日本!食紀行 2015.02.08


ブリ定食3つお願いします。
ごめんなさいねお待たせ致しました。
わずか3つのテーブル席とカウンター。
この小さな店に人が押し寄せます!いらっしゃいませ。
お目当てはまな板に収まりきらないこの魚。
ずっしり太った出世魚…。
人気の定食はブリ尽くし。
特大の刺身を筆頭にブリ大根カルパッチョブリの炙りにブリのフライ。
このボリュームで880円なり!新しいね。
新鮮。
死ぬまでにいっぺんは食べに来ないけん思い…。
アハハ…!店を切り盛りしているのはこのブリをこよなく愛する女性たち。
仕事を終えた女性たちが家に帰ります。
交通手段は車じゃなくて漁船。
美味しくない魚と同じ評価をされて悔しかったわそれは。
もう明日は我が身やもんみんな。
借金抱えて誰かれ言う事ない廃業に追い込まれるの…。
島にとったら限界集落で…。
そんなんなったら何もかも…。
悔しかったら自分で売って自分で宣伝するしかない…。
うん。
愛媛県宇和島市沖に浮かぶそこは…。
海を敬いブリを育み共に支え合って生きる人々の暮らし。
自分たちの島で育った自慢のブリを一人でも多くの人に届けたい。
そしてその事が自分たちの島を残す事に繋がる。
彼女たちはブリを携えて今日も海を渡ります。
経営ノウハウもない接客経験もない彼女たちが島の生き残りをかけた小さな小さなブリ食堂。
(一同)いらっしゃいませ。
今週の『日本!食紀行は』愛媛県宇和島市戸島。
ブリの島に生きる母ちゃんたちの底力に学びます。
瀬戸内海と宇和海。
2つの海に面した愛媛県は長い海岸線を持ち古くから全国屈指の水産県として栄えてきました。
そして愛媛県はすごいんです!国内シェア50パーセントを誇る養殖マダイに生産量全国第2位の養殖ハマチ。
さらに幻の高級魚マハタ養殖など愛媛県は生産量生産額共に全国トップを走り続ける魚類養殖のトップランナーなのです。
そんな愛媛県にブリ養殖で知られる島があります。
宇和島市の沖合20キロに浮かぶ島戸島です。
島のすぐ前に広がるのは日本有数の好漁場宇和海。
水深が深く絶えず流れ込む潮が澄んだ海水と豊かな栄養を運びます。
この海でおよそ2年4キロを超えるサイズにまで育てられる魚が…。
この小さな戸島一帯で出荷するブリの量はなんと愛媛県の4分の1を超えます。
流れが速く透明度の高い潮が作り上げる健康ボディー。
その名も…。
名古屋方面を中心に全国に出荷される愛媛のブランドフィッシュです。
驚きはその肉質。
締まった身とキメの細かい脂がブリ本来のうまみを凝縮。
刺身はもちろん煮てよし焼いてよしの戸島自慢の味です。
宇和島の中心部から高速船でおよそ40分の場所に浮かぶ戸島。
人口は358人と過疎と高齢化が進む小さな島です。
この島の暮らしを支えてきたのが漁業。
そして昭和51年獲る漁業から育てる漁業へ。
ここ戸島では島ぐるみで養殖方法を考え生産者同士で支え合う形でブリ養殖が始まったのです。
しかし今から14年前島に激震が走ります。
死活問題。
もういよいよ戸島でブリ養殖を営んで36年リーダー的存在で島を引っ張ってきた藤川英雄さんです。
13〜14年前からずーっといけなんだ。
去年からようなった。
(美保さん)ここ何年かね
(スタッフ)倒産いうたら…?廃業。
今から14年前消費の低迷に伴い全国的にブリの価格が暴落。
さらに追い打ちをかけるようにエサ代燃料代が高騰。
その後10年以上にわたりブリ養殖の低迷期は続きます。
戸島でもその間11軒の生産者が廃業に追い込まれました。
意欲に燃えた時に皆一緒に始めた皆仲間なんよ。
それが廃業するいうたらなもうなんか…。
灯が消えたらもう…。
そんな厳しい時代に英雄さんを支えてきたのが戸島で生まれ育った妻美保さんです。
大好きな戸島でブリ養殖をしながら夫婦二人三脚3人の子供を育て上げました。
その美保さんにとっても厳しい10年でした。
そんな戸島ブリの逆境を打ち破るべく立ち上がったのが島の母ちゃんたち。
戸島ブリの美味しさを直接消費者にアピールしたいとまさに素人集団の島の母ちゃんたちが宇和島市内に戸島ブリだけを扱うブリ食堂をオープンさせたのです。
(一同)いらっしゃいませ。
2年前の事です。
ここ開けとくよ。
カラになったら入れなあかんけん。
広さはわずか8坪。
かつてはうどん屋さんだったという空き店舗。
しかしこの小さな食堂こそが島の将来をかけた母ちゃんたちの闘いの場となったのです。
さあ今日も海から揚がったばかりのブリを持って出勤です。
これ大きい!すごいあんた力やね…。
(美保さん)もうそこやけ。
戸島からブリ食堂までの移動は漁協が仕立ててくれた漁船。
片道だけで1時間15分かかります。
島からのスタッフは女性ばかり3名。
島で暮らす天真爛漫な母ちゃんです。
(美保さん)これだけでええよね。
冷蔵庫に。
私らも言われとったのに。
あーあ…。
母ちゃんたちのブリ食堂は宇和島の繁華街にあります。
付けた名前はずばり食堂に到着するやいなや大仕事が待っています。
ブリの解体。
(スタッフ)でかいけん体力かかる…。
(美保さん)そうで。
ブリの重さは4キロ以上。
母ちゃんにとってはかなりの重労働です。
切ってはひっくり返しひっくり返してはまた切る。
1尾さばくのに20分。
それを3尾立て続け!ようやく完了。
お見事!魚ごしらえで1キロ痩せた言わないけん。
(スタッフ)ああ…!ああ〜!ああ〜!やっちゃった。
やってもうた!すいません…。
やっちまった!小さなミスはご愛嬌。
それでもブリ大根の味付けには手を抜きません。
(美保さん)これで出しよったらとじま亭あれするよ。
戸島の自慢のブリをついつい大きく切ってしまうのも母ちゃんたちの心情です。
いらっしゃいませ。
そしてはいごめんなさいね。
お待たせ致しました。
朝締めの新鮮なブリを食べられるとあって食堂は開店から大にぎわい!そんなとじま亭の定食メニューはわずか2種類だけなんです。
まずは戸島ブリのうまみを存分に詰め込んだ鮮度のよさが歯ごたえから伝わる特大刺身。
これぞ島の母ちゃんの味…。
外はサクサク中はフワフワの…。
カツオのたたきを戸島流にアレンジ…。
そしてまさにブリ尽くし心尽くしのこのボリュームで880円!続いてとじま亭のオープンに合わせ母ちゃんたちが生み出した手作りのオリジナルだれが香ばしい炙りブリに絶妙に絡み合うひと品。
食べ始めたらもう止まりません!最高!美味しい。
うん。
死ぬまでにいっぺんは食べに来ないけん思い…。
アハハ…!そしてランチタイムもいよいよピークに突入!とその時恐れていた事態が発生します!
(美保さん)何が?あれもアラも。
なんとブリ大根が完売。
さらにカルパッチョもこの状態に。
ついには…。
もう1個いった。
うーん…。
ブリまでもが完売!急遽戸島のブリを卸している宇和島市内の加工場に連絡。
しかしその間にも…。
出来ましたら配達してくださるとありがたいんですが…。
(美保さん)もしもしとじま亭です。
はい。
すみませんちょっと…。
とりあえずあるかどうかちょっと確認して頂けますか?9人。
それで終わり?これで終わり。
終わり?うーん…ウフフフ…。
ごめんなさい申し訳ないですすみません。
もうちょっと早く来ればよかった…。
ごめんね本当に…。
また嫌がらずにおいでください。
すいませんバタバタバタバタ…。
ごちそうさまです。
はいすいません。
(美保さん)ハハハハハ…!予想以上の客足に昼の1時を待たずして閉店。
これだけ戸島のブリを待ってくれている人がいる…。
確かな手ごたえが美保さんたちを後押しします。
なんとかこう維持せなあかん。
後継者も残らないけん。
だって年寄りの島になってお祭りも継続出来へんようなそんな衰退な島では…。
絶対このままなんもせんかったらそうなっていく可能性って絶対大きい。
やっぱ食べてもらわないかん。
売らないけん。
値ぇように買うてもらわないかん。
それで突き進んできた。
やっぱ孫なんかおるし同級生はおらんわっていうような…。
やっぱ子供かわいそう。
孫がね。
そんな全然おらん…あとがおらんような島になったら。
いつ出ていかないかんのかわからんのよね。
孫のために頑張るとしよか。
ハハハ…!孫に島を残してあげるため…ふるさとを残してあげないけんやん。
将来ねなくなったらいけんもんふるさとが。
全てはブリの島を守るために…。
母ちゃんたちの闘いは続きます。

(美保さん)疲れたな。
本当ね。
じゃあおやすみ。
ばあちゃん!はーい今もんたんよ。
やだあんたら…。
裸!恥ずかしい!裸で。
戸島で36年続けてきた藤川家のブリ養殖。
今では長男が後を継ぎ孫も一緒に暮らしています。
そんな美保さんが今心待ちにしているのは3人目の孫の誕生です。
9月16日宇和島市内の病院から出産が近いとの連絡が入りました。
(美保さん)便ちょうだい。
矢ヶ浜…。
ちょうど宇和島に買い物に行く島の人の船に乗り合わせる事が出来ました。
島の人口は358人。
みんな顔見知りです。
こんな家族同然の島の人たちが美保さんは大好きなのです。
(美保さん)あたたたた…私が陣痛がきたような…。
痛い…腹が痛い…。
撮ってもらわなお母さん。
(女性)陣痛…。
陣痛が…。
(赤ちゃんの泣き声)
(美保さん)あっ子供の声。
あっ出来た。
出来たんやね。
なんか泣いたよ。
赤ちゃんの声のような…。
最初はトシコちゃんの声かと…。
(2人の笑い声)泣いた泣いた。
泣きよる泣きよる。
泣きよる泣きよる。
(看護師)おめでとうございます。
(美保さん)ありがとうございます。
(女性)ありがとうございました。
お世話になりました。
おお…!生まれてきたのは元気な男の子!2014年島で生まれたただ一人の赤ちゃんです。
この小さな命のためにもブリの島をもっともっと元気にしたい。
そんな思いが美保さんの心の中に溢れています。
これ本当本当本当…。
(美保さん)わかった?ああトシコに似とるね。
トシコに似とるわい。
鼻が広いぞ。
(美保さん)マサヒロがそうやったやん。
(英雄さん)そうか。
アハハハハ…。
どっちに似とる?ママ泣いとる?ママ泣いとる?ママ疲れ果てとる。
泣いてないよ。
笑いよるやろ?笑いよる。

(祭り太鼓)島の人が待ちに待った秋祭りがやってきました。
出せ!出せ!358人の島の人たちが総出で豊漁と島の安全を祈ります。
ここ藤川家でも新しい命の健やかな成長を祈ります。
(一同)わーっ!この日だけは海の仕事もお休み。
笑顔と歓声が島中に響き渡ります。
そんな祭りでも登場するのはやっぱりブリ!甘酢しょう油とゴマで味付けしたご飯を炙ったブリで包み込む握り寿司。
戸島でも定番!そして…。
さらにブリはこんなところにも。
神様へのお供えもブリ!子供たちが手作りしたみこしの上にもブリ!わかりますか?戸島のえびす様は鯛ではなくブリを担ぎます。
(子供たち)わっしょいわっしょい…!美しい海からの恵みに感謝しつつブリを育みブリと共に生きる…。
これがブリの島戸島の変わらない暮らしなのです。
12月手塩にかけて育て上げたブリの出荷が最盛期を迎えます。
そしてとじま亭に冬のメニューが加わります。
よいしょよいしょよいしょ!12月冷え込みと共に戸島が一年のうち最も活気に溢れる季節がやってきます。
手塩にかけて育てたブリの出荷の最盛期。
戸島自慢の味が全国に向けて発送されていきます。
この冬のブリもうまく育ってくれました。
ばっちし。
旬を迎えてとじま亭もますます活気づいています。
ブリをとんかつ風に揚げ鍋で煮込んだ鰤かつ鍋。
冬のとじま亭の看板メニューそして…。
戸島のブリの美味しさを存分に堪能出来るラインアップ。
隠し味はもちろん母ちゃんたちの愛情です。
(美保さん)私らがそれの…使命というか仕事というか。
体が続く限りやらないけんのかなと。
(美保さん)自分らで出来る事を精いっぱいするのがええんやないかなと思う。
もう普通でいいの。
あんな高級そうな
(一同)いらっしゃいませ。
島の将来をブリにかけた戸島。
その島を守るために立ち上がった島の女性たち。
その闘いの場はわずか8坪のブリ食堂。
愛媛県宇和島市戸島。
ブリの島に生きる母ちゃんたちの笑い声が今日も響き渡ります。
(笑い声)次回の『日本!食紀行』は広島県。
酒都に伝わる名物料理びしょ鍋に学びます。
2015/02/08(日) 06:00〜06:30
ABCテレビ1
日本!食紀行[字]

生まれも育ちも島!経営ノウハウも接客経験もない!そんな島の母ちゃんたちが営む大人気の食堂が!食材は自慢の“ブリ”!刺身、炙り、ブリ大根…ブリ尽くしの定食とは!?

詳細情報
◇番組内容
母ちゃんたちは、島から船で店まで通います。仕込みも接客も料理もすべて、自分たちだけで…。特大の刺身に、炙りブリ、ブリ大根、ブリのフライ…ブリ尽くし、心尽くしの定食で店内は連日大賑わい!しかし、この食堂には島で暮らす母ちゃんたちの“決意”が込められていました。30年以上にわたり、魚類養殖の生産“全国No.1”に君臨し続ける水産王国・愛媛県。その愛媛県に“ブリ養殖”で知られる小さな島「戸島」があります。
◇番組内容2
島民同士で支え合い、好漁場で育まれる“ブリ”は、締まった身とキメの細かい脂が絶品!“ブリ”は古くから戸島の暮らしを支えてきた“島の宝”です。しかし平成13年、消費の低迷に伴い、全国的にブリの魚価が大暴落。その後10年以上低迷期が続き、その間、戸島でも10軒以上の生産者が相次いで廃業。『子供たちに島を、故郷を残すために何とかしなければ!』島を守るために立ち上がったのが、島の母ちゃんたちでした。
◇ナレーション
松岡宏忠(南海放送アナウンサー)
◇音楽
エンディングテーマ曲
Bom Dia ! / 柏木広樹
◇制作
企画:民間放送教育協会
制作著作:南海放送
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.minkyo.or.jp/

この番組は、朝日放送の『青少年に見てもらいたい番組』に指定されています。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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