ダーウィンが来た!「幻のアザラシ!洞窟で秘密の子育て」 2015.02.08


海の底に横たわるへんてこりんな物体を発見。
皆さん何だと思います?これはアザラシのお昼寝姿。
目を覚ましました。
今日の主人公…世界にわずか500頭の絶滅危惧種。
これまでほとんど撮影されたことがありません。
私たちは謎に包まれた暮らしぶりを解き明かすため密着取材。
最大の謎は洞窟の奥深くで行われるという子育て。
そこで自動撮影ができる無人カメラを設置。
すると…。
驚くべき姿が!生まれてわずか2週間の赤ちゃんを待ち受けるのは水泳の猛特訓。
荒波にも負けない泳ぎを身に付けなければ生き残れないんです。
母親以外のメスも加わって熱血指導。
絶滅の淵に追い込まれながら力を合わせて生きる幻のアザラシの物語です。

(テーマ音楽)ポルトガルの沖およそ1,000キロ。
大西洋に浮かぶ無人島デゼルタス島です。
奇妙な形の岩が立ち並ぶ荒涼とした風景が広がります。
チチュウカイモンクアザラシは地中海から大西洋にかけてかつては数多く暮らしていました。
それがいまや絶滅寸前。
この島は「最後の楽園」なんです。
ここでアザラシの調査を行うロザ・ピレシュ博士です。
私たちが島を訪れたのは夏。
1年で一番海が穏やかな季節です。
水の透明度が高くなるためアザラシを観察するにはもってこい!博士と共に早速アザラシを探します。
海面を泳ぐ大きな動物を発見!カメラマンがすかさず海に飛び込みます。
相手は海の底へと泳いでいきます。
驚かさないようにそっと近づきます。
あっ目が合ってしまいました。
チチュウカイモンクアザラシです。
クリクリした大きな目がかわいいですね!カメラに興味を持ったのか近づいてきました。
うわ〜大きい!最大で体長3メートルほどにもなります。
流線型のスマートな体。
前足と後ろ足のヒレを使って巧みに泳ぎ回ります。
そうして魚やイカタコなどを捕まえて食べるんです。
大食漢で1日に30キロも食べるといいます。
おや?海底に降りてきてそのまま横になってしまいました。
実はこれ眠っているんです。
見るとあちらにも。
こちらにも。
なんとも大胆な寝姿です。
海底近くは比較的波が穏やかなため眠っている間に流される心配がありません。
チチュウカイモンクアザラシの眠る姿は今回初めて撮影されました。
あれ?目は固く閉じたままですが頭を起こしました。
そしてなんと眠ったまま上に向かって泳ぎ始めました。
何をしようというんでしょう?顔を海面から出しています。
息継ぎをしに来たんです。
アザラシはほぼ10分おきに呼吸をしなければなりません。
目を閉じたまま鼻だけを開いたり閉じたりしています。
息継ぎが終わると再び海の底へ。
そしてまたゴロン。
まさに熟睡中。
気持ちよさそうですね。
邪魔をしないようひとまず離れることにしました。
おやすみなさ〜い。
博士が次に向かったのは島を囲む断崖。
崖に奇妙な穴があいています。
穴はあちこちにあります。
波に削られて出来た洞窟だといいます。
チチュウカイモンクアザラシは海と行き来ができるこうした洞窟の中で子育てをするんです。
穴は折れ曲がりながらずっと奥まで続いているようです。
中は真っ暗。
入り口からおよそ100メートル。
どうやらここが行き止まりです。
ボートを引き上げ上陸します。
突き当たりの部分に小さな浜があります。
ここで赤ちゃんを産み育てるんです。
アザラシの仲間は北極から南極まで世界各地にすんでいます。
子育ては普通氷の上や砂浜などで行います。
狭い洞窟だけで子育てをするのはチチュウカイモンクアザラシしかいません。
しかしその様子はこれまでほとんど撮影されたことがありません。
博士は繁殖期の前に無人で撮影できるカメラを仕掛けておくことにしました。
アザラシが来るとセンサーが反応しシャッターが切られます。
これで秘密の子育てに迫ろうという作戦です。
夏の終わりのある日。
洞窟の近くでおなかが大きく張ったメスのアザラシを見つけました。
赤ちゃんをみごもっているのかもしれません。
チチュウカイモンクアザラシの出産のピークは10月から11月。
期待が高まります。
秋。
いよいよ子育ての季節です。
しかしこの年は例年になく悪天候が続きました。
激しい雨が毎日のように降り続き島のあちこちに川が出来ています。
海も大荒れです。
波が高く船を出すだけでも一苦労。
洞窟に近づいての撮影はとてもできません。
頼みの綱は無人カメラだけ。
果たして写っているでしょうか。
回収した無人カメラを確認してみると…。
洞窟内の浜で寝ているアザラシたち。
大人の間に確かに小さな赤ちゃんが2頭います。
チチュウカイモンクアザラシが産む子どもは1頭だけ。
つまり複数の母親が同じ洞窟で出産したことが分かります。
更に博士を驚かせた画像がありました。
こちらです。
1頭のメスが2頭の赤ちゃんに授乳しています。
チチュウカイモンクアザラシは自分の子だけでなく他の赤ちゃんにもおっぱいを与えるんです。
チチュウカイモンクアザラシの授乳期間は4か月にも及びます。
お母さんはしばしば子どもを残して食事に出かけます。
時には半日以上も留守にすることがあります。
その間他のお母さんが残された赤ちゃんの面倒を見るんです。
チチュウカイモンクアザラシに特有の珍しい行動です。
ほう!お母さん同士助け合うとはなかなか偉いもんですなぁ。
でしょうヒゲじい。
でもちょっと待った!はい。
どうしてこのアザラシだけが暗くて狭い洞窟なんかで子育てしてるんですかね?う〜ん不思議ですよね。
実はチチュウカイモンクアザラシも昔は砂浜で子育てしていたんですよ。
あそうなの?これは最も近い種類のハワイアンモンクアザラシ。
砂浜で気持ちよさそうに休んでいます。
チチュウカイモンクアザラシもかつてこんな暮らしをしていたことが記録から分かっています。
へえ〜じゃなんで今はしてないんですか?それには悲しい歴史があるんです。
地中海に文明が興ると毛皮や脂を目当てにチチュウカイモンクアザラシは乱獲されるようになりました。
陸上では動きの遅いアザラシは砂浜で簡単に捕まってしまったんです。
ふ〜んそれはひどいですなぁ。
更に近代に入って観光が盛んになると多くの砂浜は海水浴場へと変えられてしまいました。
乱獲で仲間の数が減っていくと海からしか近づけない洞窟内の浜で子育てをするようになりました。
う〜んつらい目に遭ったけれどようやく安住の地を見つけたというわけですな。
それがそうでもないんですよ。
海沿いの洞窟には大きな危険があるんです。
えっ一体どんな?それは波の危険です。
こちらは別の場所で撮影した映像です。
あ〜危ない!赤ちゃんが流されそう。
洞窟内の浜は奥行きがないので逃げ場がありません。
波にさらわれて母親からはぐれると赤ちゃんが助かることはまずないんです。
う〜んなんとも厳しい現実ですなぁ。
生き抜くためチチュウカイモンクアザラシは狭い洞窟でモンクも言わずに頑張っているというわけですな。
第2章では赤ちゃんの水泳訓練が始まります。
嫌がる赤ちゃんを無理やり海の中へ。
荒っぽいように見えますがそこには驚きの作戦が隠されていました。
今回の舞台デゼルタス島は国立公園に指定されています。
現在島には40頭ほどのチチュウカイモンクアザラシが暮らしています。
でも島が国立公園に指定された28年前にはわずか8頭だけでした。
保護活動を続けるロザ博士たちの努力で徐々に数を増やしてきたんです。
今回の撮影中ある事件が起こりました。
衰弱した赤ちゃんが保護されたんです。
赤ちゃんは生後1週間ほど。
洞窟の中にいたところを波にさらわれ母親とはぐれてしまったんです。
栄養剤を与えて様子を見ます。
幸い大きなケガはなく赤ちゃんはすぐに元気になりました。
翌日ロザ博士は赤ちゃんを海に戻すことにしました。
母親が赤ちゃんを探している可能性があるためです。
ここが赤ちゃんが保護された海岸です。
赤ちゃんを置いてその場を離れます。
無事に母親と再会できるでしょうか。
しばらくすると1頭のメスが近づいてきました。
母親のようです。
気付いた赤ちゃんいちもくさんに海に入っていきました。
赤ちゃんもう迷子にならないように気を付けてね。
取材を始めて2度目の秋。
再びデゼルタス島を訪ねました。
11月。
赤ちゃんが泳ぎの練習を始める時期です。
ロザ博士の案内で子育て中の洞窟を目指します。
ボートを走らせること25分。
大きな洞窟が見えてきました。
ここでは毎年子育てが行われているといいます。
でも洞窟の周りは激しい波。
こんな荒波の中で幼い赤ちゃんはどうやって泳ぎの練習をするんでしょうか。
その様子を捉えるため近くの岩の上にカメラをセット。
赤ちゃんが現れるのを待つことにしました。
しばらくすると1頭のメスが洞窟に戻ってきました。
食事から帰ってきた母親のようです。
荒波の中慎重に洞窟の中に入っていきました。
しかし一向に赤ちゃんは現れません。
洞窟の中の赤ちゃん無事なんでしょうか。
3日目のこと。
猛烈な波しぶきの中1頭の大人のメスが出てきました。
そのそばに小さな黒い影。
赤ちゃんです!あっお母さんが鼻先で赤ちゃんを水に沈めました。
驚いた赤ちゃん慌てて浮かび上がると洞窟に戻ろうとしています。
その後を追うお母さん。
また赤ちゃんにのしかかります。
博士によるとこれが水泳訓練。
生まれてわずか2週間ほどで泳ぎの練習を始めます。
「ママ〜怖いよ〜」と逃げる赤ちゃん。
「ママが付いているから大丈夫。
もうちょっと頑張りなさい」。
お母さんは容赦なく赤ちゃんを洞窟の外へと追い立てます。
少々手荒い猛特訓。
それには事情があります。
この辺りの海は冬になると更に荒れる日が多くなります。
一日でも早く泳ぎを身に付けなければ赤ちゃんは生き残れないんです。
あれ?赤ちゃんがぐったりしてしまいました。
大丈夫でしょうか。
あっ潜りました。
疲れて一休みしていたんですね。
この日取材班は驚くべき光景を目にしました。
洞窟から出てきたのは1頭の大人のメス。
水泳訓練をする親子のそばへ近づいてきました。
その時赤ちゃんが1人でふらふら泳ぎだしてしまいました。
メスは赤ちゃんを抱きとめるようなしぐさ。
ところが赤ちゃんはまたしても泳ぎだします。
危なっかしいですねぇ。
するとメスも泳いでそばに寄り添いました。
親子の水泳訓練を手伝うメス。
博士によると今年子どもを産んでいないメスだといいます。
チチュウカイモンクアザラシは母性本能が強くこうした行動がよく見られるんだそうです。
驚いたことに更にもう一頭加わって3頭がかりの水泳訓練です。
大人たちに見守られながら練習を続ける赤ちゃん。
ようやく波にも慣れてきたようです。
なんだかちょっと得意気ですね。
数時間後。
洞窟からこんなに離れた場所まで来ていました。
練習を繰り返しながら泳げる距離を徐々に伸ばしていきます。
数日後。
外海に向かう親子を見つけました。
子どもは生後1か月ほど。
このころになると多くの時間を海の上で過ごすようになります。
そんなある日事件が起こりました。
ロザ博士が波間に漂うアザラシの死骸を見つけました。
生まれて3か月ほどの子どもです。
激しい波に流され岩に打ちつけられてしまったようです。
子どもの半数は1歳を迎える前に命を落とします。
泳ぎを覚えたてのこの時期が最も危険なんだといいます。
再びデゼルタス島に夏がやってきました。
子どもたちはどうしているでしょうか。
海底近くをゆっくり泳ぐ2頭のアザラシ。
秋に生まれた子どもとその母親です。
子どもの体長は1.5メートルほど。
まだまだ小さいですが真っ黒だった体の色は大人と変わらなくなりました。
泳ぎの腕前もすっかり上達しています。
子どもは生まれて8か月。
間もなく独り立ちの時期を迎えます。
(アザラシの鳴き声)小さな入り江にアザラシたちの声が響いています。
こちらには3頭。
そしてこちらに2頭。
全部で5頭。
集まっていたのはみんな若いアザラシです。
一体何をしているんでしょう。
体をくねらせまるで踊っているみたい。
今度は互いに顔を突き合わせています。
こちらでも2頭でダンス。
グルグル回転してから顔を近づけました。
この行動チチュウカイモンクアザラシの挨拶なんだそうです。
若者たちはこうして仲間と遊ぶ中で泳ぎの技術を磨いたり恋愛の作法を学んだりしていきます。
こちらでは若いオスとメスが追いかけっこを始めました。
ロザ博士によるとこれは求愛のまねごと。
もしかするとこの中から将来の恋の相手を見つけるのかもしれませんね。
チチュウカイモンクアザラシが命をつないでいくためにはともに生きる仲間が欠かせないんです。
絶滅の危機に瀕したチチュウカイモンクアザラシ。
本来の暮らしを大きく変え洞窟の中でひっそりと生き延びてきました。
今その数は少しずつ増えているといいます。
いつの日か浜辺で伸び伸びと暮らすアザラシたちの姿が再び見られることを願わずにはいられません。

(寅次郎)これは取って置きなさい。
2015/02/08(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「幻のアザラシ!洞窟で秘密の子育て」[字]

世界にわずか500頭!絶滅危惧種のチチュウカイモンクアザラシ。絶海の孤島に暮らし、洞窟の奥深くで子育てするため生態は謎だらけ。幻のアザラシの秘密の子育てに迫る!

詳細情報
番組内容
世界にわずか500頭!絶滅危惧種のチチュウカイモンクアザラシ。絶海の孤島で謎だらけの暮らしに密着した。最大の謎は、海に面した洞窟の奥深くで行われる子育て。無人カメラを設置し、母親たちが互いに助け合う驚きの行動を捉えた。さらに赤ちゃんの水泳訓練にも密着。1頭の赤ちゃんに対し3頭ものメスたちが協力して熱血指導を行う。水中でお昼寝するかわいい姿も激写!スクープ映像満載で、幻のアザラシに迫る。歌:平原綾香
出演者
【語り】首藤奈知子,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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