お送りしてまいりましたが明日も引き続き「介護百人一首冬編」をお送り致します。
明日もねじめ正一さんよろしくお願い致します。
よろしくどうも。
(小谷)介護百人一首。
広島県の多田牧子さん64歳の作品です。
「99歳の母は記憶力は衰えましたが元気に暮らしています。
とはいえ食事をした事も忘れるなど不安な事も多くなりました。
私が帰る時はしっかりした声をかけて送ってくれます」。
静岡県の橋美紗さん19歳の作品です。
「祖父を気遣い支える祖母。
その優しさを見てきた私は介護の勉強を始めています」。
京都府の松岡初美さん72歳の作品です。
「おととしの1月に脳梗塞になりました。
水も飲み込めず言葉も出ずこんな状態でも生きなければいけないのかと娘に訴えた事もありました。
その後リハビリを重ね今では箸が使え字も書けるようになりました」。
「介護百人一首2014」。
応募された1万1,000首の中から選ばれた100首の歌。
介護を巡る思いは人さまざま。
その歌に込められた心もようを訪ねます。
(毒蝮)介護は明るく楽しくかっこよく。
全国の介護家族の皆さんご機嫌いかがですか?「ハートネットTV」昨日に引き続き「介護百人一首冬編」をお送りしてまいります。
全国から寄せられた1万1,606首の作品の中から選ばれた100首。
昨日今日でいよいよ100首全てを紹介し終えるという事になりますね。
それでは今日のゲストは昨日に引き続き詩人で小説家のねじめ正一さんです。
(一同)よろしくお願いします。
ねじめさんは認知症のお母さんみどりさん90歳を介護されているという事でご本もお書きになっていますがねじめさんは短歌はお書きにならないですか?うちの家系もともと父親も俳句母親も俳句だから俳句家族なんですよ。
だから母親の俳句は書いてます。
ちょっと教えて頂けます?要するに雷がね…ちょうどやっぱり認知で脳も前の調子とちょっと違ってきてるので雷にちょっと刺激されて元に戻ってくれればいいのにという。
「応答せよ」って…。
アラシ隊員応答せよ!「応答せよ」ですねアラシ隊員。
その世代なんで。
今日はお母さんを介護されているねじめさんと一緒に作品を見てまいります。
「介護百人一首冬編」ご覧頂きましょう。
新潟県の中村俊子さん84歳の歌です。
「言葉のない夫。
何を持っていくと喜ぶだろう?思い出してくれるだろう?と考えある日ひょっとこのお面をかぶって『こんにちは』と顔を出したら声を出して笑ってくれました。
心の底からうれしかったです」。
京都府の西田和子さん75歳の作品です。
「夫は畳作りで50年働いてきました。
頑丈だった腕は弱々しくなり手に箸も持てなくなりました」。
介護を学ぶ大阪府の長谷川理子さん41歳の作品です。
「介護の実習で利用者の悩み事を真剣に聞いていました。
途中その方の言葉が聞き取れず何度も聞き返していたところこう言われてしまいました」。
大分県臼杵市この町に住む古賀艶子さんの短歌も介護百人一首に選ばれています。
よ〜いしょ。
おはよう。
おはようございますばあちゃん。
艶子さんの母白石トヨさん93歳。
これまで大きな病気をする事なく長寿を楽しんでいます。
目覚まして下さい。
おはよう。
オイチニッオイチニッ…はい。
トヨさんを見守る古賀艶子さん69歳と夫の幸夫さん71歳です。
(艶子)大体朝私が食べさせるんですけどもう主人が上手になったので助かります。
私あとこっちできるから。
以前トヨさんは実家で艶子さんの妹が世話をしていました。
しかしその間に認知症が少しずつ進んできました。
ばあちゃんおいしい?おいしいな。
トヨさんの介護をどうするか。
艶子さんの4人の兄弟で随分話し合ったそうです。
「どこで見る?誰が見る?どこか施設に預ける?」っちう話になったんですよ。
そしたら「ああ俺たちが見ればいいやないか。
退職もしてるし」。
本当に感謝しました。
(取材者)うれしいです?うれしかったです!本当にうれしくてね。
「大変よ」っち言うけどいやもう見ろうっちてね。
ええんじゃねえっちゅう事で。
白石トヨさんは大正10年の生まれです。
トヨさんは小学生の頃母を病気で亡くしています。
幼い弟たちの面倒をよく見ながら母の看護に尽くした事で表彰されました。
「貴女ハ資性温順常ニ黙々トシテ事ニ當ル家庭ニアリテハ幼少ナル弟妹ヲイタハリ數ヶ月ニ互ル病母ニ仕ヘ看護至ラザルナシ」。
裁縫箱をもらいました。
学校を出ると地元の缶詰工場の食堂で働きました。
昭和17年21歳の時工場で働いていた白石春光さんと結婚。
2人して黙々と働き4人の子を育て生きてきました。
お願いします。
また例の方でもよろしくお願いします。
トヨさん頑張ろうね。
(笑い声)トヨさんはデイサービスを週に4回利用しています。
1234!5〜。
トヨさんはどこへ行っても穏やかな笑顔を絶やしません。
母がデイサービスに行っている間は艶子さんの息抜きの時間。
ノートに書き留めた介護の歌です。
「老い痴る母は童に戻りて早や10年ゆっくりゆっくりと一つ子になりぬ」。
(艶子)本当にず〜っと10年間見てきてるとああ幼稚園ぐらいになってるなとかね。
今3歳ぐらいになってきてるなとか…。
もうイチョウの葉っぱも知らない。
紅葉も拾って「これ何?これ何?」って聞くんですよね。
あれは寒い時一緒に出て「これ何?」って言うからもう雪も忘れてるんやなと思って。
もう母は一つ一つ一つ一つこう忘れていくんかなと思って。
同居している孫の英輔さん。
英輔さんは介護の仕事をしていました。
今は正看護師の資格を取るため勉強中です。
(話し声)うん。
(取材者)今何ておしゃべりしてました?今ですか?いや…分からないですけど「誰かどこかにいるのかな?」みたいな。
うん…。
誰か多分見えるんだと思うんで。
(話し声)
(取材者)英輔さんにとっても大好きなおばあちゃん?ですね…。
もう大好きですね。
みんなに愛されるトヨさんです。
え〜?艶子さんの介護百人一首は5年前のみんなが本当に心配した出来事を詠みました。
抱き締めたね。
ギュ〜ッとよかったよかったっち感じでね。
「よかった!お母ちゃんがおってよかった」っちてね。
母はあまり感情分からないで「あんたたちが来てくれたんよかった」。
もうそんな感じだったですね。
母といつまでも一緒に暮らせる幸せ。
その幸せを艶子さんはかみしめています。
(艶子)もう10年間もこうやって母と接する事ができて神様からのプレゼントかななんて思うんですよ。
息子も「お母さん兄弟のうちでお母さんが一番幸せやなんじゃない」っちて言うんですよ。
ず〜っとおばあちゃんと暮らせてそうやってこんなかわいい顔見られてとかね。
そんなふうに言ってくれる事にまた感謝。
はい。
(取材者)みんなが幸せになった?本当に不思議ですよね。
認知症の母にいっぱい私たちがこう幸せをもらってる。
黙々と生きてきた母から今も幸せをもらう大分の一家です。
は〜。
これトヨコさんから見たらねお母さんから見たら…。
トヨさん。
トヨさん。
「お前ねいいとこへ嫁に行ったね」っつって旦那の事を本当にありがたがってる。
自分の親を見れるっていいですよね。
うれしいよ。
…という古賀艶子さんの歌。
ねじめさんはどうご覧になりました?このやっぱり「寝巻きのままの母を抱きしむ」っていう「抱きしむ」っていう言葉の中に何て言うんだろう。
安ど感とそれからこれからも続く不安感と何かね自分が背負っていくという思いも当然あるんだと思うんですけどこの「抱きしむ」の中に何かいろんなものが込められてるっていう。
何か安心感だけじゃないですよね。
またやっちゃうかもしれないという思いと…。
放しちゃいけないんだと思う気持ちが…。
そういうものが全部伝わってきますよね。
いい歌をありがとうございました。
さてほかにねじめさん気になった作品ありますでしょうか?これはもう本当にすっごい畳職人さんってうちにも近くありましたけどすっごい力あるんです。
こうやる訳ですよね。
それで畳の重さと箸の軽さが両方とも掛けてますよね。
さっき俳句の話しましたけど短歌っていうのはやっぱり強さと…。
「行ってきます」って強かったおやじが今度は帰ってくる訳ですよ。
帰ってくる時に箸も何か持てずに帰ってきちゃったっていうね。
一つの物語が短歌って出来るんだよねやっぱりね。
そうか。
だから五七五七七でそれが完結する訳だ。
この七七が難しいんだと思うんですよ。
という事で「介護百人一首冬編」引き続きご覧頂きましょう。
愛知県の中西紗羅さん二十歳の作品です。
「祖母が杖を購入しました。
柄やデザインがとても気に入っている様子でした。
でも出かける時使おうとしないので尋ねると『素敵すぎてもったいないから』と言いました」。
埼玉県の森井セツさん82歳の作品です。
「病んでからの夫の目は弱々しくまた私を睨むほどの元気を取り戻してほしいと願っていました。
けれども末期のがんであっという間に逝ってしまいました。
気付くのが遅れた事が悔やまれてなりません」。
秋田県の和田アイさんの作品です。
「最初はふざけてどれどれと背負った息子がすぐ歩くのをやめて私を下ろし『母さんいくつになった?』と聞きました。
『もう86歳だよ』と言うと『ふ〜んそうか』と改めてびっくりしているようでした」。
ここにも介護百人一首の詠み人がいます。
歌を詠んだ油座美弥子さん67歳です。
子ども3人は皆家を離れ今は夫と2人で暮らしています。
美弥子さんは週に1度遠く離れた母を見に行きます。
用意しているのは2人で食べるカレーです。
明日の朝…あっお昼。
母が住むのは福島県いわき市。
片道2時間かけて通っています。
行くといつも喜んでくれるので遠くても苦にならないのだといいます。
辺りが暗くなり始めた頃ようやく着きました。
こんばんは。
来ました。
着きました。
ちょっと荷物を…。
どうぞ。
よろしかったらどうぞ。
美弥子さんの母キミ子さん95歳になります。
キミ子さんは15年前に夫を亡くしそれ以来独りで暮らしています。
慣れ親しんだ家でのんびり暮らすキミ子さん。
毎日の散歩が何よりの楽しみです。
(取材者)散歩はどのくらいするの?そうですね…ちょっとそこら辺歩くと20〜30分かかりますね。
100まで大丈夫かな。
(笑い声)
(取材者)100まで大丈夫ですよ。
元気そうなキミ子さんですが2年前転んで左肩を骨折しました。
そんな母を心配して美弥子さんは足しげく様子を見に来ているのです。
週に1度の親子で囲む夕げです。
あそこのテーブルでね。
(取材者)台所で?台所で。
実はキミ子さんは血のつながった本当の母親ではありません。
警察官の父久吾さんと警察で事務をしていた母のもとに生まれた美弥子さん。
しかし美弥子さんが3歳の時その母は結核で亡くなってしまいます。
弟が8か月で私が3歳の時に亡くなってるんで生みの親は全然覚えてないんです。
写真でね見るだけ。
その後父は実母の姉と結婚しますがやはり同じ結核で亡くなります。
美弥子さんがまだ6歳の時でした。
2番目の母はちょっと覚えてるんですね。
亡くなるっていう時に夜起こされて死に水って言うんですか?脱脂綿の水を含ませさせられたところとかね。
久吾さんはまだ幼い2人の子を男手一つで育てていました。
そんな時紹介されたのが当時学校で保健の先生をしていたキミ子さんでした。
36歳で結婚したキミ子さん。
子育てに不安がありましたが当時8歳の美弥子さんはすぐ懐いてくれたといいます。
子どもだったからね。
だって「今日からこの人がお母さんだよ」って父に言われたのでだからもうそれがお母さんだと…。
いきなり2人の子の母親となったキミ子さん。
子育ては苦労の連続でした。
いや〜こんな子どもを育てるっつう事はね容易でないしよくできればいいし。
よくできないから私が悪い者になっちまうし。
電話来て早く帰ってきてもらわないと困るんだって。
いろいろね若い時はありましたよね。
やがて美弥子さんの妹となる女の子も生まれ一家5人幸せな家庭を築いてきました。
47年間キミ子さんと連れ添った久吾さんは平成12年に亡くなりました。
郡山に嫁いでいた美弥子さんは独りになった母を心配して度々実家を訪ねました。
一緒に旅行をしたり改めて母子の絆を強めてきました。
おはようございます。
近所には独り暮らしのキミ子さんを気にかけ毎日顔を見に来る人がいます。
やはり夫を亡くし独り暮らしをしている…何かあるとやっぱり遠くの人は大変だなと思うから私は何にも力にはなれないけど目にはちょっとなれると思うから「どう?おばちゃん」なんて。
「おはよう。
休みな」ってここでお茶飲んだり。
ちょこちょこ見てもらえるんで本当に助かるんです。
(渡辺)役には立たないけど…。
いやただ何でもね…。
話し相手。
(渡辺)お互いに独りだからやっぱし気になっちゃってね。
縁あって同じ境遇のアイ子さんに見守られるキミ子さん。
そして血のつながりはなくてもキミ子さんを母と慕う美弥子さん。
そんな美弥子さんの介護短歌です。
・「苦労ねと言われるけれど母が居て」・「話せる笑える元気貰える」
(笑い声)苦労だねって言われてもうちに来るとやっぱり母が話ししたり笑ったりしてくれる。
だんだん元気にもなっていくしねそういうところがやっぱり自分も元気になれるというところがあったんですね。
(取材者)血がつながってないお母さんですけど本当のお母さんになられるんですね。
そうですね小さい時からね…。
まあやっぱりいろいろありますけどもそれはね。
お互いにある程度はねありますけどもやっぱり…。
忘れちゃうのそういうの。
(笑い声)けんかしてもね。
忘れちゃう。
忘れるからね。
春を待つ母と娘のひとときです。
短歌は…さっき詩吟のように読んで頂きましたけどともかくリズムがありますよね。
「苦労ねと言われるけど母が居て話せる笑える元気貰える〜」みたいな。
俺が何か歌っちゃうみたいなそういう何かリズム感があって元気が既にもうこの歌自体が元気がありますよね。
血がつながってない子もいたりでもそういう事に反発をした時もあると思うんですよやっぱりね。
お母さんの方もちょっと被害妄想になってみたり。
私の育てが…。
でもそういう事もありつつやっぱり時間的な積み重ねがあってだんだん逆に関係が深まっていくというね。
実の親子以上に濃い親子になってる。
そんな感じが見えますよね。
うちもおふくろ今90ですけど元気だったらああやっていろんな人と話ができたらいいのになっていう思いは今見ててありますよね。
美弥子さんキミ子さんそれぞれの暮らしを尊重されて遠距離介護是非続けて頂きたいと思います。
さて介護短歌介護百人一首というのをご覧頂きましたけどもどうご覧になりました?でも僕なんかまだ…。
ある意味で介護なんて本出したりしてますけどでももっと世の中介護なさってる方大変な思いしてる人いっぱいいると思うんですよ。
実際に短歌に書いてもこれよりも実際にもっともっとつらい思いしながら書いてるんだけどそのつらい思いをのみ込むっていうんですかね。
のみ込んでそれを表現していくという。
そこでものすごく明るくなったり「あれ?私は実はこんな事を思ってたんだ」と発見する事があるんですよね。
発見!?発見。
これがやっぱり短歌の楽しさであり介護をやりながら短歌を書いてる人の喜びみたいなもの。
実際は底の方では皆さん相当つらい思いしてるんじゃないかなっていうのが今回の一番の感想かな。
はい。
親子の介護夫婦の介護さまざまな家族の形を見てまいりましたが「介護百人一首2014」はこれで全ての作品を紹介したという事になります。
なりました。
次回は2月の放送です。
いよいよ「介護百人一首2015」が始まります。
またご覧頂きたいと思います。
今日はねじめ正一さんありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/02/07(土) 14:29〜15:00
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV・選 介護百人一首「冬編 その二」[字]
介護にまつわる出来事や思いを詠んだ「介護百人一首2014」今回は冬編その二 暗闇に猫とさ迷う母見つけ寝巻きのままの母を抱きしむ ほかの歌をご紹介します。
詳細情報
番組内容
介護する人される人、日々の介護生活の中でふと心に浮かんだこと、ある出来事の情景を詠んだ介護百人一首、今回は冬編その二。 苦労ねと言われるけれど母が居て話せる笑える元気貰える 週に二日、骨折をした母の元へ通っています。70キロの道を2時間かけてもう8か月、ようやく母も痛みが薄らいできたようです。介護短歌の心に触れて下さい。
出演者
【出演】毒蝮三太夫,小谷あゆみ,ねじめ正一
ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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