行きましょう。
えっ?明治大正昭和激動の時代を生きる女性たちの姿を描いた「花子とアン」。
私の腹心の友になってくれて。
最近では「ドクターX」など等身大の女性たちの本音をドラマに描いてきた人が今日の先輩です。
(中園ミホ)おはようございます。
脚本ってみんな見た事ないよね?はい。
じゃあどういうものか見せます。
全156話分の「花子とアン」の脚本です。
初めて目にする本物の脚本は登場人物のセリフでいっぱい。
子どもたちにドラマ作りの魅力を伝えます。
中園さんの母校は東京・中野区にある新井小学校。
「どうやってこういうふうにセリフとか考えるんですか?」ってよく聞かれるんですけれど私の場合は「花子ってどんな人だろう」というふうに例えば「花子とアン」で言うとこういう事を思ってこういう食べ物が好きでこういう人だったんじゃないのかなみたいな事を取材しながらそうやって一人ずつ人間を作っていくんですよ。
私ドラマって誰でも書けると思ってるんですよ。
たくさんは書けないかもしれないけど1つのドラマは必ずみんな書けると思っていて。
それをこれからたっぷり時間かけてみんなと作っていくんだけどみんなそれぞれ一人ずつドラマを書いてもらいます。
ドラマを書く?みんなにねまずねこれはもう中園先生の命令なんで従ってほしいんですけど「致しません」とか言わないで従ってほしいんですけど自分を主役にしてほしいんです。
え〜?自分が主役なの?どうして嫌なの?りょうま君。
りょうま君はどうして自分は嫌なの?え〜何かまだ子どもだからそんな…。
そうか。
でも自分の事が一番よく知ってるよね。
まあ…はい。
例えば今急に指されちゃってちゃんと自分の言葉で今答えたでしょ?それをそのまま書けばドラマになると私は思ってるんですよ。
自分を主役にできそう?でそのタイトルは?はい読んで下さい。
(男子)「この街で過ごす人生最後の一日」。
例えば宇宙船に乗らなきゃいけないのかもしれない。
もうそれで一生ここには帰ってこれないかもしれないし親のお仕事の都合で遠くに行かなきゃいけないかもしれないしひょっとしたら…とにかく大切にこの一日を過ごそうというシチュエーションをまずありありとみんな自分の事に当てはめて考えてもらって。
それで是非やってほしい事は会話を書いてほしいんですよ。
例えば弟さんを登場させてその弟とどんな会話をするか。
自分のお母さんはこういう時どういう言葉を自分にかけるかとかどういう行動を取るか。
それはもう本当にお母さんに怒られてもいいからきれい事書かないで本当にその人がしそうな事言いそうな事それを書くとドラマって出来ちゃうの。
あえて極端な設定にする事で心の奥底にしまっていた本音の会話が飛び出すのでは。
課題に向き合いドラマ作りの開始です。
え〜と自分と妹とお父さんとお母さん。
う〜ん?何を悩んでいるのかな?迷った子どもたち。
中園さんに相談です。
さっきもそういう子がいたんだけど作文苦手だったら…LINEとか。
それでもいいよ。
その言葉でいいですよ。
「ゆり」って頭に書いたとするじゃない?そこにメールの言葉を書いて友達もメールで返してくるっていう。
ずっとそれでもいいですよ。
めいさんは主人公の自分をどう動かせばいいか悩んでいました。
ああきっとかっこいい先生になると思う。
だからかっこいい自分を主人公に物語書いてほしいんだけどちょっとぐらいさば読んで…とにかく必ず自分を書いてほしいんだけど是非走ってるシーンを入れてほしい。
これは私からのお願いです。
次ははるき君。
あれ?すっごい書いてる!すごいすごい。
「春」…春なんだ。
春とお母さん。
はい。
いいじゃないですか。
「春〜っ!早く起きなさい!」。
「うるさいなぁ〜。
今起きるからまっててよ!」。
「春早く食べて勉強して終わったら友達の所でも行って遊んできなさい」。
「はいはい。
朝ごはんぐらいゆっくり食べさせてよ!」。
母さん怖いの?結構。
はい。
怒るとメチャメチャ怖いです。
今これ読んでもすごい生き生きと怒るセリフが生き生きと書いてあったんでいい感じです。
こんな感じで書いて下さい。
もし帰ってこれない事になっちゃったら…すてきすてき。
じゃあそこまでできたら書いて下さい。
はい。
アリサさんは誰を登場させるのか悩んでいました。
お母さんでもお父さんでもいいし先生でもいいし。
ああそうなんだ。
はい。
じゃあ最後の一日とかいったら友達と過ごしたりはしない?いや多分過ごしたりはすると思います。
それがそんなに大勢とうまくやれる感じじゃない…。
はい。
ごく限られた…。
そんなもんだよね。
それはね。
はい。
もういいですか?はい。
ありがとうございました。
ありのままの自分なら誰とどんな会話をしたいのか。
中園さんに背中を押されドラマのイメージが膨らんできたようです。
まあ人間って完璧な人っていないと思っていてみんないろいろへこんでるところとか綻びだとかそういうものがあってすてきな人間だと思うんで。
きっとみんなもそうだろうなと思うしそういう駄目なところを…駄目なところを伸ばすって変な話ですけれどそこも含めて皆さんの個性なんでそういうところをちょっと好きになってもらえたりとかしたら…。
ああそんなふうにできたら本当にうれしいし幸せですね。
新井薬師で育った中園さん。
学校からの帰り道寄り道をするのが楽しみだったそうです。
懐かしいです。
ここを寄り道しちゃいけないんだけど小学校の帰りに寄り道してましたね。
成績優秀学級委員も務めていた中園さん。
しかしその学校でのよい子ぶりは演じていた姿だったといいます。
う〜んいろいろコンプレックスがあったからだと思いますね。
例えばうちすごく貧しかったんですよ。
そういう事だとか父が…当時お酒をすごく飲む父で「これが私のお父さんです」ってみんなに自慢できるようなお父さんではなかったし。
私は大好きだったけど。
何かそういう事とかで恐らくみんなにバカにされないようにと思って勉強はちゃんとやっていたけれどだけど本当の自分はこんなんじゃないんだっていうふうに思ってたような気がしますね。
カメラマンだった父から人生や芸術についてさまざまな思いを学んだという中園さん。
いつしか心の中に浮かぶ言葉を詩に託すようになりました。
「朝起きて学校へ行き帰って来たらボスと遊んでごはんをたべてねる私の毎日はこれのくり返しでも人間ってものはみんなそんなもんだと思う心の中じゃいけないいけないって思ってながらけっきょくそうするしかなくてそのうちお母さんになるそして子どもに言うのさ生きてるってことにいみのある生活をしなさいって」。
人間の心の内に興味を持った少女はいつしか脚本家の道を歩み始めます。
登場人物一人一人の心の底にある本音を見つめ徹底的に紡いでいくのが中園流。
格差社会の中で生きる派遣社員や大組織で闘うフリーランスの女医など今の時代を生きる女性たちの本音を描いた中園ドラマは大ヒットしました。
一番うれしかったのが派遣社員の女の人たちが「よく自分たちがずっと言いたかったけど口にできなかったような事をよくドラマの中で言ってくれました」というふうに感謝されたんですよ。
「そのドラマを見るとすごくすっきりする」って。
「明日からまた頑張って働こうっていう気持ちになる」っていうそういうお手紙とか頂いた時に本当にこのドラマ書いてよかったなと思ったんですよ。
あんまり自分の望んだようにはならない過程とかもっと本当はイメージの中ではかっこいい僕がいるんだけどそうはならない僕とか。
そういう事を駄目な…うまくやれない自分というのを表現してくれるとそれは同じ事で悩んでる人たちを本当に救う事になるんですよ。
子どもたちのドラマが書き上がりました。
夢は体育教師というめいさんが書いたドラマです。
人間関係がちょっと苦手というアリサさんはこんなドラマを書き上げました。
あの〜本当ありがとう。
こんなに一生懸命書いてくれると思わなかったんで感激しました。
実はこのあとちょっとしたサプライズがあるんだけどね。
みんなに味わってほしいのは…。
自分の書いた…みんな自分の知ってる事書けと言いましたよね私ね。
身の回りの事を書いたんだけどだけどそれをそのセリフを人が読んで演じるっていうそれを是非ちょっと体験してほしいんですよ。
中園さん一体どうするんですか?どうぞ。
体育館に用意されていたのは舞台。
これから…だからみんなのいろんな話が組み合わさってるんだけど。
それで役者もすごい役者をそろえましたんでしっかり見て下さい。
ではではお楽しみに。
「この街で過ごす人生最後の一日。
原作新井小学校6年1組。
脚本中園ミホ。
メアリ先生は母校の新井小学校の校長室に呼ばれていました。
校長先生が大事なお話があるとおっしゃるのです」。
突然ですがメアリ先生シンガポールへ行ってみませんか?えっシンガポール?あちらの学校で大至急日本語が話せる体育教師を探しているんです。
行きたいです。
本当ですか?私は11歳の時からシンガポールへ行くのが夢でした。
シンガポールはとても美しい国だと友達から聞いて…。
体育教師メアリはめいさんが作り出したキャラクターです。
(メアリ)是非お願いします。
メアリは母校の小学校で一人の少女葵と出会います。
私明日この街を出ていくんです。
えっあなたも?一人でイギリスに留学するんです。
別れる前にどうしても友達に伝えたい事があって今日しかないんです。
あっしずかちゃん。
遅れてごめん。
はい肉まん。
まさかこれ買ってて遅れたの?まあね。
待ち合わせをしていた少女葵を作り出したのはアリサさん。
キャラクターに託したアリサさんの本音が語られていきます。
それからねずっと隠してた事があるの。
えっ?何?気になるよ。
私友達の前では明るいって言われてるけれど本当は暗い性格なの。
(しずか)うそだ〜!
(葵)友達は結構いると思ってる。
でもねみんながグループを作っちゃうから休み時間とかはほとんど居場所がない気がするんだ。
それからだんだんとグループの中で絆が強くなっていって余計に居場所がなくなってく気がしてさ。
だからしずかと帰る放課後はいつも周りにとらわれないでたくさん話せて楽しかった。
イギリスに留学したらまた周りに合わせて居場所を探さなきゃいけないのかな。
何か憂鬱。
居場所?そんなの要らないよ。
私がいるじゃん。
いつもどおりにしようって言ったの葵だよ。
(葵)痛〜い…。
(一同)行ってらっしゃい。
頑張ってね!「メアリ先生と葵はそれぞれの夢に向かって旅立っていきました。
ご機嫌ようさようなら」。
(拍手)皆さんどうでした?
(男子)面白かったです。
本当?あそことかグッと来ませんでした?ベンチで2人で新井薬師で女の子が2人でしゃべってるとこなんかはある人の作文をそのまま使ってるんだけどみんな分かるでしょ?ああいう気持ちって。
ふだんはあんまり言葉にしたりしないかもしれないけれどそれをしっかり作文に書いてくれた人がいたんであんなにすてきなドラマが出来ました。
あれをきっとちゃんと新井小学校の校庭でロケして照明当てて音楽かけたら本当に泣けるものになると思う。
それぐらいすばらしい。
今みんなが毎日生きてるその時間がすばらしいってもっともっと自分の事を好きになってほしいなと思います。
本当に私も感動しました。
どうもありがとう。
(拍手)あと…何か知らないけど自分の書いたところで泣いちゃったんですよ。
私ね一番なりたくなかった職業が学校の先生だったんですよ。
だからこの番組どうなんだろうと思ったんだけどやってよかった。
本当に。
かわいいですね。
今とてもみんなと別れ難いです。
さあ中園さんこれからどんなドラマを書いていきますか?
(ノックアウトくん)高橋さん。
はい。
今日はまずある中学3年生のクラスのようすを見てもらいたいと思います。
わかりました。
2015/02/06(金) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩「探してみよう!自分のドラマ〜脚本家 中園ミホ〜」[解][字]
連続テレビ小説「花子とアン」の脚本家、中園ミホ。子どもたちに自分を主人公にしたドラマ作りの課題を与えた。果たして子どもたちは どんなドラマを生み出すだろうか。
詳細情報
番組内容
「花子とアン」の脚本家、中園ミホ。『ハケンの品格』『ドクターX』など、女性の本音を赤裸々に描いて、高い評価を受けてきた。「誰にでも必ず一つのドラマは書ける」と考える中園は、今回子どもたちにドラマ作りの課題を与える。主人公は『自分』。そしてドラマのタイトルは、「この街で過ごす人生最後の一日」。果たして子どもたちは、どんなドラマを生み出すだろうか。さらにサプライズ。このドラマが上演されることになった。
出演者
【出演】脚本家…中園ミホ,【語り】室井滋
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – その他
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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