オフィスの情報共有に使われるグループウエア大手のサイボウズが、一風変わった企業CMを展開している。働く女性の慌ただしい日常を映し出しているのだが、商品名はおろか、それを想起させるものも画面に登場しない。異例のCMの裏に、「働きかた」を巡る意識の変化が、新しい市場を生みだしつつあるとの認識があるようだ。
■商品語らぬ異例の発信
俳優の西田尚美がふんする働く女性。仕事場を抜け、熱を出した息子のお迎えに保育園へ。夜中にも仕事の書類を手に息子の寝姿に目をやる――。「帰り道はほとんど走っている」「送り迎えは私がするって、いつ決まったんだっけ」。そんなナレーションも含め、子育て世代にリアルに伝わるメッセージが多く盛り込まれている。「大丈夫」との表題でサイボウズがインターネット配信する3分弱の動画。年始には短縮版がテレビで多く流された。
働くママを題材にしたCMを作ろうとするプロジェクトが社内で始まったのは2014年1月から。制作に1年近い時間をかけたのは、社会問題を取り扱うため“炎上”の対象になりかねないと判断したためだ。脚本は何度も練り直され、サイボウズ側でもせりふの細かい言い回しを何度もチェックしたという。
CMの内容から、サイボウズの商品であるグループウエアを想起する人は多くないはずだ。制作段階では制作会社の担当者から「エンドロールでも良いから、商品名を出しませんか」との提案もあったほど。それでもコーポレートブランディング部長を務める大槻幸夫は視聴者の共感が得られなくなるとして提案を突っぱねたという。
「サイボウズが自分の製品を売りたいがためにしているCMだとみられたら、視聴者の共感の気持ちは一気に冷えてしまう」(大槻)。宣伝臭を限りなく抑制しようとした結果、サイボウズを示すものは、前後のロゴだけになってしまった。
この一風変わったCMが実現した背景には、社長の青野慶久の存在がある。「ワーキングマザーのリアルな現実をしっかり直視してほしい」という青野は自らも育児休業を取得する「イクメン経営者」として知られる。その経験から「グループウエアの先の市場を開くためにも、まずは、(多くの人に)厳しい現実を直視してもらわないと」と考えた。
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