もうひとつのグレートトラバース「密着!百名山人力踏破の舞台裏」 2015.02.08


一人の男が前人未到のチャレンジをしている。
「グレートトラバース」。
作家深田久弥が選んだ日本百名山。
その100の頂を自らの足だけを頼りに南から北へ全行程7,800kmをおよそ200日かけ踏破しようという前代未聞の挑戦だ。
挑むのはプロアドベンチャーレーサーの田中陽希。
世界大会で何度も入賞した実力者だ。
その田中が挑む壮大なプロジェクトをカメラは余す事なく記録してきた。
山道を猛スピードで駆け抜ける田中を追い続けるカメラ。
一歩間違えば命を落としかねない断崖絶壁での撮影。
そして上空から見下ろす大パノラマの絶景。
迫力満点の映像の数々はどのように撮影されているのだろうか。
そこで今回は撮影の舞台裏に潜入。
そこには田中のチャレンジに勝るとも劣らないスタッフたちの努力と苦労があった。
「もうひとつのグレートトラバース」。
知られざる撮影スタッフの挑戦に密着した。
霧のかかる湿原に現れた幻想的な白い虹。
ここは群馬福島新潟の県境にある…4月1日に屋久島から旅をスタートさせた田中陽希さん。
4か月半かけてここ尾瀬にたどりつきました。
尾瀬ヶ原を抜け75座目の百名山至仏山を目指します。
朝5時半駐車場でスタッフが出発の準備をしていました。
立ったまま朝食をとるのは撮影を指揮する…そして撮影を行う駒井研二さんと平出和也さんの2人のカメラマン。
三脚などの荷物を運ぶ山田高志さん。
この4人で陽希さんを追いかけます。
こちらが撮影に使うカメラ。
重さは1.2kgと超軽量。
雨に備え防水テープで補強もしています。
そしてスタッフが履いているのは軽量なトレイルランニング用のシュ−ズ。
過酷な撮影のせいでしょうか。
穴が開いちゃってますね。
服装も短パンに半袖。
普通の人の倍のスピードで山を駆け抜ける陽希さんの撮影。
フットワークが命です。
いよいよ出発。
この日は別の宿に泊まっていた陽希さんと山の中で待ち合わせる事になっています。
合流地点まで6kmの道のりを小走りで移動するスタッフ。
撮影前のウオーミングアップです。
コースタイム2時間半の道のりを1時間ほどで到着。
(取材者)到着?到着しました。
(取材者)ここが待ち合わせ場所ですか?はい。
カメラを構えるとすぐ陽希さんがやって来ました。
一日の撮影の始まりです。
陽希さんがたどるこの日のルート。
合流地点の兎田代から尾瀬ヶ原の湿原に入ります。
木道を6kmほど進み至仏山の登山口山ノ鼻へ。
この先の樹林帯を抜け険しい岩場を越えると75座目の百名山至仏山の山頂です。
それから再び尾瀬ヶ原を横切りこの日の宿尾瀬小屋へ。
総距離25km。
コースタイムで12時間ほどの行程です。
この間撮影は陽希さんの歩みを止める事なく行います。
朝8時半。
尾瀬ヶ原の湿原を至仏山へと向かう陽希さん。
その背後から撮影するのは密着担当…この人ただ者ではありません。
駒井さんも日本を代表するアドベンチャーレーサー。
陽希さんと同じチームに所属する先輩です。
また日本アルプスを縦断する山岳レースで上位に入賞した事もある実力派のアスリート。
そんな駒井さんが撮影した映像がこちら。
普通の人の倍以上の速さで登る陽希さんを捉え続けています。
ついていく体力もさる事ながら撮影の腕前もトップクラスのアスリートカメラマンです。
こうした密着映像。
小型カメラの機動性を生かしたユニークなものなんです。
例えば歩く姿を正面から捉えるため駒井さんはこんな技を使っています。
これ!カメラを後ろに向けて撮影しているんです。
足元とモニターを交互に確認しつつも映像はぶれさせない。
経験と勘を頼りに撮影する驚きのテクニックです。
その技は岩場の急斜面でも。
先回りして陽希さんが登ってくるのを待ち受ける駒井カメラマン。
陽希さんが近づいてくると今度はカメラを後ろに向けその前を登っていきます。
こちらがその時の映像。
懸命に登る表情がしっかりと撮影されています。
スピード感あふれる陽希さんの姿はこうして撮影されていたんですね。
飛ばすの?突然田中を追い越し走りだす男がいた。
この男もただ者ではない。
平出は世界的に有名な登山家だ。
ヒマラヤの8,000m級の峰々を次々と踏破してきた。
オーケー!登山家として最高の名誉とされるピオレドール賞を日本人として初受賞。
世界が認めるトップクライマーであるとともに最高峰の山岳カメラマンの一人だ。
平出の担当は大自然の風景の中を歩く田中の迫力映像を撮る事。
準備しているのはそんな撮影に欠かせない秘密兵器だ。
山の頂に立つ田中の姿を捉えた上空からの映像。
こうした映像は小型ラジコンヘリをカメラマン自らが操縦し撮影したものだ。
ラジコンヘリは撮影の度に組み上げなければならない。
組み立てにかかる時間はおよそ5分。
撮影の準備はいつも後ろから迫る田中との競争になる。
(小型ヘリのエンジン音)田中が現れた。
平出は田中が通り過ぎるのに合わせ機体を上空へと飛ばす。
ヘリには360度あらゆる角度を向く超小型カメラが搭載されている。
1つのリモコンで機体とカメラとを同時に操らなければならない。
ここからが腕の見せどころだ。
細心の注意を払い機体を人がいない場所へと飛ばす。
1回の飛行時間は僅か6分。
今回平出がねらうのは湿原の中を行く田中の姿だ。
ところが…。
一瞬田中を見失った。
高く上昇したヘリから何が映っているかを想像しながらコントロールする。
経験と勘が頼りだ。
輝く池と湿原。
その先の至仏山を目指す田中。
ねらいどおりの映像だ。
オーケーです。
(取材者)風とか全然問題なかったですか?今日はそんなに問題ないですね。
ただ…すぐに田中を追う平出。
その平出を常にサポートする一人のスタッフがいる。
山田は日本を代表するトレイルランナー。
イタリアで開かれた国際レースで日本人最高位を取った経歴を持つ。
山田は三脚などの撮影機材とスタッフ4人分の着替えや食料など重さ10kgほどの荷物を担ぎながらカメラマンについて走る。
過酷な撮影を行うカメラマンを支えるなくてはならない存在だ。
9時50分田中は至仏山の登山口にさしかかる。
山頂までのコースタイムは3時間。
しばらくは見通しが悪く狭い山道が続く。
樹林帯を抜け尾瀬ヶ原を見渡せる岩場に出た。
ここで平出が再び田中を追い越していく。
先回りしカメラを構える平出。
呼吸を整え田中が現れるのを待つ。
待つ事5分。
田中が現れた。
これがその時の映像。
尾瀬ヶ原をバックに急な岩場を懸命に登る田中の姿を捉えていた。
(田中)あっうわっ…足が重い!一方田中に密着する駒井カメラマンは既に頂上直下にさしかかっていた。
10時50分至仏山山頂に到着。
この日田中はコースタイムの1/3の1時間で至仏山を駆け登った。
到着〜。
田中を撮影しながら驚くべきスピードで登頂した駒井カメラマンと岡本ディレクター。
彼らはどんな気持ちで取材を続けているのだろうか。
11時50分田中は山頂での1時間の休憩を取った後足早に下山を始めた。
結局田中はこの日距離25kmコースタイム12時間の行程を8時間で駆け抜けた。
午後3時この日の宿泊場所尾瀬小屋に到着。
じゃあここまでお疲れさまでした。
苦労を互いにねぎらう撮影スタッフと田中。
取材する側される側を超えた絆がそこにはある。
田中が挑む日本百名山一筆書き踏破。
それは撮影スタッフにとっても前人未到のチャレンジに違いない。
やったぞ〜!突然ですが陽希さんにこれまでの登山で印象に残った5つの百名山を選んでもらいました。
名付けて…
(取材者)印象に残った山ベストファイブみたいのを…。
う〜ん…。
まず陽希さんが選んだのは旅の最初に登った屋久島宮之浦岳。
7,800kmに及ぶ旅の始まりとしてよいスタートを切りたいと強い思いで登った事が印象に残っているそうです。
続いては鳥取県の大山。
中国地方唯一の百名山大山へは九州から480kmの舗装路を9日間歩きに歩いてたどりつきました。
山頂に立ったその時の達成感が忘れられないそうです。
そして3つ目は南アルプス赤石岳。
6月予想を超える残雪が陽希さんを苦しめました。
急勾配の雪の斜面を決死の覚悟で登った事が印象的だそう。
そして山頂で目にした日本一の絶景にも心を打たれました。
4つ目は岩と雪の殿堂北アルプス剱岳。
標高差700mの大雪渓を登りきった陽希さん。
切り立った岩稜を越えた頂で待っていたのは想像以上の静けさ。
岩と雪に囲まれた標高3,000mの世界。
感動の体験でした。
そして陽希さんが最後に選んだのは富士山。
以上陽希さんが選んだ5つの百名山。
旅が終わる頃にはまた違ったラインナップになっているかもしれませんね。
頑張って下さ〜い!あっありがとうございます。
山の思い出と共に田中が大切にしている事。
それは旅先での出会い。
今その挑戦に共感し田中を応援する人たちが全国各地で増え続けている。
わ〜いや〜!うれしい!こんなとこで見れるなんて!番組にも650通を超える応援メッセージが届き日に日にその勢いを増している。
田中は応援してくれる人たちとの交流を深めようと旅の途中交流会を開いた。
神奈川県丹沢山の登山口。
早朝にもかかわらず全国各地から200人以上のファンが集まった。
ありがとうございます。
本当の感動です。
ありがとうございます。
見てから本当にファンになってすごいチャレンジに本当に勇気頂いてます。
本当頑張って下さい!はい!ありがとうございました。
田中のチャレンジが人々に勇気を与えている。
そして田中も多くの声援に励まされながら挑戦を続けていく。
旅を続ける陽希さんと撮影スタッフに最大のピンチが。
それは群馬県みなかみ町での出来事でした。
百名山70座目の谷川岳に登る朝ディレクターの岡本さんに一本の電話が。
うんうんうん…はいはい。
分かりました。
じゃあえ〜…はいとにかく…。
陽希さんから体調不良のため出発を見送るという知らせでした。
岡本さんはカメラマンと共に陽希さんのもとへと急行します。
ベッドに横たわる陽希さん。
前夜熱が39度台まで上がり朝になっても熱が下がらず病院に。
原因は連日の暑さと登山により蓄積された疲労でした。
「グレートトラバース」5か月目にして初めての緊急事態。
岡本さんは見守る事しかできません。
そしてその日の夜再び陽希さんから岡本さんのもとに電話がかかってきました。
え〜!一度下がった熱がまた上がったという知らせでした。
あの〜陽希また熱が出たって。
8度3分だってよ。
今電話で…。
今ですか?うん。
相当ショックだったんだね。
熱は下がらず5日が過ぎました。
8月6日陽希さんが出発を決め1週間ぶりに撮影が再開しました。
あ〜…まだ体調は万全ではないという陽希さん。
それでもこのあとの予定を考えるとこの日谷川岳を登らなければならないと判断したのです。
この辺はヒルが多いから使う人少ないじゃないですか。
でも足取りにいつもの力強さがありません。
登り始めて2時間半。
陽希さんの足の運びが…止まります。
(取材者)本当?ちょっと…。
ついに座り込んでしまいました。
この旅の間誰よりも陽希さんを近くで見続けてきた岡本さん。
祈るように見守ります。
30分後再び歩き始めました。
70座目の谷川岳に登頂。
陽希さんにとってはもちろん岡本さんたち撮影スタッフにとってもこれまでで最も苦しい撮影となりました。
でもお互いを信じる事で共に登りきる事ができたのです。
田中陽希さんが挑む日本百名山一筆書きの旅。
その傍らには陽希さんと共に壮大なプロジェクトに挑戦する男たちがいます。
「グレートトラバース」旅はまだまだ続きます。
「NHKミニミニ映像大賞」!2015/02/08(日) 02:25〜02:55
NHK総合1・神戸
もうひとつのグレートトラバース「密着!百名山人力踏破の舞台裏」[字][再]

日本百名山一筆書き踏破をめざす「グレートトラバース」その撮影の舞台裏に潜入!すると、タダ者でない撮影スタッフや驚きの撮影手法等、もうひとつの感動の物語があった。

詳細情報
番組内容
アドベンチャーレーサー田中陽希が、日本百名山を自分の足とカヤックのみ一筆書きでつなぐ挑戦を追ったドキュメント「グレートトラバース」。田中の前代未聞の挑戦とともに、そのハードな旅に密着する撮影スタッフとその撮影手法に注目が集まっている。そこで、田中を追う撮影クルーに完全密着!タダ者でないスタッフのプロフィールや、驚きの撮影手法など、名シーンが生み出される「グレートトラバース」制作の舞台裏に迫る。
出演者
【出演】田中陽希,【語り】岩井証夫,眞鍋かをり

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:3764(0x0EB4)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: