるんだろ?アリバイがある奴をどうやって調べるっていうんだ?アリバイはこの際関係ねえや。
何?倉石の言葉を借りるなら高村と加古川を殺したホシは死亡推定時刻をずらすために死体に細工をしているはずです。
浦部は現職の警察官です。
しかも元刑事。
数々の現場を踏み死体にも詳しいはずです。
浦部なら…細工をやれない事はありません。
部長。
立原…。
お前自身で調べるのが条件だ。
いいな?死亡推定時刻の件確かなんだろうな?ああ。
そいつは間違いねえ。
わかった。
顔色があまりよくないな。
ただの飲みすぎだ。
気をつけろ。
ようイチ!どうも。
どうした?いや…はい!ああっ…!
(浦部謙作)息子です。
あの事件の前までは忙しくて一緒にいてやる事も出来なかったのでせめて今は一緒にとそう思って…。
早速ですが…。
私は今回の事件とはかかわりありません。
すでに県警によってアリバイも確認されてるはずです。
今回の場合はアリバイに頼るわけにはいかないんでね。
どういう意味ですか?捜査の手の内を明かすわけがないですね…。
あなたは当時現職の刑事だった。
恐らく県警からは暗に辞めろと示唆されたはずだ。
なのに今もここで勤務されてる。
理由はなんですか?自分への罰です。
罰…?息子に容疑がかかった時私は何も出来なかった。
高村弁護士には減刑するしか道がないと言われ精神鑑定にも同意してしまった。
だがそのせいで…。
(浦部の声)何を言っても信じてもらえない息子は自分の無実を主張するために自殺したのだと思います。
私は警察官を辞めるつもりでした。
ですが思い直したんです。
辞めたら私はなんの罰も受ける事にならない。
たとえ周りからどんな辱めを受けても警官としての職務を全うする。
それが…残された自分への罰だと思ってます。
あの2人を殺したのは誓って私ではありません。
あの男から目を離すな。
(直子)583円のお釣りになります。
はい。
どうもありがとうございました。
(直子)いらっしゃいませ…。
被害者の遺族に波多野から謝罪の手紙が届いてるそうですね。
読みましたか?156円です。
読んだんですか?あの手紙を読んだら好美が帰ってくるんですか?だったら読みます。
あの男に謝ってほしいなんて一度も思った事ありません。
私はただ好美を返してほしいんです。
9844円のお釣りです。
彼は裁判で無罪になった。
病気だった。
病気だったら人を殺してもいいって言うんですか?また来ますよ。
(永嶋)何してるんですか?高村弁護士の事務所にあった湯飲みもちょうどこのくらいの量しか入らない。
なのにこんなに染みになってるでしょ。
ほら染み方が全然違う。
(永嶋)つまり犯人が別の何かで濡らした…。
そう。
それをごまかすためにお茶をかけた。
倉石さんは最初からそう見抜いてた。
だから見抜けなかった私を検視から外した。
確かにズボンの染み方は違います。
でもそれじゃあどんな細工をして死亡時刻をずらしたっていうんですか?それはわからない。
けど倉石さんは…。
小坂さん!倉石さん倉石さんって言うのやめましょうよ!いつでも倉石さんが正しいとは限らないじゃないですか。
永嶋君…。
すいません…言い過ぎました。
わかった。
ごめん…。
ただ…。
私はこの仕事で一生やっていきたい。
だから考える。
どうしてこうなったのか。
なぜそうなのか。
根こそぎ拾いたい。
そうしないといつまでたっても倉石さんに追いつけない。
すいません。
あの…警視庁の方であっても許可なく入れるわけにはいかないんです。
許可?許可なら今度取るよ。
今度って言われても…。
現状保存してんだろ。
はいしてますけど…。
あれ…こっちだっけ?はいそうです。
あっあの…。
ああ…。
(せき)えー…。
コスモスってコンビニ知ってる?はいよく行きます。
本当…。
(仲根)倉石はいるか?
(永嶋)なんですか?一体。
失礼じゃないですか。
(仲根)どけ!起きろ倉石。
起きてるよ。
今度は加古川の現場に無断で立ち入った揚げ句うちの検視官にも加古川の胃の内容物をしつこく聞き出そうとしたそうだな。
加古川事件はこちらの領分だ。
事と次第によっては懲戒の対象になる。
合同捜査だろ。
県警も警視庁もねえ。
(仲根)建前はそうだが組織はそんなもんじゃない。
組織をなめない方がいい。
お前のような男は必ず潰される。
それが組織に生きる者たちのルールだ。
だったら死んだ方がマシだな。
何!?お前たちだっていつまでも組織の中で生きてられるわけじゃねえだろう。
出かける。
(早坂真里子)よいしょ。
(真里子)いいの?最後の1匹だったんじゃないの?友達と一緒の方がいいってさ。
なあ。
嬉しいの?
(真里子)嘘ばっかり。
飼うのに飽きたな?バレたかぁ…。
フフ…。
飲んでく?いや…まだ仕事が残ってる。
いいかな?触っても。
え?ん…。
ああ…。
触って触って。
どれどれ…。
おっ元気か?どうだ?腹ん中は。
何?ママが優しいから出て来たくねえ?おっ…おおっ…動いたぞおい。
なんだ…男か?いや女かな…。
フフ…。
赤ん坊大事にしろよ。
うん。
生まれたら抱かせてあげる。
ああ…。
あばよ。
(山下美奈子)明日は横浜医大の安永教授とお話をする日です。
知っていますね?
(波多野)僕あの人の本を読ませてもらいました。
すごく感動しました。
(美奈子)それから以前からあなたが望んでいた被害者の方のお墓参りですが明日の午前中に行けるように手配しました。
(波多野)その事なんですが…。
僕が外に出る事で先生たちにご迷惑をおかけしてはいけない気がするんですが…。
(美奈子)大丈夫ですよ。
あなたが心配する事はありません。
お薬忘れないでね。
はい。
(直子)帰ってるの?ああ。
こんな手紙読まないでよ。
でも何が書いてあるのか確かめなきゃ。
確かめてどうするの?手紙読んであいつを許すの?そうしたら好美返してもらえるの?冗談じゃないわ。
そんな事よりあいつをなんとかしてよ!直子いつまでそんな事を言ってるつもりなんだ。
どんな事をしたってもう好美は帰ってこない。
お前にだってわかってるはずだろ。
さっき横浜聖城会病院から電話があった。
あの男が好美の墓参りをしたいと言ってるらしい。
一応許可しといた。
嘘…。
俺も迷ったけどいい機会じゃないか。
事件にいつまでもこだわっていたら俺たち前に進めないだろ。
前になんか進まなくたっていいわ…。
あいつに墓参りなんか…。
そんな事したら…今度こそ本当に殺してやる!直子…。
殺してやる…。
直子!先生は昔将来を嘱望された外科医だったって聞いた事がある。
なんだい急に…。
なんでそんな人がこんな地味な法医学なんか始めようと思ったのかいつか聞こうと思ってた。
いやいいんだよ…。
いいのいいの別に。
話したくなけりゃあいいの。
いや…。
これミック・ジャガーの好物。
肉じゃがー。
ハハハハ…。
ああ…ハハハ…。
君の奥さんも不幸な亡くなり方をしたんだったね。
え?妻は…光子は私の高校時代の同級生でね。
彼女が看護師として働き出した大学3年の時に結婚したんだよ。
妻が働き私は勉強に専念する。
おかげで私は医者になり妻は看護師を辞めて家に入った。
だが私が外科医を志望した事で私たちの関係が変わったんだ。
いや…そうじゃないな。
妻は何も変わっちゃいない。
変わったのは私の方だった。
外科医は私の天職だった。
オペを任されると食事時間を削ってでも仕事に精を出した。
当然家庭はおろそかになる。
家にもろくに戻らなくなりその間彼女はたった一人で私を待ち続けた。
(安永)結果彼女は心の病を患った。
だが私はそれでも仕事を優先した。
彼女が「大丈夫だから」と言ったからだ。
大丈夫だから…。
私はその言葉にすがった。
本当は大丈夫なんかじゃないとわかっていたのに現実を認めたくなかったんだよ。
そして…ある日突然天罰が下った。
しかし本当に打ちのめされたのはそのあとだったよ。
妻は妊娠していたんだ。
私は全く気づいていなかった。
あとで担当医の先生に話を聞いた。
妻は病のために出産に対して不安を感じ妊娠の事実を私に知らせられないと言ったそうだ。
私の仕事を邪魔したくない一心で病が悪化した事を一言も話さなかった。
そして…病からくる死への誘惑と必死に闘ってた。
(安永光子)死にたくない…。
私死にたくない!先生死にたくない!死にたくないんです!私さえもっとそばにいてやっていたらあんな事にはならなかった。
妻を死なせたのは私だ。
そんな男に人様の命を預かる資格なんてありゃしない。
だから外科医を辞めたんだよ。
法医学を始めたのは理不尽に命を奪われた人の最後の声を拾うためだ。
私は妻の最後の声を拾えなかった。
だからこそ法医学者として最後の声を拾い続けようと思った。
それが死にたくないと苦しんでいた妻へのせめてもの罪滅ぼしになるのではないかと信じてやってきた。
ああ…ハハハ…。
ああいかんな。
少し酔ったようだ。
いやいや…。
そんな事より倉石。
本当は事件の事で何か話しに来たんじゃないのか?フッ…。
県警の調べじゃ加古川院長は正午過ぎにレストランで昼食をとってる事がわかってる。
その内容物が消化されきってる事と直腸内温度に矛盾がない事から先生は死亡推定時刻を午後8時から10時の間と鑑定してる。
そうだよな?ああそうだ。
けどよ加古川が食事をしたのは正午過ぎ…。
そこから夜の8時10時まで何も食わなかったってのはどうにも妙だ。
奴は…。
家にあるものをこうやって食ってたはずなんだよ。
なのに消化物が確認されてねえんだよ。
こうは考えられ…。
県警の大沢って検視官にも聞いた。
先生が胃にハサミを入れてすぐ食物残渣なしって言ったんで自分の目では視認してねえって話でさ…。
おい倉石…妙な事を言わないでくれよ。
私が食物残渣なしと言ったのは本当に胃の中が空だったからだよ。
フフッ…。
だったらなんか食ったってのは俺の勘違いかな…。
恐らくな。
あっこれうまいよ結構。
食べてよ。
頂くか。
あっ氷がねえや。
取ってくるわ。
こっちだな?ああ。
(安永)倉石今日はとことん飲もうな。
俺もそのつもりだよ先生。
(氷が落ちる音)はぁ…。
(電話)はい検視官室。
倉石さんが救急病院に運ばれたそうです。
あっ…。
(一ノ瀬)しかも足りないし…。
一ノ瀬君…。
ああ…。
貧血状態だったそうです。
まあ疲れが溜まってるようなので検査入院した方がいいって先生が。
そう…。
これで当分動けませんね。
そうですよ。
うるせえ。
イチビール。
ダメです。
なんですか?あっ…ううん…。
死亡推定時刻をずらす細工がわかったような気がします。
加古川のズボンは高村の時のような染みになっていません。
つまり犯人は直腸内温度を狂わせるために高村の時とは違う方法を用いたって事です。
死亡推定時刻は直腸内温度で計測する。
ホシはそれを知っていた。
犯人は直腸内に氷を入れ温度を下げて死亡推定時刻をずらした。
そしてその濡れをごまかすために…。
加古川の着衣に染みがなかったのは同じ手口にして発覚する事を恐れたからです。
今度は何を使った?消毒用アルコールだと思います。
アルコールなら揮発性が高いから体温が下がる。
当然直腸温度も。
しかも証拠が残らない。
そんな事が出来るのは法医学に精通している人物…。
安永教授。
ただまだ全てが推測です。
物的証拠がありませんし動機がわからない。
だったら証拠を探せばいいのよ私たちで。
そうですよ。
探しましょう。
(一ノ瀬)倉石さんが倒れた鰻屋の前です。
倉石さんはこの映像を確認するためにここに出向いたんです。
高村は事件当日の午後2時鰻を食べています。
それを確認するように尾行してきた男が鰻屋に入っている。
つまり…。
つまりホシは死亡推定時刻をずらす細工をするために高村がいつ何を食べたかを知る必要があったと言いたいのか?はい。
強引すぎる。
この男が安永だという証拠はどこにもない。
(リモコンの操作音)見てください。
この男は手袋をしてません。
店内にこの男の遺留指紋があるはずです。
(坂東)頭を冷やせ!
(坂東)高村と加古川が殺されて何日経過したと思ってる!今さら店から指紋など出てくるわけがない!やってみなきゃわかんねえだろうが!
(坂東)おい!管理官高村が出向いた鰻屋と加古川が昼食をとったレストランの指紋採取のための令状を取ってください!仮に一つでも安永教授の指紋が出れば犯人だと特定する有力な証拠になるはずです!
(坂東)お前ら…。
捜査は行き詰まってるはずです。
やってみる価値はあると思います。
お願いします。
お願いします!こちらです。
はい。
伝票持ってきました。
はい。
お願いします。
お願いします。
(五代)安永教授の指紋は警察関係者って事でデータバンクに入ってるそうだが出ると思うのか?正直わかりません。
ハハハ…。
ダメ元か。
それとも下のガス抜きのつもりか?いえ潰してみる価値があると思ったまでです。
やるんだったら結果を出す事だな。
はっ!
(携帯電話)失礼します。
(携帯電話)俺だ。
何!?浦部の姿が消えました。
倉石さん。
倉石さ…。
(叫び声)波多野を襲った時が勝負だ。
(刑事たち)はい。
帰って!帰れ!帰れ!
(直子)あんたなんかに手を合わせてもらったって好美は喜ばない!帰って!帰れ!帰れ!早く連れて帰って!でないとこいつを殺してしまう。
早く!早く!早く…。
(泣き声)
(泣き声)
(刑事)向こうの部屋見てきます。
奥も見落とすなよ。
はい。
管理官!
(浦部の声)「私は40年近く警察官として奉職して参りました」「警察官である事は私にとって誇りであり生きる糧でした」「ですが8年前息子がいわれなき罪に問われ強引な取り調べを受け自白を強要された揚げ句自殺しました」「息子は本当は無実だった」「この8年の間様々な誹謗や中傷にも耐えこの駐在所で生きてきました」「だが今高村と加古川が殺され私が疑われている」「なぜ私が…」「なぜ私をそっとしておいてくれないのか…」「私はこれから波多野を殺す」「全てを潰してやる」「警察の威信も信頼も」「これは8年間いや40年間沈黙してきた私の復讐だ」小坂さん出ました!
フランスパリ
歴代の皇帝芸術家たちが愛した伝説のホテル
あなたの期待を裏切る事は決してございません
ただしこよいのお客様はちょっと変わった方ばかり
戻りました。
聞いてるよ大変だったね。
今日は本当にすいません…。
(銃声)
(警察官)中へ!
(銃声)
(非常ベル)
(銃声)
(パトカーのサイレン)銃抜け!
(一同)はい!拳銃用意!ハアハア…。
(安永)波多野君。
大丈夫か?はい。
制服の警官を見なかったか?拳銃を持ってる。
向こうです!行け。
はい。
これを打てばゆっくりと休めるからね。
え?ハハ…気分がいいだろ?これから君がきちんと2年前の事件の償いをする手助けをしてあげようと思ってるんだ。
僕はあの時正気じゃなかった。
病気でした…。
心神喪失の事を言ってるのかね?
(笑い声)君の演技力にはほとほと感心するよ。
私も騙されかけた。
あの時君は正気でないように装っていただけだ。
そうなんだろ?犯した罪は償わなければならない。
それが人としてのあるべき姿だ。
(荒い息遣い)ここは人を殺す場所じゃねえよ先生…。
(弾を装填する音)待ってたよ。
何?俺が波多野を殺してどうなる?あんたをおびき寄せるための手紙だあれは。
待て。
話を聞こう。
だから撃つな。
(銃声)おかしいなと感じたのは加古川の解剖後の先生の縫合だ。
昔実習で見た先生の縫合は丹念で繊細で死者に対する労りが見えた。
だが加古川の縫合にはそれがなかった。
わずかな縫い目のほころびだが先生は被害者に対して悪意にも似た感情を抱いているような気がした…。
先生の最終的な目的はこいつを殺す事だ。
けどなんでだ?なんで先生がそんな事しなくちゃいけねえ…。
こいつを台所で見つけた時先生の覚悟だけはわかった。
この痛み止めを使う病気はそう多くねえ。
俺も使ってるよ。
痛いか?痛いのは生きてる証しだ。
死んだら痛みも感じない。
寒さも暑さも何もかも感じない!そんな場所に息子を追い込んだのがお前だ。
浦部!来るな!これからこいつには息子のいる世界に行ってもらう。
そこで息子に詫びろ。
許しを乞え。
息子が許してくれたら戻ってくればいい。
やめろ!よせ!お前を許せるのは息子だけだ!こんな事が息子さんへの償いになるのか!?その男にもまた家族がいる。
妻や子供がいる。
あんたがその引き金を引いた途端今度はその家族があんたと同じ地獄を見る事になる!あんたはそれを望むのか?翔太!
(銃声)
(仲根)浦部!人ってのはてめえの命がもう長くねえとわかった時何考えるのか…。
この先どう生きていくのか覚悟を決めなきゃなんねえ。
先生はその覚悟の決め方間違ったみてえだな。
何を言うか…。
君にはわからん。
ああわかんねえな!イテッ…ああイテッ…。
2年前だ。
私はあの通り魔事件の現場にいたんだ。
(人々の悲鳴)
(雅代)死にたくない…!死にたくない…。
助けて…。
(光子)死にたくない!あなた…死にたくない…!
(安永の声)私は逃げた…。
30年前と同じだ。
逃げたんだよ私は。
何百何千もの死体を解剖し最後の声を拾い続けてきたつもりだった。
その声を聞く事が妻への贖罪になると信じてきたはずなのに私は逃げた。
死んでいく被害者の最後の声を拾わずにだ。
昨年の夏私は末期がんを宣告された。
余命は半年…。
残り時間をどう生きるべきか考えたよ。
だが答えは見つからんのだ。
この歳になってもまだこの世にしがみつこうとする。
闇が訪れる不安に夜も眠れない。
そんな頃だった…。
(安永の声)二審が結審する前の事だ。
人を殺しておいて無罪だなんておかしい。
病気だったら人を殺してもいいって言うんですか?
(裁判長)静粛に。
この男はこのままだったらまた無罪になってしまう。
(裁判長)静粛に。
(直子)そんなの変です。
こんな裁判変です!
(笠間大志)死刑にしろ!死刑だ死刑!
(笠間)こんな裁判おかしいだろ!
(裁判長)退廷を命じます。
(裁判長)静粛に!
(安永の声)笑ったんだよ。
この男はそれまで終始殊勝な態度を示していた。
それが笑った。
一瞬だったが確かに笑った。
おかしいじゃないか。
どういう事だ?反省していたのは嘘なのか?二審でも無罪判決が下されこの男は野に放たれた。
だが私にはどうしてもこの男の笑った顔が脳裏に焼きついて離れなかった。
もしかしたらこの男はあのむごたらしい犯罪を犯した時正気だったんじゃないか?だから笑った…。
(高村則夫)詐病…ですか?ええ。
なんか確証でも?知ってたんですね。
もしそうだとしてもあの精神鑑定を採用し刑法39条で無罪判決を言い渡したのは裁判長だ。
私ではない。
違いますか?あなたの鑑定によって心神喪失を演じおぞましい犯罪を実行した犯人が無罪となった。
その責任や覚悟をどう考えるんですか?
(加古川有三)ああ…僕は精神科の医師ですが精神鑑定なんてのは十人十色だと思ってます。
(携帯電話)よろしいですか?
(携帯電話)どうも高村先生。
ええ例の事件ですか?多分その線で鑑定はいけます。
(加古川)ええ大丈夫です。
(安永の声)高村と加古川は法と医学の倫理など無視して自分たちの利益を得る事だけを考えるような人間だった。
権威名声金銭…。
それらを得るために世間の評判を集める事件を利用しているだけだ。
この男の事も詐病である事を知りながら心神喪失者に仕立て上げた。
そして今次の悲劇を生み出そうとしている…。
(安永)もう逃げたくはない。
後悔を抱えたまま死んでいくなど我慢出来ない。
ならばその被害者の無念を晴らす事こそ私の務めだ。
それが死者の最後の声に応える事になる。
だから…!だから2人を殺し…。
神に代わってこいつと刺し違えるっていうのかい?俺のとは違うなあ…。
「物言わぬ死者の声に静かに耳を傾けろ」…。
そう俺の胸に刻み込んだのは先生…あんただぜ。
あの言葉があったからこそ俺は今までひたすら死人の声を拾い続ける事が出来たんだ。
だが今のあんたなんだ?死んじまうのが怖くて残された時間の中でジタバタあがいてもがいてるくだらねえ男にしか見えねえ。
何が死者の最後の声に応えるだ…。
ふざけるんじゃねえ!先生のここには死んだ奥さんなんか本当にいんのか?何?俺はさあの世からお迎えが来るその日まで精いっぱい生きる。
罵られようがバカにされようが関係ねえや。
でよあいつと…雪絵とまた会えたら俺は精いっぱいやったぞ…。
お前の分まで生き抜いたぞどうだ!そう胸張って言いてえ。
そこをどけ倉石!じゃなきゃよ…!生きてえ死にたくねえって思いながらこの世から消えてなくなった奴らに顔向け出来ねえ…。
よくねえ…よくねえよ。
最後まで…最後までここにいる奥さんの声耳澄まして聞いてみろよ。
今あんたが…先生がやってる事に笑ってうなずいてくれてるか?
(ナイフが落ちる音)倉石…倉石!
(刺す音)うおーっ!先生!先生!先生しっかりしろ!大丈夫か?倉石…倉石…。
はい。
これでいい。
お前は生きろ。
どこまでも…。
倉石…。
おい…おい…おい先生!おい!おいこんなところで死ぬな!先生!うわーっ!
(刺す音)お前殺しても僕はまた無罪だよ。
んっ…!ダメだ!ダメだダメだダメだ!ダメだダメダメ!ダメだ!僕は治ってないんだ。
おかしいままなんだ!ああダメだダメだ!おかしいままだ僕はまだ!ダメだ!ああ…ああ…!ダメだダメだ…!始めるか。
頭部…異常なし。
あんたよく我慢したな。
俺は今まで何千って数の死んじまった人間の最後の声を拾ってきた。
それだけだ。
人を救う事なんて出来るわけがねえ。
ただもしかしたらこの街のどっかに娘さんの最後の声が残されてるのかもしんねえな…。
あの…これは?ああ…いたずらでシャッターに絵を描かれたりするからさ。
まあだったらって若い奴らに描いてもらったんだよ。
いつぐらいの話ですか?2年ぐらい前かな。
2年前…?
(幸彦)お〜好美お前絵うまいなお前。
ねえこれ見てこれ見て。
ほら!「優秀」…。
ママちょっとちょっと!好美が絵描いたの。
ちょっと見てよ。
ちょっと…。
絵上手でしょ?ほら。
いや〜びっくりしたな。
似てるでしょ?似てる〜!あっ…!ああ…!2015/02/08(日) 21:00〜23:10
ABCテレビ1
日曜洋画劇場 特別企画「臨場 劇場版」[デ][字]
大人気ドラマの映画化。型破りな検視官・倉石義男(内野聖陽)が物言わぬ死者の声を聞き、事件の真相に迫る!執念の捜査が導き出した衝撃の真実とは…。
詳細情報
◇番組内容
都内で無差別殺傷事件が発生するが、実行犯は無罪となる。その2年後、事件を無罪に導いた弁護士と精神科医が相次いで殺害される。殺傷事件の被害者遺族に疑いの目が向けられるなか、犯人は別にいると考える検視官・倉石。やがて誰も想像しなかった衝撃の真実が明らかになっていく…。
◇出演者
内野聖陽、松下由樹、渡辺大、平山浩行、益岡徹、高嶋政伸
段田安則、若村麻由美、柄本佑、平田満、市毛良枝、長塚京三
◇原作
横山秀夫(『臨場』光文社文庫刊)
◇監督
橋本一
◇脚本
尾西兼一
◇音楽
吉川清之
【イメージソング】
スキマスイッチ『ラストシーン』
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/nichiyou/
ジャンル :
映画 – 邦画
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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