花燃ゆ(6)「女囚の秘密」 獄の中でも生まれ変わる白熱教室誕生  2015.02.08


(寅次郎)これは取って置きなさい。
この先どんな苦難に襲われようと今夜の我々の絆があれば志は必ず果たせます。
その証しに。
金子様は寅兄様が殺したんです。
違う!俺は金子と生きたんじゃ。
ならば証しを見せてつかぁさい!ああ〜!
(久子)高須久です。
お願いがございます。
うちが…でございますか?
(梅太郎)そうじゃ。
獄の中に1人女がおる。
名を…高須久子。
高須様。
(梅太郎)寅次郎を通じて申し入れがあった。
亡き父の菩提を弔いたいんで遺品をもらい受けたい。
獄にてお前を見かけてその使いを頼めんかと。
はい。
お願い申し上げます。
書状を持参致しました。
お取り次ぎ願います。
お願い申し上げます!
(扉が開く音)
(テーマ音楽)・「愚かなる吾れのことをも」・「友とめづ人はわがとも友と」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「吾れをも友とめづ人は」・「わがとも友とめでよ人々」・「燃ゆ」高須久子。
後年吉田松陰との交流で名を知られる事になるこの女性はこの時在獄2年の身であった。
高須久です。
(福川)頼まれ事の報告がしたいそうじゃ。
あ…お屋敷を早速お訪ねしました。
ですが…なかなかうもういかんで…。
追い返されましたか。
せめて書状だけでもとお願いしたんですが…。
無理は承知の上です。
何度でも。
何度でも訪ねて頂けませぬか?はい。
お願い致しますね。
何か?あ…いや…おきれいです。
あなたもかわいいですよ。
ほら。
よう見えません…。
あっ…。
あの…。
兄は元気でおりますか?ここしばらくお見かけしてませんので…。
これをお渡し願えますか?これは…。
大切な方の残したもんです。
元気が出るかもしれません。
あと…これを。
私に?はい。
母に教わって作りました。
あなたの事大層心配されておりました。
(富永)愚かなやつめ。
己を責めとるんじゃ。
弟子を殺した己をな。
己を責める…。
(滝)そんなにおきれいな方なんですか久子様は。
でも何であのようなお方が獄におられるんでしょう?人にはいろいろ事情があるんじゃ。
詮索すんな。
次。
「資治通鑑」。
「資治通鑑」と。
次。
「日本外史」。
「日本外史」。
次。
兄上の文字何かせいてるような…。
何?「字」?字が何か?これ寅次郎の字ではありゃせんね。
(梅太郎)紛れ込んだようじゃな。
(百合之助)これほどの達筆はわしも見た事がない。
でもこの字…。
差し入れじゃ。
あ〜寅次郎なら隣じゃ。
お主にじゃ。
ええ?わしに?ほれ。
吉田の妹御からじゃ。
わしに?
(福川)お主が書いた文字にいたく感服したそうじゃ。
だがところどころ墨がかすれておったんで筆先が荒れとるんではと。
うん…うんうん…よう気付いた。
わしの文字によう気付いた。
吉田の妹の慧眼恐るべし。
好みの品でないなどとわがまま言うなよ。
かあ〜!フフフフフフ…。
どうじゃ?妹の心尽くしの品でございます。
どうぞご愛用下さい。
ん。
いや〜久しぶりに書を書きとうなった。
どれ。
墨でもすろうかのう。
あ〜望むなら稽古をつけてやってもええがの。
えっならばわしに教えてもらえるか?あっ?
(吉村)わしも頼めるか?何だと?我が句が一つでも世に出るなら見苦しゅうない文字で残したいんじゃ!お前の句など世に出ん!教わりたいと言うとるんじゃ。
素直に教えろ!
(福川)もめるな!離れろ!
(せきこみ)お願い申し上げます。
お取り次ぎ願います。
おい!楷書は誰を学べばええ?
(富永)欧陽詢虞世南の名跡を学べ!何べん言うたら分かるんじゃ。
さあ帰れ!お願いでございます。
ダメじゃ!帰れ言うとるじゃろ!敏!お願いです。
ダメじゃ!かなわん!
(富永)これを配れ。
(福川)ああもう!皆牢が開いてからにせい!これは誰のじゃ?わしの筆。
お願いでございます!せめて…せめて書状…。
もし。
我が家に何か?あなた様…。
相手をしてはなりませぬ。
さあこちらへ。
高須久子様からご伝言にございます。
久子…。
ひょっとして久子様の…。
あっ…あの!お待ち下さい!書状を!書状をお願い…!帰れ。
お願いでございます!
(吉村)よう書けとるであろう?
(志道又三郎)そうかのう?何じゃその言い方は。
(福川)お前が富永に差し入れた筆のせいで皆が書に夢中じゃ。
「新しいすずりが欲しい」。
「紙を差し入れろ」。
それぞれが家元に一斉に無心の手紙を書き始めた。
でもお身内はちゃんと差し入れて下さるんですね。
やっかい払いをした後ろめたさもあるんじゃろうな。
やっかい払い?この獄におる者はおおむね家から疎まれた者ばかりじゃ。
いわば捨てられたんじゃ。
家族に。
捨てられた…。
生涯家には戻れん。
ただここで死ぬんを待たれておる。
久子様。
申し訳ありません。
あれから何度もお訪ねしたんですがなかなか…。
でもお約束は必ず果たしますので。
あれはもうよいのです。
いけませんそんなの!お嬢様にもきっと。
お願い致しますから。
もう構わないで。
久子様…。
そして城では新たな動きが起きようとしていた。
(椋梨)小田村伊之助にございます。
(伊之助)はっ。
(椋梨)江戸より呼び戻しました。
これより明倫館で教える事となります。
江戸はどうであった?こたびの条約の締結によって我が国は辛くも外国との戦を免れました。
しかし我が藩もきたるべき異国との対決に備え今こそ広く学ぶべき時ではないかと。
すでにそなたの兄松島剛蔵殿を長崎へ差し向け洋学を学ばせておる。
それでは足りませぬ。
この萩にも洋学所を作るべきでございます。
なるほど。
そのとおり。
なれば今は富を蓄える時である。
富を得ても使い方を知らねば意味はありませぬ。
小田村の申すとおり人を育てるも急務。
このままでは日本国を守る事など到底できませぬ!まずはお家であろう!足元を見ずして何の憂国か!人材の育成ならわしも心得ておる。
そのためにも小田村には明倫館にてなお一層励ませる所存にございます。
うむ。
そうせい。
(一同)はっ。
寅次郎。
伊之助か!周布様から獄吏に話を通して頂いた。
萩に戻ってきたんか。
ああ。
こねぇな所で書を?近頃は1人の方が落ち着くんじゃ。
ここなら何者にも邪魔されずひたすら己に没頭できる。
何を言うておる!お前の力がいるんじゃ!お前をここから出す。
そのために戻ってきたんじゃ。
あの…今日は高須様は?来ん。
声はかけたが会わんと言うておった。
そうですか…。
・静かにしろ!離れろ!河野が自分の書を汚されたと!ああもう。
ちいとここで待て。
(福川)こら!あっその筆。
富永有隣と申す。
富永様。
筆はお気に召しましたか?うむ!よい品をかたじけない。
兄上なら客が来てるようだぞ。
客?ん。
あっ兄上。
この藩は腐っておる。
これからの日本は軍艦を造り兵をそろえ一刻も早う異国との交渉に備えねばならぬ。
やのに藩のお歴々は安穏とするばかりでただ金の事ばかり案じ一向に動こうとせん!落ち着け。
和親条約を結んだ以上列強も安易に戦を仕掛けてくる事はあるまい。
今のうちに次の策を練ればよい。
次の策とは何じゃ?それは俺とお前で立てるもんではないんか?証しを見せろと言われた。
文に。
己のしでかした密航が大義である証しを示せと。
兄上…。
金子の分も生きねばならん。
獄の中で生きる事が金子のためか?ひたすら書物に没し己が傷つかんよう息を潜めて生きる。
それが償いか!分からん!だが今はここで己を尽くさねばならん。
伊之助…。
俺を頼るな。
萩の桜か…。
江戸の桜ほどは華やかでないでしょうが…。
萩には篤太郎がおる。
寿もようしてくれる。
はい。
近頃の俺はちいと焦っちょったかもしれん。
何かせねばと心はせいてるのに一人では何にもなせん。
心配かけてすまんね。
父上と母上によろしく。
近いうちご挨拶に伺うからと。
ありがとう。
遊ぼうか。
そのころ。
(梅太郎)おい!
(福川)急ぎ知らせにまいった。
明日高須家の者が久子殿を訪ねると。
(梅太郎)さようでございますか。
ついてはお前にも立ち会うてほしいというんじゃが来られるか?さあこちらへ。
文…。
大きくなりましたね。
お話があって参りました。
近頃しきりに我が家に使いをよこしおじい様の遺品を求めているようですがおやめ頂けますか。
二度とこのような事はなさらないよう。
それだけです。
では。
おそれながらお嬢様でいらっしゃいますよね。
(福川)おい。
お身内の思い出が欲しいという母上様のお気持ち私にはよう分かります。
非礼はおわびします。
ですから母上様のお願いを…。
この人は母ではありません。
知っていますか?この人の罪を。
不貞です。
この女は夫を亡くした寂しさから歌舞音曲に溺れ気に入りの三味線弾きを夜な夜な屋敷に引き入れたあげく密通に及んだのです。
身分低き者との不貞をとがめられ身内の者が訴えてここへつないで頂きました。
皆がつらい思いを致しました。
我が家も取り潰されるところでした。
二度と私に関わらないで下さい。
(糸)鏡?誰にこびを売ってるんだか。
待ってつかぁさい!待ってつかぁさい!もう少し話をしてあげてつかぁさい。
母上様と。
この者は母ではありません!分かりませんか?私が何でお屋敷を訪ねたか。
久子様に頼まれて私は無我夢中でした。
久子様は申されました。
「何度でも何度でもお屋敷に伺うように」と。
あなたもとんだ巻き添えでしたね。
母上様はあなたを怒らせたかったんです。
どういう事でしょう?何度も私が訪ねればあなたはきっとここにどなり込んでくるに違いない。
そう考えたんです。
あなたに会いたかったから。
嫌われて怒らせてでもそれしかあなたに会うすべはなかったから。
違います。
考え過ぎですよ。
以前私が拝見した時その鏡は曇っていました。
それがきれいに磨かれて…。
今日の久子様は大層きれいです。
見てあげてつかぁさい。
もっと近くで。
さあ。
それには及びません。
娘さん。
おっしゃる事はよく分かりました。
二度と勝手なお願いは致しません。
これから先あなたが嫁ぎ子をなしても二度とあなたの前には姿を見せません。
(久子)それでも…今日は会えてうれしゅうございました。
どうぞお帰り下さいませ。
帰りなさい!糸!二度とここには参りません。
私はあなたを憎みます。
憎んだ人の事は忘れないでしょうから。
あなたも。
お帰りなさい。
うち…。
これでいいのです。
ありがとう。
覚えてますから。
うちがずっと。
今日のお二人の事。
母上。
あっ。
ちいと待ちんさい。
はいどうぞ。
えっ?お前は泣きだすと長いから。
ほら。
(笑い声)どうしたん。
おかしな子じゃねえ。
違いますよ。
肩をおもみしようと思って。
肩をもんでくれるんやないんですか?はい。
あっ。
こそばいって。
動かんで。
(滝)ああそこ。
ん?おおそうか。
よし!やってくれ。
痛い!痛い。
痛い!敏痛いよ!痛い!アハハハ!
(百合之助)わざとやっとるな?
(福川)出てええぞ。
おっ?それは高須殿の…。
(井上喜左衛門)もし。
高須殿。
聞かしてくれんか。
これの事でござる。
(吉村)何じゃそれは?
(福川)吉田の妹御が高須殿に差し入れたもんじゃ。
文が?
(志道)それをなぜお主が持っとる?拾うたんじゃ。
拾うた?それは私が捨てたものでございます。
何でじゃ?妹御の心尽くしの品を何で捨てた?お主はそれで楽しげに興じとらんかったか?
(志道)わしも見たぞ。
一人で笑うとった。
(福川)そねな大切な品を何で…。
大切な品だったからでございます。
捨てた…?お聞かせ下さい。
私にも手放せんもんがある。
なのにあなたは捨てたという。
大切だから捨てたと。
なぜじゃ?なぜあなたはそのような事ができたんじゃ。
あの子が嫌いでございました。
文さんは私が二度と求めてはならないものをあまりに無邪気にまとっておいででした。
獄につながれた時言い聞かせました。
二度と求めてはいけないと。
美しいものも楽しいものも全て。
娘とも決して会わぬつもりでした。
でも…。
(大深虎之丞)会えたではないか。
諦めて背を向けておったもんに巡り会うたではないか。
娘は私を憎いと言いました。
でもどうした事でしょう。
その言葉を聞いた時初めて分かったのです。
生きて傷つく事も償いではないかと。
回想ならば証しを見せてつかぁさい!孟子はこう言われました。
つまりすべての感情はもともと人の本性の中に備わっているもんなんです。
悲しみや悪だけではない。
善もまたしかり。
喜びもまたしかり。
一生獄の中にあろうと心を磨き己の心に目を凝らし誠を尽くせば人は生まれ変わる事ができる。
幻を申すな!幻などではない。
現にこれを手にして高須殿は変わられた。
筆を手にして富永殿も変わられたではないか。
皆はどうです?鳥と書けば鳥が見える。
花と書けば桜が匂う。
心にそれを感じたのであればそれは幻などではない!人は変われるんです。
己の心から目を背けてはいけん。
(大深)そうじゃ。
お前はなかなかええ事を言う。
続けろ。
お主の話をもっと聞きたい。
在獄48年今日はまことに愉快である。
はっ。
(笑い声)富永殿…。
あの〜。
失礼致します!あれ…誰もおらん。

(寅次郎)「必ず先ずその心志を苦しめその筋骨を労せしめ…」。
寅次郎の声じゃ。

(寅次郎)「その体膚を餓えしめその身を空乏にし行うことその為さんとする所に払乱せしむ」。
寅兄様…。
(寅次郎)つまり天はある者を見込んでその才を試そうとする時まず試練を与える。
逆境こそが人を育てる。
人を大いなるものにする。
獄もまたしかり。
(一同)ほう…。
兄上。
寅兄様と話さんでええんですか?ええんじゃ。
でも…。
俺には俺のやる事がある。
胸を張ってそう言えるまであいつとは会わん。
では楽しみとは何か。
さて何じゃ?こんな言葉があります。
「賢者にしてしかるのちに此を楽しむ。
不賢者は此ありといえども…」。
どうしてこねな事に。
そうさなぁ。
強いて言やぁお前の筆のせいじゃ。
筆?「君臣相楽しみ兄弟親族朋友郷党相楽しむの境を自得せば豈楽しからずや」。
吉田寅次郎の出獄を!
(寅次郎)私は出ません。
(亀)獄におる女が気になっておられるんです。
(久子)一人だけ獄を出ていくなど懲らしめないと。
萩市を流れる松本川。
毎年2月からしろうお漁が行われます。
しろうおは小田村伊之助も大好物だったといいます。
伊之助が教鞭をとった藩校明倫館。
高杉晋作もここで学びました。
後に伊之助と共に薩長同盟に奔走する坂本龍馬もここで剣術の試合を行ったといわれています。
その後伊之助は楫取素彦と名を改め明治に入ってからは群馬県令として活躍。
教育に力を注ぎ松下村塾の後継者としてその教えを後世に伝えたのです。
明倫小学校では毎朝松陰の言葉の朗唱が行われています
(児童たち)「誠は天の道なり。
誠を思うは人の道なり。
至誠にして動かざるは…」。
伊之助がつないだ松陰の教えは今も人々の胸に生き続けているのです
2015/02/08(日) 20:00〜20:45
NHK総合1・神戸
花燃ゆ(6)「女囚の秘密」 獄の中でも生まれ変わる白熱教室誕生 [解][字][デ]

文(井上真央)は野山獄の女囚・高須久子(井川遥)から一人娘・糸(川島海荷)への使いを頼まれる。文は思いに応えようと奔走するが、母を恨む糸は驚きの行動に出る…

詳細情報
番組内容
文(井上真央)は野山獄ただ一人の女囚・高須久子(井川遥)から、実家である名家・高須家への使いを頼まれる。久子には一人娘の糸(川島海荷)がいた。久子の思いに応えようと文は奔走するが、母を恨む糸は驚きの行動に。母子は決別してしまうのか、その時ふみは…。一方、獄の寅次郎(伊勢谷友介)は弟子の死から立ち直れない。絶望と虚無感に支配された野山獄だったが、文のもたらしたある物が獄の中を変えていく。
出演者
【出演】井上真央,大沢たかお,伊勢谷友介,原田泰造,優香,檀ふみ,長塚京三,井川遥,本田博太郎,田中要次,川島海荷,内藤剛志,石丸幹二,北大路欣也,【語り】池田秀一
原作・脚本
【脚本】宮村優子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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