(ハドソン夫人)シャーロック!シャーロック!
(ホームズ)何ですか?こんな時間に。
ねえ聞いた?殺人事件よ!
(ワトソン)殺人事件?ご近所で殺人事件が起こったんですって!もうびっくり!詳しく話して下さい。
うちの学校の裏に大きなお屋敷があるでしょ?アメリカ人のダグラスさんっていうご夫婦が住んでるの!そこのご主人が殺されちゃったのよ!それはいつの事ですか?分かんないけど今警察の人がいっぱい来てるわ。
ワトソン行くぞ!ちょ…ちょっと待って。
見に行くって事?こんなチャンスはめったにない!だって8時以降の外出は禁止だぞ。
規則が何だ!本物の殺人事件なんだ!だ〜…。
ちょちょ…ホームズ!もう…だから8時以降は…。
異常ありません。
こちらも異常なし。
やめようよ…。
シーッ!中に入ってみよう。
それはまずいよ。
こんなチャンス一生に一度だ!そんなに見たいかな…。
見回りに行ってきます。
現場はあっちらしい。
・
(マクドナルド警部)そこで何をやっている。
この家の者じゃないな。
どこから入ってきた?えっと…あのそれは…。
答えなさい。
(ホープ)ホームズ何やってるんだ。
早く仕事に取りかかるんだ。
君は…。
今やろうとしてたんです!ひと言多いんだよな。
ワトソンを見習え。
そうだよ見習え!マクドナルド警部すみません。
こいつらうちの従業員なんです。
そうなのかね。
何から始めればいいんですか?掃除に決まってるだろ。
よしやっちゃおう。
そうだなやっちゃおう。
ここね…ここよく汚れてる。
汚れてるな。
書斎は事件現場なので近づかないように。
(ホープ)承知しました。
はあ…ジェファーソン・ホープ!こんな所で会えるとは思わなかったよ。
ワトソン。
ホームズ。
ジェファーソン・ホープは僕がこの学校に転校して最初に遭遇した腐ったゆで卵にまつわる事件の犯人だ
彼はあの事件の責任を取って学校を辞めていた
今は美術品専門の運送会社で働きながら本格的に彫刻を勉強してるよ。
それは良かったね。
うん。
アハハ…。
(ホープ)今日はこの絵の事で呼ばれて来たんだ。
う〜ん…この屋敷に来たのは初めて?前にも一度。
主人に会った事は?あるよ。
あまり品がいいとはいえなかった。
左の薬指に見た事もないようなごっつい金の指輪をしてた。
しかも結婚指輪の上にだよ。
イギリス人はあんなおしゃれはしない。
きっとアメリカ人だ。
それより君たちはここで何をしてるの?えへ…殺人事件の現場を見学に来たんだ。
やっぱり…。
そんな事だと思った。
現場は書斎らしいね。
うん。
その絵はもともと書斎に飾ってあったはずだったんだけど奥さんからそこに飾ってほしいってさっき言われたんだ。
僕はこの部屋には合わないと思うんだけど。
確かに。
お金持ちの考える事は分からない。
絵を飾る前にあの金庫を何とかしろって話だよ。
何であそこに置くかな。
それじゃお先に。
君らもあんまり長居しない方がいいと思うよ。
そうする。
会えてうれしかったよ。
僕もだよ。
じゃあ。
まるで別人だね。
自信をつけるって大事な事なんだな。
さあいよいよ事件現場だ。
あ〜…。
(マクドナルド)となるとやはり物取りの可能性が高いか。
と思われます!
(マクドナルド)物音に気付いて寝室から下りてきた被害者はここで賊とばったり鉢合わせ。
賊は銃で被害者の頭を撃ち抜き逃亡か。
・
(扉が開く音)はっ…ワトソン!
(警官)表に怪しい足跡を発見しました!
(マクドナルド)何!よし…。
警察バッジ?それ…うわ〜!ちょっと…。
うわ〜…。
死んだ人を見るの初めてだ。
君はあるの?ない。
やめようよ。
うっ…。
散弾銃か何かで撃たれたんだろう。
顔がぐちゃぐちゃだ。
あっち行ってていいかな?おや。
触っちゃ駄目だよ!これを見て!嫌だよ…。
妙だな。
ちょっとホームズ行こう。
ホームズ…。
ちょっと…こら行こうって。
何だよ…。
ホームズ!ちょっと…。
・
(ダグラス夫人の鼻歌)
(ダグラス夫人)捜査の方は終わられましたか?あ…ええ。
あなたたちは?警部に頼まれて捜査を手伝っているんです。
ああそうなんですか…。
ダグラスさんの奥さん?そうですけど…。
一つ伺いたいんですが。
失礼します。
行こう。
(マクドナルド)おい君たち作業はもう済んだのか?ああ…いえ。
こちらの方は異常ありません警部!
(マクドナルド)何をお巡りさんぶってるんだ。
作業が終わったら早く帰りなさい。
待って警部さん。
この人たちは警察の方じゃないの?もちろん違いますよ。
(ダグラス夫人)まあ…。
君らは何者だ?ひょっとして…。
逃げろ!お邪魔しました!
(マクドナルド)おい!はあ…。
どう思った?学校に知れたら絶対に問題になる。
事件についてだよ。
僕はあの奥さんが怪しいと思う。
だって旦那さんが亡くなったのに一人でくつろいでたんだよ。
絶対おかしいよ。
そうかな。
殺したのは奥さんだ。
旦那さんがいなくなったんでほっとしてたんじゃないかな。
何してるの?えっと…これでいいだろう。
えっと…よしこっち。
ホームズ?悪いけど僕を押さえてくれるかな。
こんな感じ?ありがとう。
よっ…。
何?これ。
はっ…あったぞ!
(モリアーティ教頭)シャーロック・ホームズ!やはり君だったか。
モリアーティ教頭。
マクドナルド警部から連絡を受けた。
事件に首を突っ込む困った生徒がいるとね。
教頭先生話はあとです。
ワトソン!しっかり押さえてろ。
これ以上無理だよ!教頭先生手伝って!なぜ私が?僕をしっかり押さえてて下さい。
早く!お願いします!うわ〜!ちょっと早く!思ったとおりだ!どういう事?これ誰の服?そ…その前に私に礼はないのか。
あありがとうございました。
これで事件は解決だ。
君は何でここに沈んでるって分かったの?あとで話す。
教頭先生僕は行かなきゃいけません。
どこへ?警部の所へです。
違う!君は私と一緒に学校へ戻るんだ。
真犯人が分かったんです!それを伝えるのは市民の義務です。
(モリアーティ)ホームズ!市民の義務なんですいません!ワトソン!
ワトソンメモ
僕らが初めて遭遇した本物の殺人事件
それは学校の事件とは全く違っていた
奥さんや警察の人は何を考えているのか全然分からないし場違いな所に来ちゃった感じ
でもホームズはいつもように謎を解いたらしい
さすが僕らの名探偵だ
まっ僕は奥さんが怪しいと思うんだけどね
もういいから帰りなさい。
待って下さい。
僕は事件の謎を解いたんです。
捜査は我々警察に任せて。
話を聞いてもらえませんか?ホームズは名探偵なんです。
名探偵か何だか知らんが子供の思いつきにいちいち耳を傾けるほど私らは暇ではない。
僕は真犯人を知ってるんだ!
(マクドナルド)連れ出せ。
(警官)ほら行くぞ。
おい離せ…くそ!ホームズ!話だけ聞いて下さい。
やめろ。
(モリアーティ)マクドナルド警部。
(マクドナルド)誰だね。
(モリアーティ)先ほど電話でお話を。
ビートン校教頭のモリアーティと申します。
(マクドナルド)早くこの子たちを連れて帰って下さい。
捜査の邪魔をしてしまい大変申し訳ありませんでした。
このホームズという生徒は学業そっちのけでやたら学内で起こる事件に首を突っ込み私もほとほと手を焼いておるのです。
(マクドナルド)お察しします。
(モリアーティ)ただ真実を見極める直感と論理的に考えを組み立てる能力は確かに優れており彼を名探偵とたたえる者も少なくない。
どうでしょう。
せっかくなので彼の話を聞いてみるというのは。
教頭先生。
(モリアーティ)捜査の参考になるのではないかと。
うん…。
教頭先生がおっしゃるのなら聞いてみる価値はありそうですな。
(モリアーティ)ホームズそういう事だ。
君の推理を端的にお話しするように。
いいんですか?早く!遺体を見てまず気になったのがこれです。
薬指の指輪。
ダグラスさんは左手の薬指に指輪を2つはめていました。
結婚指輪そしてその上に金の指輪。
(マクドナルド)何で知ってる?彼に会った事のある出入りの業者に聞きました。
(マクドナルド)奥さん間違いないですか?ええ。
ところが遺体の左手の薬指には指輪が1個しかない。
高価な金の指輪です。
犯人はなぜ結婚指輪だけを持ち去ったのか。
(マクドナルド)金の指輪はきつくて抜けなかったんじゃないか。
それはありえません。
結婚指輪は金の指輪の下にはめていたんです。
犯人はまず金の指輪を抜いてそれから結婚指輪を抜きそしてもう一度金の指輪を戻した事になる。
一体なぜそんな事をしたんでしょう。
(マクドナルド)さっぱり訳が分からない。
次。
僕はこのダンベルに注目しました。
ダグラスさんが使っていたものです。
おかしな事にこの2つのダンベル重さが違うんです。
こっちはこっちの半分の重さしかない。
とても不自然です。
このダンベルはおもりの調節ができるタイプです。
こっちのダンベルからいくつかおもりが抜き取られている。
ではダンベルのおもりはどこにいったのか。
思いつくのは何かのおもしにして沈めたか。
このお屋敷の裏庭にはおあつらえ向きの池。
そして僕は先ほどそこの池でこれを発見しました。
ワトソン君。
ああ…これです。
ポケットの中にはおもりが入っていました。
そして「T.B」のイニシャル。
これはダグラスさんの服ではない。
これで全てがつながりました。
(マクドナルド)どういう事だ?ここまで聞いても分かりませんか?
(マクドナルド)大人をからかうな。
全てがこの事件の真犯人を示しています。
犯人は…。
ダグラスさんです。
はっ…。
ばかを言うな。
ダグラスさんは被害者だ。
彼は生きています。
ええっ…。
実際にあったのはこんな事でしょう。
深夜ここに忍び込んだ賊は銃でダグラスさんを殺すつもりだった。
そこにダグラスさんが現れる。
2人は書斎でもみ合う。
銃が暴発したのか死んだのは賊の方でした。
なぜダグラスさんが賊と入れ替わろうと思ったかは僕には分からない。
推測ですが彼は他からも狙われていたんじゃないでしょうか。
だから死んだ事にして姿をくらまそうと考えた。
死体の顔が判別できないのをいい事にダグラスさんは死体の服を脱がせ自分のガウンを着せた。
指輪を外し死体の左の薬指にはめる。
しかし結婚指輪はどうしても外したくなかった。
奥さんを愛してらっしゃるんですね。
そしてダンベルからおもりを抜き取るとジャケットのポケットに入れて池に沈めたんです。
奥さんは全てをご存じのはずです。
物音を聞いて起きてきた奥さんにダグラスさんは全てを打ち明けたんでしょう。
ワトソン夫人が悲しんでるように見えなかったのはご主人が生きているのを知っていたからさ。
そうだったのか。
しかしだとしたらダグラスさんはどこにいる?まだこの屋敷の中にいるはずです。
ほとぼりが冷めるまで隠れているつもりなんでしょう。
ひょっとしてもうどこだか分かってるの?こちらです。
もちろんこの絵を購入した時はダグラスさんもこんな事になるとは思ってもみなかったはずです。
この絵はもともと書斎に飾られていたのになぜか外され今夜奥様の希望で業者がここに掛け替えました。
殺人事件があったその夜に模様替えというのもおかしな話です。
もしかしたらここに絵を掛け替えなければならない理由があったんじゃないでしょうか。
(マクドナルド)そうか…。
おい絵をどかすんだ!
(警官たち)はっ!せ〜の…。
もともとは金庫をしまうために作られた空間だったんでしょう。
ね?奥さん。
ああ…。
ダグラスさんここまでです。
皆さんお待ちですよ。
(マクドナルド)おお〜!
(ダグラス)えへ。
どうも。
(ダグラス夫人)あなた!あなたあなた…あなた…。
(ダグラス)いや〜狭かった。
(ダグラス夫人)あなた…。
(ダグラス)見てるから。
みんな見てるからやめなさい。
あとであとであとで。
(マクドナルド)ダグラスさんですか。
そうです。
私がダグラスです。
(マクドナルド)では書斎の死体は?
(ダグラス)テッド・ボールドウィンです!
(マクドナルド)一体何があったんです?
(ダグラス)分かりました。
こうなったら全てをお話致しましょう。
(モリアーティ)その前によろしいですか。
私たちはこれで。
え?待って下さい。
行くぞホームズ。
もう十分だ。
知りたい事はまだ山ほどあります。
テッド・ボールドウィンは何者か。
なぜダグラスさんは狙われたのか。
アメリカで一体何があったのか。
(モリアーティ)そんな事はどうでもいい。
今何時だと思ってるんだ!あの…話長くなりそうですか?
(ダグラス)うん…長編小説の半分くらいはあるかな。
お邪魔致しました。
さあ!
(ダグラス)いずれ体験談出すからさ。
それ読んでみてよ。
あの警部手柄を自分のものにしちゃうのかな。
お前がいくらしゃしゃり出ても警部は相手にしなかった。
だが私が間に入ると途端に聞く耳を持った。
世の中というのはそういうものなのだ。
己の小ささを思い知れシャーロック・ホームズ。
(モリアーティ)お前は学校から一歩でも外に出れば名探偵でも何でもないただの小生意気な小僧に過ぎんのだ。
そんな事は分かっています。
ちなみに我が校は夜8時以降の外出を禁じている。
君らは校則を破った。
1週間の謹慎だ。
ワトソンは許してやって下さい。
僕が強引に連れてきたんです。
いいんだよホームズ。
お願いします教頭先生。
ワトソンお前は謹慎3日。
ホームズ…。
それでいい。
死体って気持ち悪かったな〜。
ね。
はあ…。
今から思えばこの夜が始まりだった
それはやがて僕の親友シャーロック・ホームズが学校を去るきっかけとなった大事件に発展していくのだがまだ僕らはその事を知らない
2015/02/06(金) 00:00〜00:20
NHKEテレ1大阪
シャーロックホームズ「ダグラスさんのお屋敷の冒険」[字][再]
三谷幸喜が推理小説の古典を学園ミステリーとして脚本化。15歳の少年・ホームズとワトソンが学園内で起こる奇妙な事件のなぞを解く。今回はダグラス邸事件のなぞを解く。
詳細情報
番組内容
三谷幸喜が推理小説の古典を学園ミステリーとして脚本化。15歳の少年・ホームズとワトソンが学園内で起こる奇妙な事件のなぞを解く。夜中、ハドソン夫人がホームズとワトソンの部屋に飛び込んでくる。学園の裏にあるダグラス邸で殺人事件が起きたというのだ。殺人事件と聞いていてもたってもいられなくなったホームズは、ワトソンとともに寮を抜け出しダグラス邸に忍び込む。警察の目を盗んで早速捜査を開始するが…。
出演者
【声】山寺宏一,高木渉,堀内敬子,江原正士,関智一,小松史法,藤野泰子,三谷幸喜,妻夫木聡
原作・脚本
【脚本】三谷幸喜
ジャンル :
アニメ/特撮 – 特撮
ドラマ – その他
趣味/教育 – 幼児・小学生
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