昔むかしのことです。
ある山奥に子供のいないおじいさんとおばあさんが暮らしていました。
おじいさんや気をつけてな。
あぁ待っとれやばあさんよ。
たくさん木の実をとってくるでな。
おぉ〜ようけ栗が落ちとるわい。
おんや?お?卵じゃ!まぁまぁこんなにたくさん。
おじいさんお疲れさま。
いいやそれよりばあさんよ。
山ですごいもんを見つけたんじゃ。
何です?おじいさん。
ほ〜れこれじゃ。
まぁきれいな卵。
金色に光っていったい何の卵でしょう?さぁて。
割ってみますか?おじいさん。
いやいやそのうち卵がかえるかもしれんて。
そうですね。
まずは神様にお供えしとくだ。
こうして金色の卵は神様に供えられました。
そしてその夜のこと…。
じいさんやあれ…。
ん?何じゃ?おぎゃ〜おぎゃ〜!
(2人)あっ生まれた!なんてかわいらしい…。
本当に神様からの授かりもんじゃったか。
おじいさん大事に育てましょうね。
そうだな。
卵から生まれた赤ん坊は2人の手で大切に大切に育てられあっという間に大きくなりました。
おっとうおっかあ!ただいま!どこへ行ってたんだい?心配したよ。
薪を拾ってきたんだ。
お前はそんなことしなくていいんじゃよ。
そうですよお前は大事な授かりもんなんだから。
おいらおっとうとおっかあに楽してもらいたいんだ。
せがれは毎日のように山へ出かけました。
あっ!ありがとう猿さんたち。
ん?なに?わぁ小鳥さんありがとう。
鹿さんも!こんなにたくさんありがとう!そんなある日のことおじいさんが病気になってしまいました。
ハァ…ハァ…。
ばあさんやわしにもしものことがあったらせがれを頼むぞ。
そんな心細いことを言わないでくださいな。
おじいさん。
(戸が開く音)おっとう薬草だよ!これが体にいいって山の動物たちが教えてくれたんだ。
まあまあそれじゃすぐに煎じましょう。
せがれやすまんの。
動物たちにも礼を言っておくれ。
おおっなんと!熱が下がったわい!おじいさんよかった!今日はこの子のおかげで元気になったがこの先何があるかわからんな。
そうですね。
私たちがいなくなったらこの子は独りぼっちになってしまいます。
ずっと一緒にいたいがこればっかりはのう。
どうしたものでしょうね。
おっとうおっかあ!起きて起きて!なんじゃ?さあ早くこっちへ来て。
このわらじを履いてみてよ。
なんとまあきれいなわらじ!金色に光っとる。
おいらが編んだんだ。
さあ早く履いてよ。
おっとうおっかあ。
どれ。
それじゃ。
これでどこかへ出かけようとでも言うのかい?どこにも行かない。
これでおっとうとおっかあの願いを叶えてあげるのさ。
願いを叶えるって?いいから。
じゃあ跳びあがって。
(2人)跳びあがる?うんさあ早く。
それじゃいいかい?ばあさん。
ええうまくやれますかね?
(2人)ほい!そうもう一回跳んで。
(2人)ほい!さあもう一回。
まあなんてことでしょう。
おじいさんすっかり若返って。
いやいやばあさんこそ。
まるで出会ったときのようじゃ。
若いのう!いやですよおじいさんたら。
ね?これでずっと一緒にいられるでしょ。
お前!お前の大きくなった姿が見られるんじゃな。
これ以上の嬉しいことはないよ。
こうして若い頃に戻ったおじいさんとおばあさんはせがれとともに山の暮らしを続けることができました。
そして更に年月が経ちせがれは所帯を持ち子供もできました。
若返った2人がもう一度本当のおじいさんおばあさんになる日が来たのです。
昔海の見える丘の上に貧しい夫婦が暮らしておりました。
女房は働き者でしたが亭主は大変な怠け者。
野良仕事が大嫌いで毎日酒ばかり飲んでいました。
ケッ!また麦飯か!もっとマシなものが作れねえのか!だって麦飯より他に食べるものがないんだもの。
これだって私たちが作ったお麦じゃないですか。
うるさい!麦飯ばっかり食えるか!だったら酒ばっかり飲んでいないで少しは働いたらどうです?何を!?やめて!キャー!バカにすんな!出てけ!《長い間ずっとあの人のわがままと酒に耐えてきました。
でももうダメもうこれ以上は我慢できない》《この崖からだったら…》でもやっぱり怖い。
はっ。
ごめんください。
ごめんください。
ん?ん?うわぁ!何じゃ?こんな山奥に現れるとはモノノケか?人間のふりをしたタヌキか?違います私は村里からきた人間です。
こ…こんな夜更けにいったい何の用じゃ?すみません…道に迷ってしまって。
お…女か?まあ中へ入れ。
ありがとうございます。
あぁ…。
(お腹が鳴る音)腹が減っておるのか?イノシシの肉でよければ分けるぞ。
親切にしてもらった女は山のおじいさんに今までのことをすべて話しました。
そうか怠け者でわがままで大酒飲み。
わしも飲むがの。
ハッハッハ!困った亭主じゃな。
いっそ崖から飛び降りてしまおうかと…。
そりゃいかん!しばらくここで身を隠したほうがええ。
あなたがいなくなっていちばん困るのは亭主だ。
女房のありがたさが身にしみるじゃろう。
ハッハッハ!のんびり暮らしなさい。
(いびき)うっう…。
お〜い!どこじゃ?畑にでも行ったか?《アイツゆんべ出て行ったきりか。
どこへ行ったんじゃ?》亭主は心当たりをくまなく探しまわりましたがとうとう見つけることはできませんでした。
お〜い狩りに行ってくるからのう。
お気をつけて。
亭主は女房が長いこと戻ってこないのでほとほと困り果てていました。
はぁ…どうしたんじゃ。
亭主をほったらかしやがって絶対許さんぞ。
バカ野郎!帰ってきたって家には入れんからな。
ちくしょう!それから長い年月が過ぎました。
山のおじいさんはもうすでに亡くなり女房は海の近くに移り住みました。
一方野良仕事の嫌いな亭主は畑を手放しました。
女房はとうに死んだものと自分に言い聞かせ竹で編んだザルを売り歩いて暮らしておりました。
《あそこでザルを売ってみるか》すみませんザルはいりませんか?はいよかったちょうどザルが壊れてどうしようかと思っていたところで。
どうぞ中へ入ってくださいな。
へえありがとうございますじゃあ遠慮なく。
お茶でもどうぞ。
いただきます。
あああったまります。
お昼ご飯ができています召し上がっていきませんか?とんでもねえザルが売れただけでもありがてえのに。
遠慮はいりませんお腹空いたでしょう?じゃあお言葉に甘えて。
長い月日が経ち互いに老いたとはいえ亭主だということはすぐにわかりました。
でも亭主は女房に気がついていないようです。
ああ腹いっぱい食っただ。
ごちそうさんでした。
お酒はどうですか?いやいや酒はもう飲みません。
昔はよく飲みましたが。
そうですか。
あなたは嫌いだった麦飯をいつからお好きになったんですか?えっ?うわぁ〜!待って!待ってください。
あなたが酒をやめ心を入れ替えこうやって会えるのを待っていたのです。
す…すまねえ。
もう何も言いません。
もう一度…もう一度2人でやり直してみませんか?おらオメエにあわす顔がねえ。
あんた!あぁ〜!あんた!あぁ恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい!恥ずかしい〜!亭主は亀になってしまいました。
女房を苦しめ泣かせたことを心から恥ずかしく思ったのです。
昔むかしあるところにそりゃあ怠け者の息子がおった。
この息子飯だけは人の倍食うくせにあとはごろんと寝てばかり。
来る日も来る日も食っちゃ寝食っちゃ寝の暮らしじゃった。
そんなある日…。
貧しいのは前からじゃからしようがないけど少しは働いてくれんかのう。
(寝太郎)そのうちにな。
と答えてごろんと寝てばかりおる。
村の若い者は皆よく働いておるしなかには嫁をもろうた者もおるというのにおっかあはほとほと困り果てておった。
ありゃ三年寝太郎じゃ。
そりゃええ。
三年寝太郎じゃ。
三年寝太郎というのは三年経ってもまだ起きぬという意味じゃ。
ある年のこと村がひどい干ばつに襲われてしもうた。
何日も何日も雨が降らず田んぼも干上がり畑にやる水もないありさまじゃった。
このままでは田も畑も枯れ果ててしまう。
そもそもこの村は水利が悪いでのう。
今年は一段とひどい。
はぁ〜峰の向こうの水が引けたらなぁ。
そうしたらずいぶん助かるだろうに。
なんとかしようと村の若い者と総出で深い井戸を掘ってみたがやっぱり水は出んかった。
峰の向こうの川の水をみんなでくみにいくくらいが精いっぱいじゃった。
村がそんなありさまでも寝太郎はやっぱりごろ〜り食っちゃ寝食っちゃ寝の暮らしぶり。
村の者はとうとう腹をたておっかさんのことまで相手にしなくなった。
相変わらず雨はさっぱり降らんかった。
とうとう飲み水まで事欠くようになってしもうた。
そこで長者どんはお触れを出した。
誰でもええ。
神頼みでも何でもええ。
この日照りと干ばつを何とかしてくれる者があればわしの娘を嫁にやろう。
長者どんの娘といえば村一番の器量よしと評判の娘じゃった。
あの娘を嫁にするのはどんな幸せ者じゃろうかと噂になっていた。
神頼みでも何でもええと言わしゃったぞ。
雨を降らせばええんじゃ。
水を引けばええんじゃ。
ある者はお地蔵さんに願をかけある者は雨乞いを始めある者は一度にたくさんの水を運べぬものかと考えた。
けれどもどれもうまくいきそうにない。
それでも寝太郎はやっぱり食っちゃ寝食っちゃ寝。
お前も村のために働いたらどうじゃ?フン…フワァーッ…。
おっかあすまねえが飯をあと1升ばかり炊いてくれねえか?はぁ…あきれた子じゃ。
息子の言うことだからとしかたがなく1升の飯を炊いてやった。
寝太郎は1升の飯をぺろりと平らげた。
ちょっくら出かけてくるべ。
寝太郎が起きだして山のほうへ行ったぞ。
何をするつもりなんじゃ?見にいこか?よし見にいこ。
村の連中は寝太郎のあとにくっついて行った。
ずいぶんと高いところまでのぼってきたもんじゃ。
あの谷川の水をおらたちの村を通るかれた川に引けたらのう。
(2人)んだんだ。
やがて寝太郎は山の頂上にある大岩の前で立ち止まった。
何をするつもりなんじゃ…。
寝太郎はぐっと腰をかがめると力いっぱい大岩を押した。
あれ押し始めたぞ。
ん〜っ。
あの大岩が動くわけがあるめえ。
それにあの岩が動いたところでどうなるんじゃ。
(3人)ハハハハッ…。
ん〜っ。
やっぱり動くわけないわ。
しょせん寝太郎のやることじゃ。
大間違いの勘違いじゃ。
帰ろうか。
ああ帰ろう帰ろう。
寝太郎はいよいよ渾身の力を込めて大岩を押した。
(3人)ん?ん〜っうわ〜っ!あっう動いた!うわ〜っ!ななんつうバカ力じゃ!大岩は次々と山肌を崩してとうとう谷川を埋めた。
せき止められて溢れ出た水は逃げ場を求めるように峰を越え村のかれた川にドッと流れ込んだ。
ありゃ〜っ!水はたちまち田畑を潤した。
おお水じゃ水じゃ。
ありがたい神の恵みじゃ。
いやそうでねえ寝太郎のおかげじゃ。
わしら見てたで。
こうして三年寝太郎のおかげで村は山の水に恵まれた。
寝太郎は長者どんの娘を嫁にもらいおっかさんを大切にしながら幸せに暮らしたということじゃ。
2015/02/08(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「金色の卵」
「亀になった男」
「三年寝太郎」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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