・
(『愛の悲しみ』の鼻歌)
(かをり)・「タンタタンタンタンターンタタンターン」・「タンタタンタ…」
(かをり)うっああっ。
(かをり)うっうう…。
(かをり)くう…痛て…。
あれ?えっ…?えっ?
(救急車のサイレン)・「タンタタンタン」・『ピアノ・ソナタ第8番イ短調K310第1楽章』
(凪)終わりました。
(紘子)ほら行けよ。
先生。
忌憚ないご意見を。
手加減すんなよ。
(公生)ふん。
(公生)フォルティッシモとピアニッシモははっきりさせて。
(公生)休符もしっかり数えて。
眉間にしわがよってる。
姿勢が悪い。
(凪)うう〜。
苦々しく歯を食いしばらない!左手のリズムの流れが遅れてる。
手が小さくてすぐに指が届きません。
手首を動かして弾くんだよ。
1拍目最初の指を小指で弾いてその勢いで手首を使ってこう弾きやすい位置に…。
(紘子)333小節目のペダル変えたら?それでは勝てません。
譜面は完璧です。
すなわち神。
われらは神に仕える下僕。
《こんな子だっけ?》
(紘子)《キャラ変わった?》
(凪)楽譜の指示どおり弾かないなんて勝つことを放棄した人間のエゴです。
《君の人生でありったけの君で真摯に弾けばいいんだよ》楽譜は神じゃないよ。
完璧でもない。
人間が生み落としたとても感情的なものだ。
《だからしがらみのように付きまとう》陳腐ですね。
グサッ!
(凪)そんな甘っちょろいこと言ってるから神から人間に落ちちゃうんだ。
《レッスンまで時間あるな》《最近声聞いてないなーって思って》《あっそうだ。
お菓子買わなきゃ…》《君の好きなカヌレを…》《心の準備もしていないのにいつも君はふいに現れる》あーっ!誰だっけ?《記憶喪失!?》《頭打ったから!?》すみませんねえ。
最近顔見なかったもので。
見舞いにも来ないし薄情者は影も薄い。
これから…。
ねーねー渡君は?渡君待ち伏せしてんだけど。
渡は…まだ学校にいるよ。
さっきまで教室に…。
私は天使のように優しい。
薄情者の君に贖罪のチャンスを与えよう。
君を代役に任命します。
君でいいや。
かばんも大きいようで。
(女性)わーカワイイ!このカワイイの私の〜!私のカワイイの引っ張らないで〜!あの…僕レッスンが。
はっ!カワイイ〜秋の新作だ。
カワイイ!レターセット!メールでいいんじゃない?迷子だー!何で楽しそうなの!?
(アナウンス)迷子のお知らせを致します。
・
(母親)みゆき!
(みゆき)ママ〜!もう〜!あっ。
(みゆきの笑い声)困った人を見つけるとほっとけないのよね〜。
ふんっ。
《嘘つき!》お母さん泣いてたね。
うん。
すごく心配してたんだよ。
でもお母さんやお父さんを泣かせちゃ駄目だよ。
あの子ね手をつないだらぎゅーって握ってくるの。
超カワイイ。
絶対離さないでって感じ。
きっと離したら一人取り残されそうで怖かったんだね。
あっこれ君のジュース。
ああ持たせっ放しだった。
あっ。
あっ。
あ〜あ。
《制服…今日登校したんだな》《僕の心配は杞憂に終わったんだ》あれ?君かばんは?ああっ!取りに行こう。
(鍵盤をたたく音)遅〜い!
(紘子)ピアノたたかない。
公生は来ないよ。
(凪)えっ!?さっきメール来た。
(凪)言ってください!いいんですか?瀬戸先生。
こんな不真面目な態度。
(紘子)あんたさあやけに公生に突っ掛かるけど何で?あっ…ヤダ〜瀬戸先生をとられたくなくて私つい〜。
(紘子)何が目的か知らないけどもし公生に危害を加えでもしたらあたしがぶっ殺してやるわ。
へえ〜愛されてますね。
有馬公生。
あたしの息子だもん。
(凪)じゃあどうして私を迎え入れてくれたんですか?公生に何かをくれると思ったから。
(紘子)《悲しみ以外の何かを》
(凪)敵を信用していいんですか?
(紘子)敵?あんた敵なの?音楽の道を共に歩む者じゃないの?
(小春)ハハハ…ハハハ…。
(紘子)あら上手に描けてんじゃない。
お姉ちゃんにも見せてあげな。
(小春)うん。
(小春)ウフフ…はい!ウフフ…。
(紘子)《悲しみはもうたくさんだ》
(紘子)公生には幸せなピアニストになってほしい。
わあ〜真っ暗。
不気味〜。
かばんを学校に置いてくるなんて二度手間。
アハハハ…。
かばんは?えっと…。
こっちかな?いやこっちだったかな?嘘か!嘘ついたんか!ひいいいい。
かばんは学校にありましぇん。
《そういえば…昼間からかばん持ってなかった》今日登校してたんだよね?今日一日だけ外出させてもらったの。
ごめん。
どうしても学校に来たかったの。
忘れちゃいそうだったから。
僕の方こそごめん。
代役じゃなくて渡がよかったね。
せっかくの一日だったのに。
君は忘れるの?学校を探検した女の子を。
一緒に迷子を助けた女の子を。
病院を抜け出して待ってた女の子を。
君は忘れるの?《その人の心にずっと住めるように》《ここにいる人たちは私たちのことを忘れないでいてくれる》《私…忘れない》忘れない。
死んでも忘れない。
うん。
やっぱり君でよかった。
大丈夫?ちょっと疲れちゃった。
学校の備品で2人乗りはまずいね。
バレたら怒られるね。
ごめんねレッスン。
平気だよ。
紘子さんだし許してくれるよ。
無駄な一日なんかじゃないよ。
このまま時間が止まっちゃえって思うくらいすてきな一日だった。
ありがとう。
お買い物して夜の学校を探検して男の子に送ってもらう帰り道はこんなに星がキラキラしてるんだね。
肌寒いせいかな。
交わす言葉が温かい
余計に君を近くに感じる
渡の代役でも何でもいい
ずっとこのまま…
僕はその涙の訳を聞けなかった
遅い。
そこ一気に弾かないからテンポがずれる。
(凪)《イラッ!やってんじゃん。
目いっぱい速く弾いてんじゃん》
(凪)《これ以上できるか》だからこんな感じで。
・
(演奏)こう。
この機械野郎がー!さらっと弾いてんじゃねー!
(凪)《フ…フフフ…》
(紘子)じ〜。
はっ。
聞いてた?はっはい!
(凪)《無能は嫌い》じゃちょちょいとやっちゃおう。
(凪)《有馬公生はもっと嫌い》
(さつき)凪〜上山先輩振ったんだね。
(小麦)もう何人目よ。
(凪)だって文系眼鏡野郎嫌いだもん。
(さつき)それより学祭の演目決めたの?
(凪)まだ。
(小麦)学祭11月だよ。
そろそろ準備しとかないと。
(さつき)外からゲスト呼ぶのもありなんでしょ?OBとか。
(小麦)三池君は大物呼ぶらしいよ。
(凪)今はそれどころじゃないよ。
(凪)《有馬公生…あいつをどうやって屈服させるか》《フフッフフフ…》
(さつき)おぞましい腐臭。
(小麦)だだ漏れだ。
(小麦)でもうちの学祭といえば成績上位者がユニークな演目を準備するって注目されてるんだよ。
(さつき)凪が燃えそうなシチュエーションじゃん。
(凪)《成績上位者…》《そうよ。
私は胡桃中のエンジェル》《それなのに…》
(小麦・さつき)天狗!
(凪)《何で怒られなくちゃいけないのよ!》速い!速く弾こうとして上滑りしてる。
それじゃフォルテにならない。
(凪)う…う…。
うわ〜ん!ああ逃げちゃった。
・
(紘子)追い掛けな。
えっ?あんたの役目よ。
公生。
(凪)《しょうがないじゃん。
手が小さいんだから》
(足音)・ハァ…ハァ…ハァ…。
紘子さんの言ったとおりだ。
(凪)ふん!あっ。
あの…ごめんね。
その…人に教えるの初めてで。
これおわびに。
(凪)《芋で懐柔されるか!》おいしそうだよ。
とろとろだよ。
紅あずまだよ。
(凪)んーっ!はっ!
(凪)《芋に膝を屈しちゃった》ここよく来るの?昔よく遊んでもらったんです。
私のヒーローに。
(男の子)《早く来い凪!置いてくぞ!》
(凪)《待ってよー!》
(凪)もともとピアノもその人が始めたんです。
だからその人を追い掛けて私も。
好きなんだ。
(凪)でもその人は私以外の人に夢中なんです。
そのせいで今迷って悩んで真っ暗な心の迷路にいる。
だから気付いてほしい。
私がいるって。
私のピアノで…。
(凪)《何でこんなこと話してるんだろ》《よりによってにっくきピアニストに…》不純な動機でしょ?きっかけなんてそんなもんさ。
(凪)《誰かに吹き飛ばしてほしかったのかもしれない》《ピアノに対する負い目を》
(公生・凪)じゃんけんぽん!
(凪)パイナツプル。
いきますよー。
(公生・凪)じゃんけんぽん!
(凪)有馬先生は好きな人いないんですか?いないよ。
(凪)嘘です。
いるって顔に書いてある。
どんな人なんですか?そんなはずないよ。
だってその人は僕の友達を好きな女の子なんだ。
(凪)それって諦める理由になるんですか?ん…。
(凪)グリコ。
愛より友情ですか。
陳腐です。
うんそうだね。
でも僕にはこれが精いっぱいなんだ。
(凪)チヨコレイト。
(凪)どんな人なんですか?その人はねジェットコースターみたいな人なんだ。
泣いたり笑ったり。
僕は振り回されてばかり。
その人がいるだけでモノトーンだった世界がカラフルになるようなとてもまぶしくてとても強い人なんだ。
こらー!カヌレ忘れたんかー!薄情者!約束してたのにー!売り切れてたんだよ!
(渡)俺がおいしい甘味を買ってきたよ。
まあ渡君。
(柏木)確かに有馬はたるんでる。
中学1年の女の子にピアノを教えてるんだって。
(渡・椿)はあ!?
(渡)見損なったぞ紹介しろ!
(椿)何で柏木がそんなの知ってんの!?椿に相談したって女の子の機微は分からないだろ?今何つった?ごめんなさい。
なめとんのかー!紘子さんに押し付けられたんだ。
僕だって嫌なのに。
キスマーク!
(渡)あっ!
(椿)よからぬことしてんのはお前だー!ギャー!どんなレッスンしてんのよ!ずるいぞ公生。
抜け駆け。
人に教えてる暇なんか君にあるの?いやだって紘子さんが…。
また言い訳。
女の子とイチャイチャする時間なんてないでしょ!そんな暇あるならもっと練習にあてたら?一生懸命教えてるよ!家に帰ったら自分の練習もしてる!それじゃ足りないって言ってんの!ちょっ…。
教えてる時間無駄にしてるじゃん!他の人はもっと練習してるよ!危機感がないんだ!だからじゅうぶんやってるよ!じゃあもっとやりなよ!じゅうぶんなんてない!12月にはコンクールが始まるんだよ!まだ時間があるとでも思ってんの!?あっという間に…。
あれ…。
アハハ…何か変なスイッチ入っちゃった。
ごめん。
ごめんなさい。
・
(ピアノの演奏)
(凪)《ウフフお前の信用は地の底まで失墜するぞ》《有馬公生》
(さつき)ねえ何かいいことあった?
(凪)えっ何で?ピアノの音がスキップしてる。
音がスキップするわけないじゃん。
そう言われるとそうなんだけどさ。
でも…うん。
やっぱスキップしてる。
《僕の友達を好きな女の子なんだ》
(凪)《あんなかい性なしじゃ駄目ね》《絶対報われない》《ちょっとだけほんのちょっとだけ似ているかもしれない》《あがいても報われない相手を追い掛けて見詰めて恋い焦がれている》《私は有馬公生をたたきつぶそうとしている》
(凪)《崇高な犠牲》
(凪)ただいま〜。
(凪)《見返りを求めぬ愛》・おうおかえり。
(武士)早かったな。
凪。
(凪)《われはファントム。
オペラ座に潜む怪人》ただいま。
お兄ちゃん。
やあ。
お見舞いは?あっ。
忘れた。
ごめん…。
心配して来てくれたんだ。
変だったもんね私。
《似てない》《はじかれたように笑ったりささいなことでヒステリックにわめいたり突然泣きだしたりすごく優しくなったり何かを諦めたり僕の近くにいた人がそうだった》《似てない。
似てなんかいない》《嘘だ。
嘘だ。
嘘だ》あなたって本当に変な人。
病院にお見舞いに来たのにずーっと黙り込んでいるんですもの。
あたしと心中しない?2015/02/06(金) 02:29〜02:59
関西テレビ1
四月は君の嘘[字]【ピアノが弾けなくなった元天才少年と美女ヴァイオリニストの物語】
紘子に弟子入りした凪を指導する事になった公生。戸惑いながらも、徐々に先生らしく振舞うようになる。そんな中、入院しているはずのかをりが公生の前に現れる…
詳細情報
番組内容
母の死をきっかけにピアノが弾けなくなった元天才少年・有馬公生。
モノクロームだった彼の日常は、1人のヴァイオリニストとの出逢いから色付き始める。
傍若無人、喧嘩上等、でも個性あふれる演奏家・宮園かをり。
少女に魅せられた公生は自分の足で14歳の今を走り始める。
第37回講談社漫画賞を受賞した「青春×音楽×ラブストーリー」!
出演者
有馬公生: 花江夏樹
宮園かをり: 種田梨沙
澤部椿: 佐倉綾音
渡亮太: 逢坂良太
井川絵見: 早見沙織
相座武士: 梶裕貴
スタッフ
【原作】
新川直司(「月刊少年マガジン」連載中/講談社)
【監督】
イシグロキョウヘイ
【シリーズ構成・脚本】
吉岡たかを
【キャラクターデザイン・総作画監督】
愛敬由紀子
【音響監督】
明田川仁
【音楽】
横山克
【アニメーション制作】
A−1 Pictures
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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