(カメラのシャッター音)
(シャッター音)
(西山百合子)札幌雪祭りの人出は延べ200万。
雪像は毎年世界の有名な建築物を模して作る雪祭りのシリーズのようなもの。
(石原剛)いやぁ壮観だなぁ!私も札幌の放送局に勤めるようになってよかったことっていえば雪祭りを毎年見られることかな。
(狩矢和美)百合子!トレビの泉と写真撮るから寄って!ちょっと!講師邪魔!えっ?邪魔?美しい雪祭りと私の大親友で美しい札幌放送局の女子アナを撮るの。
だから講師は邪魔!講師講師って言うなよ…。
石原くんと和美は相変わらずね。
なにが「札幌を案内してやる」よ。
嘘ばっかり。
本当は百合子と会いたかっただけなんじゃないの?妬いてくれんだ?もう京都に帰っていいわよ。
はい!笑ってぇ!
(和美)女子アナ・西山百合子のますますの活躍を祝って。
和美のカメラマンとしてのこれからの前途を祝して。
(石原)あの…私は…?
(百合子)石原くんは…いつの日か教授になるその日を祈って。
ものごとには順序があるからまずは助教授ね。
とにかく私たちの夢に向かって乾杯〜!俺はさ教授や助教授よか和美の婿になりたいな。
その夢は却下!
(石原)せめて保留にしてよ…。
乾杯〜!
(石原・百合子)乾杯!
(時計台の鐘の音)
(シャッター音)おい和美。
アイスコーヒーになっちまったよ。
まもなくコーヒーシェイクだぞ。
うぅさぶっ…!帰っていいわよ京都に。
またもう…。
誰も札幌までついてきてって頼んでないもの。
わかりましたよ。
待ちますよ!
(シャッター音)講師っ!だから講師じゃなくって僕には石原剛って名前がちゃんと…!ちょっと講師。
これ…。
あ?なんだ?雪だるまか?あ…血だっ!和美っ…!
(シャッター音)
(シャッター音)
(池上警部)ずいぶん早くから来てたんですね。
朝日の中まだ誰もいないところを撮りたかったものですから。
会場付近で誰か不審な人物などは…?いいえ…見なかったわよね?ええ。
見ませんでした。
そうですか。
で…お二人は京都から?はい。
雑誌の取材で札幌雪祭りの模様を。
僕は彼女のそのぉ…。
友人です!・警部!被害者のものと思われる所持品の中にこんな物が。
(携帯電話の音)もしもし。
…お父さん!?
(狩矢警部)どうだ和美?いい写真は撮れてるか?札幌は寒いだろう?「当たり前」?お前そんな…。
雪は降ってるのか?今ちょっと取り込み中なの。
(狩矢)「取り込み中?何かあったのか?」
(池上)離婚届か…。
「野田秀一」「野田美奈子」野田秀一って…うちの大学の教授だ。
あなたの?石原くんの大学の人なの?ああ。
たしか野田教授は…量子物理学の教授です。
あっちなみに私は野田教授とは畑違いの農学部の講師でして。
そうですか。
至急京都府警に連絡。
(狩矢)「和美!和美っ!!」そうだ…!
(狩矢)「和美!返事しなさい!今男の声がしたぞ!」「誰だ!?その石原とかいう男は!!」和美!お前仕事で札幌に行ったんじゃなかったのか?その…石原ってのは何だ?お前な嫁入り前の娘が…まさか…二人っきりで旅行…?おい和美!取り込み中っていったい何してんだ?えっ!?殺人事件なの。
聞いてる?えっ?あ…ああ。
殺された女の人は京都の女の人らしいの。
京都洛陽大学の教授・野田秀一って人の奥さんで野田美奈子さん。
なんだって!?
(電話が切れる)おい…和美っ!
(ため息)本当にその野田教授って人のことなんにも知らないの?うん知らないよ。
同じ大学っていったって学部が違えばぜんぜん関係ないし。
そういうもんなの…。
今京都府警に調べてもらってます。
いやぁそれにしても驚きましたな!あなたが京都府警の狩矢警部のお嬢さんだなんて。
あの…会場のライトが消されるのは何時なんですか?午後10時ですが。
ということは…死体が会場に運ばれたのは…10時以降ですね。
初め見つけたとき雪だるまかと思ったけどあれは死体に雪が降り積もったんだわ。
まあおそらくは午後10時以降に会場で殺されたのかあるいはどこかほかの場所で殺されて運ばれたんでしょう。
(池上)被害者は野田美奈子35歳。
解剖の結果死亡推定時刻は事件前夜の午後9時前後。
財布や宝石は盗られていないので強盗のセンはまずない。
被害者は札幌に何しに来てたんです?観光ですかね?遺留品の中に入場券の半券などの観光の痕跡はない。
被害者が札幌へ来た目的は不明。
が…おそらくそこが事件の鍵となりそうだ。
それともう一つ!被害者は夫婦のサイン及び印鑑を押した離婚届を持ってた。
何のためにこんな物を持って札幌に来てそして殺されたか?
(野田秀一)美奈子…。
美奈子っ!どうして…?
(泣き声)野田先生。
あなたは京都の洛陽大学に籍を置いてなさるが月に1回札幌の大学でも講義をしてらっしゃいますね?はい…。
(池上)何年ほど前からですか?もう3年になりますか…。
ということは札幌についてかなり土地勘がある。
…ちょっと待ってください。
私を疑ってるんですか?奥さんの美奈子さんの所持品の中にこのような物が。
離婚届…?とっくに役所に出したものだと…。
離婚について揉めたりしたようなことは?いえ…。
私たちは円満に夫婦同意で離婚を決めました。
この届けも美奈子が出しておくと言ってたので…。
(池上)奥さんが札幌に来ていたことはご存知でしたか?いいえ。
私たちは離婚を決めたんです。
彼女がどこに旅行しようが私に知らせる義務もなければ別に私も知りたくもありません。
そういうもんですかね…。
もともと彼女は気まぐれなところがありました。
今までだって気に入らないことがあれば突然友人のお宅に泊まりに行ったり旅行に出たりで…。
なるほど。
ところで事件当夜つまり奥さんが亡くなられた日あなたどこにいらっしゃいました?京都の自宅にいました。
学会が近いので論文の準備があり一日中家にいました。
誰かそれを証明できる方は?あいにく一人でしたので…。
(池上)困りましたな。
そうだ…出前を取りました。
昼間ピザで夜は寿司を。
ほぉ…出前ね。
警部!野田はシロですね。
アリバイの裏取れました。
ピザ屋も寿司屋も確かに配達したと言ってます。
(池上)いやぁ狩矢警部。
いろいろご協力ありがとうございました。
…ちょっとお待ちください。
なに札幌に…?あ狩矢警部。
恐れ入りますがもう一つだけお願いがあります。
「柳沢高志」という男を至急洗っていただきたいんです。
わかりました。
すぐに調べます。
至急この「柳沢高志」という人物を洗って。
(池上)被害者・野田美奈子さんとの愛人関係を認めるんですね?
(柳沢高志)…はい。
札幌にはいつ来ました?
(柳沢)おとといの夕方です。
彼女がどうしても雪祭りを見たいと言って。
彼女に誘われて2泊3日の旅行の予定でした。
札幌で落ち合う約束で。
で僕は…約束の8時にホテルで待ってました。
でも美奈子は現れなかった…。
それで被害者の携帯に何度も…?…はい。
今朝のニュースで美奈子さんの事件を知ったはずなのになぜ警察に連絡をしてこなかったんですか?それは…彼女との関係には後ろめたさが…。
あなたは被害者のご主人野田氏と同じ大学の助教授だ。
美奈子さんはご主人と離婚する気だったようだがあなたが原因だったんじゃないんですか?そして美奈子さんはあなたとの再婚を迫りあなたはスキャンダルを恐れてそして…殺害した。
僕は美奈子を殺してなんかいない…!勝手な推測はやめてください!ホテルのアリバイ調べてください!わかりました。
早速調べましょう。
ほぉ〜!
(狩矢澄江)まぁおいしそう。
お父さん。
それで捜査のほうはどうなってるの?野田秀一はシロなの?また新たな容疑者が上がった。
野田と同じ大学の助教授で柳沢高志っていう男だ。
柳沢高志…?うん。
柳沢さんって…和美もしかして…?なんだ?お前知ってるのか?おい。
和美の知り合いか?ええ…。
和美の高校時代のボーイフレンドだったのよね…。
…ボーイフレンド?柳沢高志がお前のボーイフレンド?和美いいか?そいつは教授の奥さんと不倫しておまけに殺人の容疑者なんだ!やめて!柳沢さんは不倫なんかするような人じゃないわ。
第一殺人なんて絶対なにかの間違いよ!被害者のバッグからは柳沢の指紋が検出されてるんだ。
柳沢の主張するアリバイだって証言者がいないんだ!証言者がいないからアリバイがない?そんなの捜査の怠慢よ!捜査のタイ…?…和美いいかしっかりしろ。
だいたいお前は男を見る目がないんだよ。
だから一緒に札幌に行ったなんだほら…石原かそいつだってきっとろくな男じゃないんだよ。
私に男を見る目がないとすればそれはお母さんの遺伝よ!
(澄江の笑い声)…おい!どういうことだ?なんだあの口のききかたは。
娘が親に向かって!柳沢さんはただのボーイフレンドじゃないんです。
和美の…初恋の人だったの。
初恋…?
(石原)こいつが柳沢?警察のほうで今わかってることは被害者の美奈子さんは離婚届を持っていた。
…信じたくもないけど柳沢さんと美奈子さんはやっぱり不倫関係にあったらしいわ。
本人も認めてるって。
教授の奥さんと不倫か…。
この助教授も結構やるな。
柳沢さんは美奈子さんの殺害当時札幌にいたの。
美奈子さんの夫の野田教授は美奈子さんの父親に見込まれた婿養子で美奈子さんの死で相当の遺産を手にするんだって。
だったら…やっぱり野田教授が怪しい。
ううん。
ところが野田教授には犯行時のアリバイがあるのよ。
離婚も円満に決まってることから遺産狙いは考えられない。
警察ではシロと見られているの。
(石原)じゃあやっぱり不倫相手の柳沢か?不倫不倫って言わないでよ!和美…。
柳沢先輩はそんな人じゃない。
殺人犯なんかじゃないわ。
私が先輩の無実を証明してみせるわ!・
(犬の吠える声)そうでしたか。
あなたが美奈子を発見してくださった…。
すみません。
大変なときに突然押しかけて…。
チャッピー静かにしなさい!奥さんのことお悔やみ申し上げます。
離婚するつもりだったんですがやっぱりショックですね。
殺されるだなんて…。
あの…美奈子さんが誰かに恨まれているようなことは?美奈子がですか?そんなことはないと思います。
ずいぶんわがままな女でしたが人に恨みを買ったりはしません。
そうですか…。
そういえば…。
なにか?土地のことでなにか揉めてたなぁ。
土地のこと?借地人との間になにかトラブルがあったようで。
詳しく教えていただけませんか?あいや…。
美奈子が母親から譲り受けた土地で私はよく知りません。
そうですか…。
申し訳ないんですが…そっとしておいていただけませんか?美奈子は私にとって生涯一度は共に生きようと決めた相手です。
いろいろあって別れる選択はしましたがそれは…美奈子の幸せを十分に考えた上での選択なんです。
それがこんなことになってしまうなんて…。
警察は私を疑ってたようです。
正直…今とても疲れてます。
(犬の吠える声)チャッピー!静かにしないか!
(吠える声)・ごめんください!中村です!資料をお持ちしました!
(野田)研究室の中村くんです。
(中村麻美)はい先生。
(野田)ありがとう。
チャッピー!元気ぃ?中村さんはチャッピーのことよほどかわいがってるんですね。
私にはあんなに吠えたててたのに中村さんには甘えてる。
妻は旅行が好きでした。
旅行で留守にするとき中村くんにチャッピーの世話を頼んでいたようです。
そうですか。
よく一緒に留守番したわよね?チャッピー。
狩矢さん。
さっきの土地の話ですけど…弁護士の先生なら知ってるかもしれません。
妻の財産管理などすべて任せていた人です。
(弁護士)借地人は北田昇次。
その土地はもともと美奈子さんのお母さんの土地でね。
借地人だった北田が勝手に賃貸マンションを建てましてね。
美奈子さんはお母さんの死後その土地のことを知り自分が相続すべく北田昇次とは5年近く揉めていましたね。
結局北田が5億円を美奈子さんに渡すことでその土地を自分のものにするという決着に落ち着いたんです。
まぁよくあることですが話がついたとはいってもそれは弁護士同士でついた話で当の本人たちには感情的にしこりがあったようで。
(弁護士)北田の息子が美奈子さんにケガをさせ美奈子さんに訴えられたせいで職を失ってるんです。
北田自身ヤクザまがいな男で周りの人間に美奈子さんのこと「ぶっ殺してやる」とふれ回っていたらしいですよ。
(チャイムの音)石焼き芋ぉ〜!
(北田昇次)しつこい姉ちゃんやなぁ。
話を聞かせてくれるまで帰りませんから!フンッ勝手にさらせ!はい和美の好物。
たまたま通りかかったら和美が寒そうでひもじそうだったから差し入れ。
ありがとぉ〜!俺も和美につき合うよ。
あぁ…あんたがおるとなツキが逃げていきよんねん。
しゃあない姉ちゃんや。
(北田)あれはたしか…女が殺されたって日の前の日や。
突然家に来て例の5億円のこと確認する言うてな。
(美奈子)〔母の土地…5億円のことで参りましたの〕で俺が「払うもん払う」言うたら帰っていきよった。
北田さん美奈子さんの殺された日どこにいました?俺?あぁ…俺東京におったよ。
息子と娘と商工会議所の旅行で東京に泊まってたわ。
そうですか…。
どうもお手数おかけしました。
あ〜ぁせっかく有力な容疑者だと思ったのにな。
北田はシロだな…。
・
(北田)姉ちゃん!ちょっと待って!もう一つ思い出したわ。
俺が「5億円払う」言うたら…。
(美奈子)〔本当?…よかったぁ〜!〕〔今夜はゆっくり眠れるわ〕〔明日の朝早くにお友達と札幌に雪祭りに行くの〕〔そうだ…北田さんは甘党?それともお酒のほう?〕〔俺は両方いける口やけど〕〔わかったわ。
カニと生チョコ両方買ってきてあげるわ〕〔おう…そりゃどうもおおきに〕〔じゃ私は帰ります〕とにかく機嫌はよかったで。
あれは…愛人と一緒ってことやったんやな。
ハハッ…。
(山野美野里)「犬も歩けば棒に当たる」狩矢も歩けば事件に当たるか…。
殺されて雪の上に捨てられるやなんて…。
愛も冷めるとそこまで冷とうなるんかな…。
あぁ恐ろし!やめてください!けど今んとこその柳沢っていう愛人が一番怪しいんやろ?愛が殺意に変わるとき…。
柳沢さんはそんな人じゃありません!狩矢はまだ男と女のことなーんも知らんさかいな!愛は純粋なものです!殺意になんか変わりません!
(シャッター音)
(シャッター音)和美…!
(百合子)和美が奥さんの死体の発見者だってこと野田さんから聞いたわ。
(和美)百合子野田さんと…。
和美には話さなくちゃって思ってた。
でも…和美のことは信じてるけど秘密はどんなところからもれるかわからない…。
スキャンダルになるのが怖かったの。
奥さんと…柳沢さんのこと知ってたの?…だから余計に。
ダブル不倫だなんて世の中の人からすればおもしろいだけの話でしょ?美奈子には美奈子の幸せをつかんでほしかったんです。
だから離婚したんですよ。
私には百合子がいるし…。
なのに…まさか柳沢くんが美奈子を殺すだなんて。
野田さん!それは…。
悪いけど私はそう思っている。
(池上)残念ながら物的証拠があがらず柳沢を放しました。
大阪伊丹空港には13時55分到着の予定です。
はい了解しました。
あとはこちらで柳沢を張ります。
(池上)「よろしくお願いします」はい。
どうして…?美奈子さんは野田教授の奥さんよ。
同じ大学の教授の奥さんなのに…。
(柳沢)憎かった…。
野田教授が憎かったんだ。
柳沢さん…。
俺には何のコネもない。
ただコツコツと研究を続けるだけしか能がない。
そんな俺にチャンスが巡ってきたんだ。
2年前のことだよ。
助教授から教授に推薦されて教授会の決議のときにたった一人…野田教授だけが反対だった。
けど野田教授は力を持っているからね。
…鶴の一声さ。
野田教授どうして柳沢さんのことを…?俺の研究テーマは野田教授と真っ向対立するもんだったから。
叩きつぶされたってことだよ。
そうだったの…。
当時から野田教授の妻…美奈子の内助の功は有名でね。
もともと美奈子はうちの大学の学長の娘だし。
野田にとって美奈子は妻以上の存在だ。
まさかそれで…。
(柳沢)寝取ってやるつもりだった。
(美奈子)〔あなたも…野田が憎かったのね…〕
(美奈子)〔あの人にとって私は出世の道具〕〔それ以上の何ものでもない。
今までもそしてこれからも…〕〔ありがとう…〕
(柳沢)俺も美奈子も同じ男を憎んで結ばれた。
なのに俺たちはそのときから離れられなくなった…。
美奈子さんと結婚を?まさか…。
だって…愛してたんでしょ?わからない…。
あれが愛だったかどうかなんて。
高校生のころとは違うんだよ和美ちゃん。
美奈子はどういうわけか雪が好きでね。
雪の中にいると何もかもすべて清められるような気がする。
冷たくて白い雪が好きだって…。
札幌の雪祭りを見たいとせがまれそれで一緒に行く約束をした。
(留守番電話の声)「17時31分1件です」
(美奈子の声)「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」留守電で変更?おかしいわ。
だって美奈子さんはそのあと北田さんのところで柳沢さんと一緒に朝の便で行くの楽しみだって言ってたのよ。
予定変更の留守電は今まで何度もあったよ。
予定を変更したのは誰かと会う約束をしていたのかも…。
そしてその人が真犯人かも。
柳沢さんは誰かに恨みを買ってるってことはない?さあ…?じゃあほかに美奈子さんの周りで何か変わったことは?変わったこと?そうだな…。
…野田に愛人がいるって言ってた。
美奈子が野田を憎むきっかけはそのあたりにあったみたいだよ。
箱入り娘に箱入り妻…。
人を疑うことを知らなかった美奈子が裏切られたって…。
「私が旅行の留守中に頼んだのは犬の世話だけなのに夫の世話までしてたのよ」って。
…研究室の助手の女の子らしい。
〔チャッピー!元気ぃ?〕それって…中村麻美さん?ああその子だよ。
やっぱり…バチが当たったのかな。
私柳沢さんが無実だって信じてる。
だからきっと証明してみせるわ。
和美ちゃん…。
だから柳沢さんもあきらめないで。
高校生のころとは違うって言ったわね…。
たしかに人は時が経てば変わっていくのかもしれない。
でも絶対に変わらないものってあると思うの。
私はそれを信じる。
中村麻美と野田教授…。
美奈子さんが二人の関係を知っていたってことは…中村麻美が怪しいと思わない?いやだけど…野田教授って百合子とつき合ってたんじゃ?百合子は慎重な性格だから…。
中村麻美は近くにいる分なにかボロを出したのよ。
それで奥さんが気がついてた。
野田教授は「英雄色を好む」だな。
仕事もできて女にももてる。
俺はそんなぜいたくは言わないよ。
ただ一人和美さえいてくれれば。
あっ!
(シャッター音)
(シャッター音)妹尾教授だ。
知ってるの?ああ。
野田教授と妹尾教授はライバル同士だって。
ライバル?次の学部長選の有力候補がその2人らしい。
野田教授のライバルだとすればいったい何を渡したのかしら?中村麻美…やっぱり怪しい。
なにか秘密があるわね。
(シャッター音)
(携帯電話の音)もしもし…あ石原くん?中村麻美のアリバイの件だけど。
麻美と同じ研究室の人間に訊いてもらったところ麻美は美奈子さんが殺された日は家にいたということだけでそのことは証明できない。
つまり中村麻美にアリバイはない。
わかったわ。
ありがとう。
これで彼女が犯人の可能性大ね。
(チャイムの音)中村さん!ごめんください!…留守ですか?中村さーん…。
中村さんっ…!
(管理人)中村さん?中村さんっ!?
(パトカーのサイレン)
(シャッター音)警部ご苦労さまです。
死因はおそらく青酸カリによる薬物中毒。
飲みかけのワイングラスから毒物が検出されました。
またお前が第一発見者か?私が発見したとき玄関もベランダも鍵がかかってたわ。
お父さんこれって…密室でしょ?鍵は?鍵はこのカゴの中に入ってました。
ただ文庫本がこんなふうに上に載ってましたので…。
合い鍵があるかもしれん。
いえ。
管理人さんの話では鍵は特殊なもので合い鍵は作れないそうです。
じゃあやっぱり密室…。
遺書があります。
自殺ですね…。
「私は野田教授を愛しています」「だから奥さんが憎くてたまらなかった」「札幌で殺したのは私です」「でもその後で離婚届があったことを知り罪の深さに心が張り裂けてしまいました。
もう楽になります」「お騒がせしたことをお詫びします」お父さん。
これで柳沢さんはシロよね。
そんなことはまだわからん。
和美さぁこんなとこよく知ってたね?子どものころね父がよく連れてきてくれたの。
お父さんも結構優しいとこあんじゃん。
いや…そりゃあさ俺が和美の父親だったとしても心配するさ。
元ボーイフレンドが殺人の容疑者なんかだったりしたらさ。
石原くんっ!お父さん…!あ…石原くんていうのは君か?あはい…石原です。
和美と札幌に…そのなんだ…一緒に行ったっていうのはどういうつもりなんだ?お父さんごちそうさまでした。
石原くん行くわよ。
おいっ…和美っ!あ…じゃあ失礼します。
ごちそうさまでした。
え?おい…。
よかったじゃない。
柳沢さんの疑いは晴れたんでしょ。
うん。
でもねどうして中村麻美は美奈子さんを殺したのかなぁ?もし嫉妬からだとすれば百合子を殺したくなるはずだわ。
野田教授と奥さんの夫婦関係はすでに終わってたわけだし。
ふーん…この女の人?中村麻美にはいろいろ秘密があった。
どう考えてもあんな神妙な遺書ひとつ残して死ぬタイプには見えないのよね。
・ただいま!おかえりなさい。
なんだよ…あいつまだ怒ってるのか?
(百合子)先生もショック受けてるわ。
麻美さんのことは軽い遊びのつもりだったって。
まさか奥さんを殺してそのあげく自殺までするなんてって…。
遊び?百合子…それで平気なの?平気なんかじゃないわ!でもね…仕方ないの。
先生はいつも誰か側に女性がいないとダメな人なの。
私は側にいたくても札幌に勤務してるし…。
そんなのおかしいんじゃない?百合子が側にいないからって…。
でもいいの。
先生が本当に愛してくれてるのは私だけ…。
私と先生は心も体も…魂で結ばれてるの。
(百合子)ほかの女の人たちには肌を求めてるだけだもの。
信じてるのね百合子は…。
ええ。
和美だって柳沢さんのこと信じてたじゃない。
彼は犯人じゃなかったわ。
ええ…。
どうして?和美はなぜ信じることができたの?柳沢先輩は剣道部の主将で昔から真っ直ぐな人だったの。
私がねあることで恨まれてた同級生からお財布を盗んだって濡れ衣を着せられたことがあって。
和美が濡れ衣を…?私は信じる人だけが信じてくれればいい自分はやってないから平気って思ってたんだけど。
柳沢さんは私の濡れ衣を晴らすために一生懸命働いてくれたの。
私の潔白を必死で証明してくれたの。
「こういうことってうやむやにしておくと一生心のどこかに引っかかる。
あとで晴らそうと思ったって晴らせない」「和美がきっとつらくなる日がくるだろうから」って。
ごちそうさま。
ううん!恋愛感情とかじゃなくてもっとこう…純粋な。
そう…私のことを信じてくれてた。
そしてそのことを行動で示してくれた。
それがすっごくうれしかったの。
だから今回は恩返し!そう…。
百合子は?…野田先生のこと。
私はスーパーファザコンかな。
私の父は高校2年のとき死んじゃったから。
…そうだったわね。
(百合子)就職して4年見知らぬ土地でアナウンサーになって駆け足で走り抜けた…。
(天気予報を伝える百合子)
(百合子)地方局では新人アナウンサーはいろんな場所に駆り出されるの。
・〔ありがとうございました。
〕
(拍手)〔続いては小野良子さんによる「南京玉すだれ」です。
どうぞ!〕「あさてあさてさては南京玉すだれ…」
(頬をたたく音)〔ちょっとどうしたの?〕
(百合子)上司にこっぴどく説教されたわ…。
本気で仕事をするなら全人格を使えって。
つまり女だったら女の武器ぐらい使えってこと。
セクハラにガタガタ言うなって。
ひどい…!なんだかむなしくなっちゃってね。
このままこんなことを続けてくのかなって…。
本当は東京のキー局で活躍したかった…。
東京でアナウンサーになったかつてのライバルたちは30ぐらいまでキャリア積んで自信ができたら独立する。
私は?…こんなままで終わるの?それって少しわかるような気がする。
そんなときだった…先生に出会ったの。
札幌の大学の講義に来ていた先生に。
〔どこで活躍しようがどこにでも自由に自分の居場所を見つけられる人。
そういう人がコスモポリタンなんだよ〕〔はい…〕〔僕はね札幌に来るのが楽しみなんだ〕〔新しい人脈ができて新しい出会いがあって…〕〔現に君のような人にも出会えたし〕何回か食事をしたり街を歩いたり…。
先生はいつも私を励ましてくれた。
先生と一緒にいると元気がわいてきたわ。
〔寒くなかった?…温まった?〕
(百合子)愛されてる…。
心からそう思えた。
先生からは…生きるパワーも愛情も。
私にはかけがえのない人なの。
結婚なんてできなくていいの。
でもきっと一生…。
みてみい。
男と女の仲は狩矢が考えてるほど単純やない。
まだまだあんたにわからんことがぎょうさんあんやさかいな。
人は人。
私は私ですから。
それにしても中村麻美っちゅう女的外れな感じやなぁ…。
的外れ?百合子と野田のラブストーリーからしたら脇も脇。
何でそんな女が奥さん殺さなあかん?そら変やでやっぱり。
そうですよね…。
ええか狩矢。
ここはひとつ殺された美奈子さんの目線で考えてみ。
美奈子さんの目線?きっと何かわかるはずや。
美奈子さんは殺された前日の夕方柳沢さんに留守電を入れた。
「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」その後で5億円のことを確かめにわざわざ北田さんのところに行った…。
そのときは翌朝友達と札幌へ行くってウキウキして言った…。
そして殺された。
離婚届を持ったまま。
17時31分。
「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」18時30分。
「翌朝友達と札幌に行く」やっぱり変。
留守電の時間本当に夕方だったのかな…?気が変わったときがあべこべになってる。
それよりその離婚届変やで!離婚届…?うちのバツイチの経験から言うとな何でその人役所に行く時間があるのに離婚届持ち歩いてたんや?それも札幌まで持ってったんやろ?雪祭りから帰ってそれから届けを出すようにたまたま持ち歩いてたとか。
…ないないそんなん絶対ない!本気で離婚するつもりやったら旦那がハンコついてくれたらすぐその足で出しに行くわ。
そういうもんですか…。
そりゃそうや。
相手の気が変わったらえらいこっちゃ。
うちなんか長いこと旦那がサインくれへんかったやろ。
やっと書いてくれたときにはその足で役所にすっ飛んでった。
だとするとやっぱり変だ…。
そら絶対おかしいわ!私野田教授のところに行ってきます!…あちょっと!何しに行くんや?美奈子さんがどうして離婚届を持っていたのかそのへんのことを訊いてきます。
ちょっと待ち!ええか狩矢。
真実を見極めるときはいったん遠くから眺めてみることも必要や。
関係ないと思われる外堀から順番に埋めていく。
そうするといつか真実にたどり着く。
これがジャーナリズムの鉄則や。
…はい!柳沢さんにテープを貸してもらうよう頼んだわ。
石原くんのほうは?野田教授の学部の助教授に川村さんて人がいる。
その人にいろいろ話してもらえそうだ。
(川村)とにかく次の学部長選挙は荒れてるんです。
荒れてる?どうしてですか?
(川村)学部長になると大学の中のすごい権力が握れる。
だから野田教授も妹尾教授も必死なんです。
そうなんですか…。
少し前までは野田教授に軍配が上がってたんですよ。
学部長選挙というのは助教授も投票するから数の多い助教授の票が物を言う。
野田教授の奥さんはそのために随分金を使ってましたからね。
ところが数か月前からそれを急にやめてしまったんです。
野田教授の奥さんが離婚を考え始めたころ…。
野田教授はあせってたでしょう?いやぁ…今はまた安泰でしょう。
奥さんの遺産を相続すればお金を使って助教授たちの票を集めることができるでしょうね。
奥さんが野田教授の不倫の末の殺人というスキャンダルがあっても…?そのことは確かに問題ですね。
金の力がどれだけの働きをするか…。
今となっては妹尾教授と五分と五分…いや妹尾教授が有利かな…。
あった…警部ありました!盗聴器か?ええ。
こっちはフロッピーだ。
(橋口)「20時野田教授吉田教授島本教授と3人で祇園のクラブへ。
23時タクシーで帰宅」中村麻美は野田をスパイしてたんだ…。
となると自殺は偽装…。
でも密室ですよね。
中村麻美は妹尾教授に頼まれて野田教授をスパイしてたんだわ…。
怖いねぇ…女は。
野田教授百合子を愛しているとか妻にも幸せになってほしかったとかあんな殊勝なこと言ってたけど本心はドロドロの出世欲。
野心が渦巻いてた。
男も怖いね…。
とにかくこの2人の教授が怪しいわね。
スパイ行為をさせていた妹尾教授。
スパイされていた野田教授。
よし和美。
アリバイ調べるぞ。
(ゆう子)妹尾先生はうちの店で若い先生方に大判振る舞いされていました…。
(にぎやかに話す声)
(妹尾)〔もう一軒行こう〕〔はい!〕
(ゆう子)そしてその後店の女の子みんな引き連れて何軒もはしごされました…。
何時ごろでしたか?そうですね…うちの店閉めてからですから11時すぎでしたかしら。
最後にお車をお見送りしたのは…2時ごろでした。
そうですか…。
妹尾教授はシロだな。
残すは…。
(犬の吠える声)午後8時ごろに研究室を出まして真っ直ぐ帰宅してそのままずっと家にいました。
美奈子の四十九日もまだ明けてないんです。
出かける気持ちになんかなれません。
そのこと…証言してくれる人は?残念ながらいませんね…。
(犬の吠える声)チャッピーが口がきければ証言してくれるんでしょうがね。
百合子のこと思うと胸が痛むけどやっぱり麻美さん殺しは野田教授が一番怪しいわ。
野田教授は中村麻美に四六時中見張られてたんだよなあ…。
何か弱みでも握られてたんじゃ…?弱み…?まさか美奈子さん殺しと関係があるのかも。
狩矢の留守中に柳沢さんがわざわざ届けてくれはった。
(留守番電話の声)「17時31分1件です」
(美奈子の声)「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」おかしい…。
夕方の5時半になってる。
北田さんのところに行く前だわ。
〔今夜はゆっくり眠れるわ〕〔…ん?〕〔明日の朝早くにお友達と札幌に雪祭りに行くの〕「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」「美奈子です。
予定変更…」何か聞こえません?ザーザーって。
…聞こえる!「美奈子です。
予定変更…」…セミ!セミや!美奈子さんこれ夏に録音したんだわ。
そしてそれを犯人が柳沢さんの留守電に入れた。
それができるのは…。
(2人)野田教授!野田教授は麻美さんと美奈子さん2人の女性を殺したんだわ…。
でも麻美さんの殺された部屋は密室だったし美奈子さんの殺害時には野田教授にはアリバイがある。
どう考えたらいいの…。
狩矢そのアリバイ自分の足で調べたんか?いいえ。
昼と夜出前を注文していてそれを配達した人の証言があるらしいんです。
「らしい」?…あかんあかん!自分自身で納得するまで調査する。
すべてはそれからや!…はい!配達したとき確かに野田さんに会ってるのよね?
(店員)ええ…確かにって言われると…。
確かには会ってないの?うーん…でもいたんですよ。
だって声は確かに聞いたし。
配達したとき中から野田さんの声がして…。
〔ごめんくださーいピザお届けに参りましたー〕・
(野田)〔いま手が放せないからそこに置いといてくれ〕〔はーい〕
(店員)5000円が置いてあったからおつりの3200円を置いて帰りました…。
直接野田さんに渡したわけじゃないのね?うーん…。
でも確かにあれは野田さんの声でした。
よくピザは頼まれるの?いつもペパロニとソーセージのを。
そう…。
あ何かそのとき変わったことなかったかな?変わったこと…?
(犬の吠える声)
(店員)チャッピーが珍しく家の中で放されてた…。
チャッピーが?いつもは家の中の檻に入れられてるのに…。
そう…。
夕方7時に寿司を届けました。
〔毎度ひし伊です〕そのときピザはなかった?
(店員)ピザ?そんなもんないです。
料金がちょうど置いてあったのでそれを受け取って帰りました。
料金はおいくらでした?3200円です。
チャッピーは出てこなかった?犬ですか?うーん…見なかったなぁ。
いつもつながれてますからね。
そう…。
〔チャッピーが口がきければ証言してくれるんでしょうがね…〕そうよ…あの犬が口をきけたら。
・
(石原)和美!ごめんごめん待った?ううん。
寒かっただろ。
だんだんからくりが見えてきたわね…。
冷えただろう〜?はいココア。
ありがとう。
まずは麻美さんの部屋の密室の謎を解かなきゃ。
ああ…。
間取り書いてみよっか。
ここにベンチレーターがあって閉めるとバシッと開かなくなるの。
じゃあここから鍵を入れたんじゃないか?ただ鍵を入れるだけなら簡単よ。
でも実際にはテーブルのカゴの中にあってしかも上に物が載ってるような状態だったの。
郵便受けの高さからじゃテーブルの上にテーブルの上に鍵を置くことすらできない。
まるで手品ね…。
(モーター音)あぁ掃除機かけてんだよ。
夜遅くなってからやり始めるから迷惑迷惑よ。
掃除機…。
これだわ…!ベンチレーターからテーブルまで届くホース。
しかも掃除機のホースのように蛇腹になっていれば鍵を自由に置きたいところに落とすことができる。
あった。
ありがと。
じゃあ実験してみよう。
出た!中村麻美のマンションもこれと同じ。
ホースを抜けばベンチレーターはピシャッと閉まって二度と開かなくなる。
できた…!密室の謎が解けたわ!次は犯人がどうやって札幌と京都を往復したのかそれを明らかにしないと…。
野田教授がどうやって札幌に行ったか…。
確か警察の捜査では美奈子さんは予約した飛行機に乗ってないんだよな?大阪。
もしくは関西空港から札幌へ飛んだ偽名の男性客もいない。
野田教授はどうやって札幌までたどり着いたのかしら…。
フェリー…。
フェリーだったら例えば美奈子さんの気を失わせて運ぶことができる。
…そっかその手があったか!確か敦賀からフェリーが出てたわよね?北海道行きってあるのかな…?
(和美)敦賀新港23時30分発小樽港翌日20時30分着。
北田さんのところから帰宅した美奈子さんを運び翌日小樽に着いた後殺す…。
美奈子さんの死亡推定時刻は…午後9時前後!ぴったりだわ…。
(シャッター音)
(和美)《京都市内から約140キロ》《空いてる時間帯なら2時間みれば十分…》《野田教授はやっぱりフェリーで美奈子さんを…》もしもし?百合子?
(百合子)「和美?」百合子。
至急どうしても話したいことがあるの。
「なに?」電話では話せない。
会って直接話したいの。
「いいわ」「ちょうど明日京都に行くの」京都に?「先生に会うの」ダメ!…ううん京都に着いたら真っ先に私に会ってほしいの。
「いいけど…」必ずそうして。
野田教授に会う前に私に会って。
「…わかったわ」ただいまー。
おかえり。
随分遅かったわね。
お母さん。
これを明日お父さんに必ず渡して。
いいけど…。
じゃおやすみなさい。
おやすみなさい。
(百合子の声)〔でもいいの…〕〔先生が本当に愛してくれてるのは私だけだから…〕〔私と先生は心も体も…魂で結ばれてるの〕目を覚まして百合子。
その人は殺人犯なのよ。
来てくれてありがとう。
話ってなに?百合子にはつらいことを話すけどしっかり聞いてほしいの。
野田教授が2つの殺人事件の犯人なのよ。
奥さんの美奈子さんを殺したのも中村麻美さんを殺したのも野田教授なの。
和美…。
百合子から野田教授に自首を勧めて。
そんなことできない…!証拠もあるの。
警察が来る前に出頭するように…。
ねっ?百合子から野田教授を説得して。
いいえ…そんなこと私にはできない!百合子!野田教授!百合子あなたが…?そうよ。
私が先生を呼んだの。
まさか…あなた共犯だったの…!?そうよ。
私は先生と出会ったときからずっと死ぬまで私と先生は共犯者。
百合子も2つの殺人に…?違うんだ。
百合子は関係ない。
美奈子を殺したのは私だ。
百合子は何も知らない。
関係ないんだよ。
いいえ先生!先生が奥さんを殺したのは私のせいでしょ?そうなんでしょ?麻美さんを殺したのも私のため…。
そうじゃないんだ!…違うんだよ。
(野田)〔離婚はしない…〕〔私と離婚すれば学部長選に勝てなくなるから?〕〔美奈子忘れたのか?私たちの結婚を誰よりも望んで誰よりも祝福してくれたのは君のお父さん亡き学長だよ!〕〔離婚するのはお父さんの想いを踏みにじることになるんだ〕〔いいえ!あなたにとって私は出世の道具〕〔あなたは学長になるために私と結婚したのよ〕〔…そのとおりだ〕〔そして君のお父さんもそれを望んでいた〕〔だから私を婿養子にしたんだ〕〔将来学長として最もふさわしい男と認めたからだ〕〔もうたくさん!〕私は絶対にサインなどしなかった。
離婚なんて断じてする気はなかった…。
だが美奈子が突然5億円の現金が手に入るから離婚しないなら家を出ると言い出したんだ…。
〔家を出るって…?〕〔まさか柳沢くんと一緒になるつもりじゃ…〕〔あら…彼のこと知ってたの〕〔私は若いってことを気づかせてくれたのよ彼は〕〔私人生をやり直すの〕〔あなたとの結婚生活で失った時間も幸せもすべてこの手に取り戻すの〕
(野田)5億円をまるまる柳沢に取られる…。
(野田)そんなことは断じて許せない…!
(鐘の音)
(野田)離婚届にサインをして美奈子に持たせてやった。
(野田)財産目当ての疑いが私にかからないようにね。
そして柳沢さんに疑いがかかるように仕向けた。
美奈子さんの声を録音してそれを柳沢さんの留守電に入れた。
ホテルに呼び出しておいてアリバイを不明にしておくため?そのとおりだ。
どうして柳沢さんに!?あいつには当然の報いだ。
私は美奈子と離婚するつもりはなかった。
美奈子の金は私が出世するために用意された金だ。
何で柳沢なんかに…!私はね今度の選挙で学部長になる。
そして近い将来学長になるのが私の長年の夢だ。
そのためには百合子が必要だった…。
私は百合子のために完全なアリバイを作った。
2人の関係が明るみに出たときには当然百合子にも美奈子殺しの嫌疑がかかることを想定してね。
百合子のアリバイ…?
(野田)京都府警の警部の娘を札幌雪祭りに案内する。
百合子はあの日ずっと君と一緒だったろ?私はアリバイ作りに…?だから犯行の日もあの日を選んだんだ。
百合子は知ってたの?あの日に美奈子さんを殺すこと。
百合子は何も知らない。
美奈子を殺したのも死体を運んだのも私ひとりだ。
そして私のアリバイは完璧だ。
…いいえ。
完璧なアリバイなんてないわ。
ピザとお寿司の出前のアリバイ…。
あれはテープの録音を使ったものだわ。
勝手口の戸を開けるとスイッチが入る仕掛けで前もって録音しておいたテープが回り出す。
「いま手が放せないからそこに置いといてくれ」
(店員)〔はーい〕
(和美)ピザ屋はピザと3200円のおつりを置いて帰る。
それからピザはどうなったのか…。
(美奈子の声)「美奈子です。
予定変更。
明日ホテルで8時に待っていてください」警部。
確かにセミの声ですね。
和美…!ピザがどこへ消えたのか…。
それが一番の謎だったわ。
(携帯電話のバイブレーション)ヒザ屋の配達の女の人の話によると「チャッピーだったのね」和美!お前…いま犯人と一緒なのか!?無茶な!…和美いまどこにいるんだ?和美!いつもは檻に入れられている犬がその日だけは放されていたんだわ。
これで昼間のアリバイは作れたわ。
夜も同じ。
今度は寿司屋に出前を頼んだ。
〔毎度ひし伊です〕
(和美)そしてテープが回った。
(野田)「いま手が放せないからそこに置いといてくれ」寿司屋は寿司桶を置き代金を持ち帰ったの。
3200円。
それは…ピザのおつりそっくりそのままだったんだわ。
配達人が来たときには実はすでに返却する寿司桶は置いてあった。
その寿司桶はきっと前に出前をとったときに返さずに取っておいたもの。
それをビニール袋に入れてあらかじめ勝手口に置いておいた。
数時間後に回収に来たときには持って行ってもらうように。
配達のときは配達のことしか考えてないから寿司桶には気がつかない…。
心の盲点を大胆に利用したのね…。
そのとおりだね。
人間はね自分の見たいものしか見ようとはしない。
そういう生き物だ。
うぬぼれるのは早いわ。
私はあなたのアリバイを崩しました。
船の乗船名簿にあなたの車のナンバーがあるわ。
(野田の笑い声)乗船名簿…そんなもの必要ない。
君さえいなくなれば麻美が犯人で終わることだ。
そんな危ないことになってるなんて!百合子さんと会うとは言うてましたけど…。
どこで会うか聞いてませんか。
ようお父さんに連れてってもらった湯豆腐屋さんで…。
南禅寺だ!緊急手配。
はい!
(パトカーのサイレン)百合子…こんな男についていって何が幸せなの!?この男は自分の野心のために2人も人を殺したのよ?こんな男のどこを愛するの?目を覚まして百合子!先生は私のために2人を殺したの…。
私だけを愛してくれてるのよ。
そんなの愛なんかじゃないわ…この男は自分の野心のためだけに生きてるのよ!野心を持ってどこがいけないの…?
(百合子)私にも野心はある…。
すべてが終われば彼と新しいスタートをきるの。
誰にも邪魔なんてさせない。
和美!
(野田)放せ!放せ…!さあ来い!和美…。
お父さん…よくここがわかったわね。
お前…バカ!!ったく。
百合子!百合子昔よく言ってたよね。
将来もし本当にアナウンサーになれたらそのときはどんなに暗いニュースがあふれている世の中だろうとどこかに必ずある明るいニュースを見つける。
そしてたったひとつでもいいからそのニュースを自分の声でみんなに伝えたいって。
その気持ちだけはずっと持ち続けたいって。
私…待ってるから。
きっと百合子の心も溶ける。
私…百合子のこと待ってるから。
(野田)麻美は…ライバルの妹尾教授のスパイだった。
彼女はいつも私を見張っていた。
だから…。
〔先生!5億円…だっけ?〕〔奥さんが死んだから先生のものになるんでしょう?〕〔なぜ君がそんなことを?〕〔私先生のことならな〜んでも知ってる〕〔警察には黙っててあげるわ。
奥さん殺したこと〕
(麻美)〔そのかわり5億円ね。
アハハ…〕〔はーいお待たせ〕〔カンパーイ〕私と麻美のスキャンダルのことは仕方がない。
麻美に美奈子殺しの罪を着せて葬り去ることにしたんですよ。
(狩矢)こちらで調べたことだが美奈子さんは近々海外から帰ってくる女性の友人と事業を興す予定だったことが確認された。
美奈子が事業を…?彼女は離婚して新しいスタートをきりたかったんだろう。
あんたとあんたが愛した女性と同じようにね。
夢や野望を持つのは勝手だ。
だが他人の尊い人生をもぎ取ってまでそれをかなえる権利は誰にもないんだ!あの大学は辞めることにした。
えっ…大学辞めちゃうんですか?うん。
もう一度ゆっくり自分を探してみる。
柳沢さん…。
人は時が経てば変わる。
だけど変わらないものもあるんじゃないかって和美ちゃんが教えてくれた。
あんな醜い出世争いがしたくって大学に残ったわけじゃない。
じゃあ俺は何がしたかったのか。
行きたい道は何だったのかもう一度原点まで戻ってみるつもり。
ありがとう…。
それじゃ。
お元気で。
和美ちゃんもな。
よっ。
石原くん!和美。
今度さお父さんに紹介してくれよ?おい…ちょっと和美!2015/02/05(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
山村美紗サスペンス 京都〜札幌雪まつり連続殺人[再][字]
雪ダルマから人妻の死体…そして嵯峨嵐山に若い愛人の密室死体!
詳細情報
◇出演者
藤谷美紀、田村亮、田中健、相田翔子、大沢健、山村紅葉、ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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