シリア:避難高校生が「ジハードに」…数千人が行方不明も

毎日新聞 2015年02月05日 19時39分(最終更新 02月06日 09時35分)

「男子生徒が怒りを抱えてシリアに戻り、戦闘員になっていく」と話すユンソ教諭。後ろに見えるのはキリス避難所=トルコ南部で2015年2月2日、大治朋子撮影
「男子生徒が怒りを抱えてシリアに戻り、戦闘員になっていく」と話すユンソ教諭。後ろに見えるのはキリス避難所=トルコ南部で2015年2月2日、大治朋子撮影
「イスラム国」の活動範囲とキリス
「イスラム国」の活動範囲とキリス

 ◇トルコ南部の避難所、戻った男子高校生9割が死亡か不明

 シリアと国境を接するトルコ南部キリスのシリア人避難所の高校で、男子高校生の9割近い280人が「ジハード(聖戦)に行く」と個別にシリアに戻り、死亡もしくは行方不明になっていることが避難所の高校教諭らの調査で分かった。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)などの武装組織に入ったとみられる。米軍主導の有志国連合による空爆が拡大した昨年秋以降、シリア行きを希望する男子生徒は急増しており、トルコ全体では数千人規模のシリア人高校生が行方不明になっている可能性がある。【キリス(トルコ南部)で大治朋子】

 キリスのシリア人避難所には現在、1万人余りが暮らす。小、中、高校の3校があり、児童・生徒数は計約3500人。日本の高校1年にあたる10年生の男子生徒は、2012年7月時点で計120人いたが、多くが行方不明となり、現在は20人しかいない。80人いた11年生はゼロに、120人いた12年生も20人に減った。トルコには11年以降、シリアの混乱に伴い10カ所余りの避難所が設置されており、状況はどの学校も同様との情報もあり、行方不明の高校生は数千人規模に上る可能性がある。

 調査をしたのは避難所内の高校でアラビア語を担当するメレ・ユンソ教諭(44)ら。「家族の一部にだけ事前に打ち明けるなどしてシリア側に戻り、武装組織に参加している。フェイスブックの更新が突然途絶えたり、同じように戦闘員になった級友からの情報があったりして死亡の可能性を知ることが多い」という。

 生徒たちは、シリアとの間の境界フェンスが壊れている場所や、トルコの警備が手薄な地区から違法にシリア側に侵入。ISのほか国際テロ組織アルカイダ系の「ヌスラ戦線」などアサド政権と敵対する武装組織に入っていると見られる。 ユンソ教諭によれば、子どもたちは日ごろから「なぜ欧米は多数の市民を殺すアサド政権を攻撃せず、アサド政権より市民に信頼のあるISを攻撃するのか」などと、怒りを口にしている。ISはその残虐性で知られるが、彼らが信じるシャリア(イスラム法)を守り、敵対しない市民には危害を加えないため、理想化する若者も少なくない。

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