北海道知床。
今年も流氷の季節が訪れました
そんな流氷に導かれるように多くの動物たちがこの地にやって来ます
「NHKアーカイブス」には厳寒の中たくましく生きる動物たちを追った番組があります。
水中を優雅に泳ぐトド。
翼を広げると2メートルを超す巨大なオオワシ。
そして流氷で子育てをするアザラシの親子
流氷はアザラシにとって敵を近づけない砦であり優しい揺りかごなのです。
そんな動物たちの決定的瞬間を撮り続ける人たちがいます
(石井)下がれ下がれ。
輝来い。
石井さん親子は巣立ちの瞬間を逃すまいと急いで撮影準備に入ります。
今日は流氷に生きる動物たちとその姿に魅入られた人々の思いを探ります
「NHKアーカイブス」今日は北の海を埋め尽くす流氷とその流氷と共に生きる動物たちの姿をたっぷりとご覧頂きます。
ゲストご紹介致します。
今日は北海道羅臼町在住で40年以上にわたって野生の動物を撮影してこられましたカメラマンの石井英二さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今年も流氷の季節やってまいりましたけども今年の訪れはどうなんでしょうか?今年は例年より1〜2週間早く流氷が来てまして家の近くまで流氷がやって来て。
やっぱり気温も下がってきますし何か底冷えするような感じで。
ただ僕なんかはもうわくわくしていろんな出会いがないかなと思って流氷の海を見て一回りしたりしてるんですけど。
毎日のようにですか?ええ。
流氷の上でアザラシなんかは子育てもしますしワシたちは流氷を止まり木のようにして餌を取ったりもしてくれますしその動物同士がまたそれぞれ複雑に絡んで面白い動きをする時もあるんですよね。
そういうのが見れるとうれしいんですけど。
そうすると石井さんにとっても「へえ〜初めて」って事もあるって事ですか?そうですね。
年によってはそういう初めての目撃できる事もありますし…。
今日はどんな出会いがあるかとか?ええ。
では早速ですね番組ご覧頂きたいと思います。
1986年に放送されました「NHK特集」です。
「流氷が連れてきた動物たち」。
これは30年前の石井さんもご出演されてるんですよね?どうぞご覧下さい。
北海道知床の海。
氷の上にアザラシがいます。
アザラシは厳しい冬の季節この流氷の海で暮らします。
知床の海にはアザラシをはじめ北の野生動物たちが流氷と共にやって来るのです。
シベリアのアムール川河口付近で生まれた流氷は次第に成長しながら南下を続け1月半ば北海道の知床岬に達します。
知床岬は流氷に閉ざされた氷点下20度の世界。
この時期灯台も明かりを消して息を潜めています。
100頭を超すエゾシカの群れ。
人間を寄せつけない自然の中で野生動物だけがたくましく生きています。
標高1,500メートルの知床連山。
アイヌの人々は山々が一気に海に押し込むこの地をシリエトク大地の果てるところと呼んでいました。
知床の由来です。
知床岬の近くにトドの群れを見つけました。
流氷に閉ざされたオホーツク海から一足先に南下してきたのです。
トドは流氷の先触れです。
(トドの鳴き声)
(トドの鳴き声)アイヌの人々はこのトドを海のヒグマと恐れていました。
(トドの鳴き声)
(トドの鳴き声)間近に見るトドはまさに猛獣そのものでした。
大人のオスは体重1トン。
体長は3メートルを超えます。
水中でカメラが捉えたトドの群れ。
海の上では人々を威嚇していたトドも水中では伸び伸びと泳ぎ回り優雅な舞いを見せてくれます。
初めてかいま見たトドは平和な海の哺乳類でした。
知床の海に住む野生動物の生態はそのほとんどがまだ知られていません。
知床岬に流氷が来た日岬から40キロ南にある羅臼は大しけでした。
やがてここにも流氷が流れ着き波もうねりも消えてしまいます。
海は今最後の力を振り絞って荒れ続けます。
羅臼の町は人口8,000人。
サケやスケソウ昆布など北の海の幸が育てた町です。
羅臼にはこの時期知床の野生動物に魅せられた人たちが全国から集まってきます。
横浜の大学で建築学を学んでいた石井英二さんもその一人でした。
羅臼に通ううちに動物写真家となって住み着いてしまいました。
移り住んで7年になります。
(オオワシの鳴き声)羅臼の森にはワシが鈴なりになって鳴いています。
(オオワシの鳴き声)翼を広げると2メートルを超す…石井さんの心を最初に捉えたのはこの鳥たちでした。
(オオワシの鳴き声)これだけたくさんのオオワシはここでしか見る事ができません。
(オオワシの鳴き声)ウミワシの仲間では一番大きな鳥オオワシはカムチャツカ半島やサハリンで生まれ冬になると知床半島にやって来ます。
(オオワシの鳴き声)石井さんは「一生羅臼に住んでいても飽きる事がないだろう」と言います。
知床では毎年動物たちとの新しい出会いがあるからです。
(取材者)こんなに町の中で見れるっていうのは珍しいですね?そうですね。
ただ僕なんかももう十何年通って…最初の頃は通ってきてたんですけど最初の頃っていうのはこんなには見れなかったですね。
数も少なかったんですよね。
それこそ1本の木に6羽7羽とまってたらびっくりしてたんですよね。
それが今年なんかは190ぐらい…1本の木ではないんですけど1つの沢で見通せる範囲内で190もとまってますからちょっとびっくりしましたけどね。
羅臼の冬はスケソウ漁の季節。
漁場は港のすぐ前の海峡です。
海峡の幅は27キロ。
対岸は北方領土の国後島です。
この狭い海峡に流氷がやって来て動物たちの舞台となるのです。
トドはスケソウを追って羅臼の海までやって来ました。
(銃声)トドは魚を食い荒らし更にその巨体で漁網を破るという事で害獣だとされています。
羅臼では一冬に100頭を超えるトドが捕られています。
1月31日。
流氷がついに羅臼の沖にやって来ました。
朝焼けの国後島を背景にして流氷が一本の帯になって見えています。
知床岬に接岸してから半月もたってからの事でした。
流氷は風に押され潮の流れに乗って海峡全体に広がりながら羅臼に押し寄せてきます。
羅臼の海は目まぐるしく変わります。
一度接岸した流氷も瞬く間に岸から離れていきます。
流氷はそれ自体が巨大な生き物のように海峡を動き回るのです。
この時期の流氷は角のとがったごつごつした氷でぶつかり合い重なり合って無数の氷の山を築きます。
僅かな流氷の隙間を縫って漁船が出漁します。
スケソウ漁は流氷が来てからが本番。
氷の下にはスケソウの大群が来ているからです。
羅臼の海は1,000メートルの深さがあります。
そこは世界でも有数のスケソウの産卵場所です。
北洋のスケソウ漁が厳しくなるにつれて羅臼沖の漁はますます盛んになってきました。
一冬で1億円以上の水揚げをする船もあります。
スケソウの重みで船は傾きドラムで巻き取る網からは無数の魚がこぼれ落ちます。
こぼれ落ちた魚は知床の鳥たちの最高のごちそうになります。
ワシは毎朝日の出と共に流氷の海に出ます。
羅臼の森にやって来たワシたちはこのスケソウを餌にしているのです。
海に浮いたスケソウをわしづかみにして氷の上に運びそして卵や内臓のおいしい部分から食べ始めます。
スケソウの網揚げは一日に2回。
ワシたちはその瞬間を待ち続けるのです。
かつてこの海峡にやって来るオオワシは数十羽にすぎませんでしたがスケソウ漁が盛んになるにつれその数は飛躍的に増えてきたのです。
今ではおよそ2,000羽と推定されています。
これは地球上の全てのオオワシの半分に近い数字です。
流氷の海はワシの楽園です。
オジロワシもいました。
色鮮やかなオオワシに比べて地味ですがより精かんな体つきをしています。
オジロワシは知床半島でも繁殖していますがこの海にいるオジロワシのほとんどは流氷と共にやって来ました。
オジロワシやオオワシはカラスやカモメも襲います。
しかしこの豊かな流氷の海ではおうようなものです。
襲うどころか食べ残しをカラスやカモメに分けてやります。
水の中から見た流氷はまるで夏の積乱雲が浮かんでいるように見えます。
水温はマイナス1.8度。
氷の上と比べると10度から20度も暖かい世界です。
この穏やかに見える流氷の下には一体どんな生き物たちが息づいているのでしょうか。
北の海に住むヤナギクラゲ。
人の背丈ほどもある触手をいっぱいに伸ばして餌を探しています。
水深10メートル。
海底を一面に埋め尽くすのはホタテ貝です。
その一つ一つは直径が20センチ近くもありました。
天然のホタテ貝がこれほど多く生息する。
これは豊かな海でしか見られない光景です。
ヒトデがホタテ貝を襲っています。
押さえつけて窒息させようとするのですがホタテ貝もそうはさせまいと必死です。
海草は流氷を通してさし込む太陽の光を受けて鮮やかな緑を海底一面に広げています。
一見毛ガニに見間違うほどそっくりなクリガニ。
北太平洋に広く分布し海底の海草などを食べています。
体長僅か3センチの…貝でありながら貝殻はありません。
一生こうして水中を泳ぎ続けます。
透明な体そのかれんな姿と愛らしいしぐさから氷の海の妖精と呼ばれています。
流氷の下は色鮮やかな生き物に満ち満ちた豊かな海でした。
国後島から昇った朝日が流氷を金色に染めています。
流氷の海に出られるのはここ羅臼では頑丈なスケソウ漁船だけです。
それ以外の小さな船の場合一冬に10日も出られればよい方です。
今日は天気も穏やか。
珍しく水路もあいています。
動物写真家の石井さんと撮影用の小舟を出しました。
ちょうどこのころ流氷の上ではアザラシが子どもを育てているといいます。
しかしその生態は誰も見た事がありません。
それを記録しようというのです。
トドが流氷の上に乗って迎えてくれました。
(鳴き声)海に出るチャンスにさえ恵まれればこのように北の海の野生に触れ合う事ができるのです。
この海峡にはトドは3,000頭から5,000頭やって来るといわれています。
しかし実のところ正確な数は分かりません。
増えているのか減っているのかについても意見が分かれています。
野生の海の獣については分かっていない事の方が多いのです。
どこ行ったか見えない…。
アザラシの姿を求めて注意深く流氷の合間を縫うように沖に出ます。
しかし流氷の海でアザラシを見つける事は容易ではありません。
トドと違ってアザラシははるか沖合の氷の上に生息しているからです。
羅臼の港から10キロほど沖に出た所で石井さんは水中に黒い影を見つけました。
ほらほらほら。
それはまるで好奇心の強いいたずらっ子のようでした。
この冬初めてのアザラシとの出会いです。
ああやっぱりそこにいた。
今だからそっちへ出てたやつが泳いできて。
どうやら2歳ぐらいの若いアザラシです。
船を恐れず興味深そうにこちらを見ています。
(取材者)みんな全然怖がってないですね。
入り江っぽくなってればこういうのが何頭もいるんですよね。
(取材者)背泳してるんですか?うん。
ああいうふうに泳ぐ時もあるけどそのまま浮かんで寝てる時もある。
完全あれは寝てんだと思いますけどね。
なんとアザラシの方からこちらに近づいてきました。
こういうのやっぱり寄ってくるっていうんですよね。
でしょ?
(取材者)本当。
誰も信用してくんないんだけど。
(取材者)面白いですね。
(取材者)全然怖くないのかしら?これなんか幼獣ですからこうなんですけどね。
大人だったらもう…もう遠くで水に入って逃げる。
逃げたらもうこんな寄ってこないですけどね。
この海には5種類のアザラシがいるといわれています。
種類の違いは体の模様によって見分けます。
背中に馬の鞍を置いたような模様があるのは…
(シャッター音)流氷が連れてくる動物たちの中でアザラシはほかのどれよりも知床の海と深い関わりを持っています。
それは種の保存にとって最も重要な子育てをここ知床の流氷の上で行うからです。
大きな大人のクラカケアザラシがいました。
体長1メートル50センチぐらい。
体重は100キロ近くありそうです。
鞍をかけたような模様が鮮やかに浮かび上がっています。
大人のアザラシはすぐに逃げるのですがこのアザラシは動こうとしません。
おなかの大きさからどうやら出産が近いようです。
つかの間の静けさは僅か1日だけでした。
流氷の海はその荒々しい素顔をまたのぞかせます。
知床の山々から強い風が吹き降ろし海は嵐となりました。
あの嵐の中でアザラシたちは一体どうしていたのでしょうか。
荒れ狂う氷の上で出産間近なクラカケアザラシは無事だったでしょうか。
港はまた分厚い氷で閉ざされてしまいました。
石井さんの小舟はもちろん鋼鉄をまとったスケソウ漁船も今度ばかりはお手上げです。
早い時は3月半ばに消えてしまう流氷も今年は月末になっても羅臼に居座っています。
しかし流氷がある限りアザラシはその上にいるに違いありません。
海へ出られない焦りとアザラシがいるという安心感。
水路のあく日をひたすら待つ日々が続きます。
4月に入ってようやく流氷が緩み始めました。
大きくあいた水路を通ってツチクジラの群れが海峡を渡っていきます。
体長10メートルのオスをリーダーとした8頭の群れ。
珍しい光景です。
氷が解け始めた海はプランクトンが豊富で小魚が集まります。
流氷を避けて南下していたこのクジラも餌を求めて知床の海に帰ってきたのです。
漁期の終わったスケソウ漁船で沖合の流氷原へ分け入りました。
流氷は表面が解けてあの鋭い角が取れ始めています。
海明けはまだ遠いものの知床の遅い春も確実に近づいているようです。
羅臼の沖合10キロの地点。
そこはこの前来た時とはすっかり様子が変わっていました。
アザラシの姿は見えません。
流氷の海に慣れている石井さんの目が頼りです。
いそうな事はいそうなんですよね。
ここはちょっといないんじゃないですかね。
(取材者)あの隙間へ入ってた方がいいかしら?これ一回氷のそばまで寄ってもらって氷伝いに行ってもらえば。
いました。
それは幸運としか言いようのない出会いでした。
畳6畳ほどの流氷の上にいたのは紛れもないアザラシの赤ちゃんです。
体長およそ60センチ。
全身真っ白な産毛に包まれています。
子どものそばには母親の姿が見当たりません。
船を恐れて氷の下に隠れているのでしょうか。
(鳴き声)赤ちゃんの産毛は太陽の光を浴びてうっすらと銀色に輝いていました。
アザラシの赤ちゃんは生まれてすぐには泳げないといわれています。
それは産毛が水をはじく事ができないからだというのです。
へその緒がまだ残っています。
生まれて4〜5日というところでしょうか。
大きな黒い瞳愛くるしい顔にはかわいい眉毛も見られます。
ひれのようになった前足の指は5本。
生まれた時から鋭い爪があって氷の上を動き回りやすくなっています。
(鳴き声)産毛がぬれてしまった赤ちゃんはしきりに鳴き始めました。
(鳴き声)母親がいました。
クラカケアザラシでした。
(鳴き声)匂いを嗅いで自分の子どもを確かめています。
母と子が互いに触れ合う事は何よりの愛情表現です。
それは人間も動物も変わりません。
(鳴き声)
(鳴き声)母と子の間にどんな言葉が交わされているのでしょうか。
(鳴き声)母親は子どもの呼ぶ声にせかされて氷の上に上がってきました。
予想もしなかった光景です。
空腹を訴える子どもの声に母親は乳を与えるため乳首を差し出したのです。
アザラシの乳は脂肪分が牛乳の十数倍もあります。
濃い栄養を与えられた赤ちゃんは一日一日と急速に成長していきます。
流氷が解けるまでの僅かな間に成長してしまおうとしているかのようです。
北国のやわらかな日ざし風はそよ風。
流氷の海に生きる母と子の美しい姿です。
流氷はアザラシにとって敵を近づけない砦であり優しい揺りかごなのです。
泳げないといわれていた産毛の赤ちゃんが氷の海に入っているではありませんか。
新しい発見でした。
アザラシの赤ちゃんは生まれながらにして泳げたのです。
おなかの上に子どもを乗せて泳ぎ方を教えているのでしょうか。
母親に比べて確かに泳ぎ方は不器用です。
息を継ぐ回数も多いようです。
泳ぐ事が楽しくてしかたがないといった様子です。
これが流氷の海に生きるアザラシの普通の生活だったのです。
海峡の流氷の上で生まれ育った赤ちゃんはやがて北に向かって旅立っていきます。
そしてまた冬になると流氷に乗って帰ってくるのです。
母なる知床の海へ。
本当に生き物たちの姿を堪能したんですけれども。
ご自身30年前の映像は…?いや懐かしく…。
懐かしく見ました。
それとまた貴重な映像がたくさんありまして。
まあ30年前当時国内で初めての動画というのが何カットもありますしハダカカメガイ。
まあ通称クリオネっていわれてますけどこの番組を見てやっぱり人気が出たような感じもしますし。
水中を泳ぐトドなんかも貴重な映像でしたし。
あんなに優雅にたくさん泳いでるんですね。
初めて見ました。
トドにしろアザラシにしろ水中の動きっていうのは陸上から考えられないような動きをしまして氷の上でしたらゆっくりしか動けない動物なんですけど水中に入っちゃったらもう縦横無尽にスイスイ泳ぐっていう姿を初めて見せてもらいました。
クラカケアザラシっていうアザラシ自体はほとんど人が近づくような所に生活してないアザラシで本人たちも人間たちと出会うって事はほとんどないアザラシなもんですからああいった若い個体は本当に船のそばまで来てくれたり。
おっぱいをあげてるシーンありましたよね。
やっぱり子どもにせがまれてあんだけ鳴かれると親もやっぱり母性があるんでしょうか。
私たちがいるそばで授乳してましたし。
まあ苦労はした事はしたんですけど最後にいいものがいろいろたくさん撮れましたんで。
懐かしく見させてもらいました。
でも本当に改めて流氷の下っていうんですかね本当に豊かなんですね。
まあ流氷の中にアイスアルジーというようなものがあってその植物プランクトンを食べる動物プランクトンがたくさん発生したりしてそれを食べにまた小魚も来てワシだったりいろんな海獣類が来たりして食物連鎖がよく見れる場所なんですよね。
なかなかこうやっていろんな生態系それと多様な生き物が過ごしてる場所っていうのは世界中でもそんなに見れる場所はないんですけどこの知床なんかは意外と身近にそれも人の人家のそばで見られる場所でもありますからそういうのに強く引かれて住み着きましたけど。
あの…映像の中に道端といいましょうか。
通学路の所でカメラを…。
(笑い声)小学生たちが集団登校してるすぐ後ろをこうワシたちがとまってたり餌運んできたりしてますからね。
今でもうちの裏なんかはオジロのつがいがずっと住み着いていますから毎日のように窓からオジロワシ見れますしトドなんかも泳いでる姿を道路から見れますし。
道路から見える!?ええ。
(笑い声)今もお話の中でオジロワシの話がありましたけれどもその撮影に密着した番組があります。
「ハイビジョン特集」です。
短くまとめたものをご覧下さい。
動物写真家石井英二さん。
今石井さんが最も撮影に力を入れているのがこの時期サハリンやカムチャツカから飛来してくるといわれるオジロワシです。
オジロワシは越冬のために400羽ほどが群れでやって来ます。
しかしこのオジロワシ実は北に戻る事なくずっと知床半島に住み着いているワシです。
ここにはそうした特別なオジロワシが50羽ほどいるそうです。
このオジロワシはもう石井さんが見続けて9年にもなります。
石井さんを引き付けてやまない知床の大自然。
30年撮り続けてもそこには毎日違った姿があるといいます。
5月知床に遅い春の到来です。
石井さんは息子と共にあのオジロワシ一家の新しい命の誕生から成長までを見つめようと心に決めました。
巣の中の様子を見るには巣の上からのぞき込むしかありません。
険しい山を登りその観察ポイントを探ります。
巣に親のオジロワシはいるようです。
しゃがんでしろよしゃがんで!ひもないか?親が動き始めたようです。
卵が見えました。
2つあります。
例年ならそろそろ生まれてもおかしくない時期。
しかしまだその気配はなさそうです。
大丈夫だ。
あと何日間かだ。
オジロワシの巣を見続けて2週間がたちました。
親のおなかの下無事に2羽のヒナが誕生していました。
ヒナが生まれると親は交互に食べ物を取りに行き一羽が戻ってくるまでヒナを守ります。
親はこうしておよそ3時間置きに交互に食べ物を運び一日5回ほど食事を与えます。
15日が経過しました。
白い産毛が生え変わり立ち上がれるようになりました。
親が何かに狙いを定め飛び立ちました。
するとすぐにもう一羽も離れます。
狙いはなんとカモメです。
空中で見事に捕まえました。
よく見ると一羽が追い込んだあとすかさず横からもう一羽が捕らえています。
見事な連係プレーです。
ヒナが生まれて80日以上がたちました。
すっかり羽が生え変わりもう立派な幼鳥です。
間もなく巣立ちの時が近づいているようです。
しばらくすると親が獲物を捕らえて戻ってきました。
しかし直接巣へは戻りません。
子どもに獲物を見せつけると再び飛び去りました。
幼鳥は親が食べ物を持っている事を知って鳴き続けます。
親も呼びかけています。
その時です。
初めて幼鳥が巣から離れました。
巣立ちの瞬間です。
更に親は獲物を持ったまま待ち続けます。
幼鳥は翼を広げ飛ぼうとしているようですが…。
親は更に獲物を見せつけるように離れていきました。
飛びました。
なんとか木にしがみつきふらつきながら親のもとへ駆け寄ります。
親は子どもが来ると獲物を置きすぐに木の上に移りました。
幼鳥は食事にありつきました。
巣に残されていた一羽もすぐに飛び立ちます。
無事巣を離れた2羽の幼鳥。
大人への第一歩です。
11月森は白い世界に包まれ潤っていた川がすっかり凍りつきました。
凍った川で幼鳥が食べ物を探しています。
しかしもうここにはごちそうなどありません。
木の上からもう一羽が何やら見つけたようです。
エゾシカです。
雪崩に巻き込まれ虫の息です。
しばらくするとキツネがやって来ました。
キツネにとっても食料の乏しいこの時期を生き長らえるのは大変です。
(カラスの鳴き声)突然幼鳥が飛び立ちました。
なんとあのエゾシカの死骸を狙っているようです。
幼鳥はキツネがいなくなるのを見て獲物に近づきます。
無事にありつく事ができました。
しかししばらくするとキツネが気付いて戻ってきました。
幼鳥はすぐに追い払われてしまいました。
キツネは幼鳥がよほど気になるのかしつこく追い払おうとします。
しかし今度は幼鳥も引き下がりません。
粘りましたが…やはり勝てないようです。
キツネはしつこく迫ります。
たまらずこの場を逃げ出してしまいました。
大人になれば負ける事はほとんどありませんがまだまだ多くの経験を積まねばならないようです。
1月海が再び閉ざされていきます。
幼鳥たちはこれから流氷の海へ出なければ食事にありつけません。
最後の試練です。
石井さんは初めて輝章君を連れて流氷の海へと繰り出しました。
氷の上はたくさんの生き物たちであふれています。
石井さんの願いはただ一つ。
幼鳥が自らの力で魚を捕らえる瞬間を撮る事です。
(シャッター音)オジロだ。
あっ!取りました!スケソウ取りました。
幼鳥は自ら獲物を見つけそして捕らえました。
すっかり一人前です。
ところがそこへひときわ大きなワシがやって来ました。
オジロワシより一回り大きく肩と脚が白いのが特徴です。
オジロワシ同様北から越冬にやって来たのです。
オオワシが何か狙っています。
幼鳥はオオワシに獲物を奪われてしまいました。
氷上ではオオワシは無敵です。
特に幼鳥は格好の標的なのです。
幼鳥がオオワシに追われています。
なんとか獲物を守り逃げきりました。
よく見ると空中で食べています。
これができればもう大丈夫。
きっと生き残れるはずです。
ほとんどはこれを乗り切るのに大変な目に遭って…。
この1年目のヒナが巣立ってからの死亡率っていうのが一番高いと思うんですよね。
それを乗り切って大人になっていく。
幼鳥が成鳥になってまた次の家族を作ってというのを。
そういうつながりがずっとできる事を願ってるんですけどね。
2005年ですから10年前の番組ですけれども。
オジロワシいろいろ撮れたような気はするんですけど…。
面白かったのはキツネとオジロワシとカラスが餌の取り合いといいましょうかね。
ちょっとシカにとったらかわいそうなんですけどああやってシカが死んでしまうといろんな動物が食べに来たりして。
そこにまたそうやって力関係とかも見えますし豊かな自然っていうのが何となく見えてくるような気はするんですけど。
ご自身やっぱり野生の動物たちを撮影する時心掛けてる事って…?ある程度そうやって動物と接してますと動物の方も認めてくれてっていうか悪さしない事が分かれば意外と気にせずありのままの姿を見せてくれたりするので。
でもそこまで関係を作るのは並大抵ではないと思うんですけど。
オジロはやっぱり僕自身も子育てから巣立ちまで一貫して撮りたいなと思ってましたからそれを撮るのにやっぱり10年近くもかかりましたしなかなかワンシーズンだけではうまく撮れなかったりもしたもんですから。
その10年っていうのは…どんなふう?その間ってどんな気持ちでいらっしゃるんでしょうね。
今年も繁殖してくれて成功してくれたなと思うとうれしいです。
本当にお話も伺っていてとにかくいろんなものがいろんな命がつながり合ってる所なんだなと思いましたけれどもね。
それが流氷が何年も続けて来なくなったりしますとそうやって植物プランクトンが減ったりすると全ての魚だったり魚を食べるいろんな動物たちにも影響が出てきますんでそういう若干地球温暖化とかいわれてそういう変動があるんでしょうけどそういうものが欠けずに今のとこまだ知床ではそろってるような感じなんでまだまだ十分その自然は豊かに保たれてるんじゃないかなとは思いますけど。
そういう知床で今年も流氷やって来ていろんな動物やって参りますけれどもどんなものをこれから撮っていきたいですか?どんなものっていうか…。
動物同士の間で思わぬやっぱり出会いだったりドラマっていうのがあるような気がしてまだまだ僕なんかが思いもかけないようなものがなかでは撮れるんでないかなと思いまして。
それだけこの豊かな自然が残ってる知床ですからまだまだいろいろ発信していきたいなとは思いますけど。
私たちも楽しみにしています。
本当にありがとうございました。
今日は石井英二さんと共にお伝え致しました。
2015/02/08(日) 13:50〜15:00
NHK総合1・神戸
NHKアーカイブス「流氷に生きる動物たち」[字]
今年も流氷の季節が訪れた。流氷はアザラシやトド、オオワシなど北の動物たちを連れてくる。餌の奪い合いや子育てなど、氷の上で繰り広げられるドラマをたっぷりと紹介。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】写真家…石井英二,【キャスター】桜井洋子
出演者
【ゲスト】写真家…石井英二,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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