地球イチバン「地球最古のイーグルハンター」 2015.02.05


地球最強の鳥イヌワシ。
その瞳ににらまれたら一巻の終わりです。
鋭い爪に獰猛な性格。
飛行速度は時速200キロ。
一直線に獲物を狙う最強の鳥イヌワシ。
このイヌワシを自在に操る人々それがモンゴルの鷹匠たち。
飛ばすのも呼び寄せるのも思いのまま。
その歴史は実に4,000年にも及びます。
今夜は巨大な鳥と生きるある女の子の物語です。
凍てつくモンゴルの大平原。
その西の果てに世界最古の鷹匠の民カザフ族が住んでいます。
4,000年の歴史を誇る彼らの世界に去年初めて女性の鷹匠が誕生しました。
しかも弱冠13歳の女の子だというのです。
「この子に会ってみたい」。
旅に出たのは女優の…彼女が演技の世界に入ったのも14歳の時。
文四郎さんはいらっしゃいますか?巨大な鳥を意のままに操る。
一体どんな人たちなんだろう?日本を発ってから既に2日。
わ〜!アハハ!すご〜い!気温は氷点下。
冬の大平原をひた走ります。
こんなに何にもないの?モンゴルは世界一人口密度の低い国。
いくら進んでも人っ子一人出会いません。
乗ってる?ラクダ?ようやく人の気配が…。
ラクダ!ハハハ!すごいすごい!出会ったのは巨大なフタコブラクダ。
実はラクダは冬になると毛が伸び寒さにも耐えられる動物なんだそうです。
よいしょ。
前ちゃんとつかまえて。
ここ?うん。
(鳴き声)あっ!あっ!アハハハ!お〜!ああすごいすごいすごいすごい!全然怖くない!極寒の大地で生きる遊牧民たちの必需品。
1頭8万円だとか。
おとうさんは鷹狩りしないですか?再び走る事丸一日。
鷹匠たちが暮らすのは西の果てにある山岳地帯です。
すごいね。
3日目。
目的地が近づくにつれ標高は上がり気温は氷点下20度に。
こんにちは!たどりついたのは標高1,800メートルの高地。
山際にぽつりと建つ白い家が見えてきました。
何もない…広い。
あっ!いた!えっ?家の外にはあの鳥が鎮座していました。
普通にいる!小屋とかに入ってないの?置物のように普通にいる。
ここが誇り高き鷹匠たちの家。
猛禽類最強の鳥イヌワシとの初対面です。
目隠しされてる。
ちょっと並んでみる?フフフフフ!こんなに普通にいるの?ハハハハ!こんな出会いなんて想像してなかったよ〜。
お邪魔したいと思います。
トントン。
お邪魔します。
こんにちは。
女の子の家族と親戚たちが迎えてくれました。
あっお父さん。
お父さんのアグライさん。
代々続く鷹匠の末裔です。
よろしくお願いします。
この子が初の女性鷹匠アイ・チョルパン。
両親と妹弟の5人で暮らしています。
珍しい女性の来客にアイちゃんちょっとうれしそう。
私はアイちゃんが鷹を持っている写真を見てアイちゃんに会いたくてここまで来たんです。
(笑い声)おっとりして見えるけどあの獰猛なイヌワシを扱えるんですかね?鷹匠のパートナーとなるイヌワシはそれぞれ決まっています。
これお父さんのですか?ふだんは人を襲わないように目隠しをして飼っています。
うわっ!わ〜!あっ目隠し取って…。
怖くないですか?お父さん。
私近くにいて…。
狩りに使うのは全てメス。
体が大きくオスよりも狩りのセンスがあるんだそうです。
(鳴き声)わ〜すごい大きい!
(鳴き声)私?大丈夫?そんな簡単にやらせてもらっちゃっていいの?イヌワシの体重は6キロ。
日本の鷹匠が使うオオタカの5倍もあります。
すごく重い!あ〜!あ〜あ〜怖い!あ〜!すごいすごい!これ重たい!でもすごいちゃんと自分でつかまってバランス保ってくれてるから。
アイちゃんみたいに絶対上に上げられないですよ私。
おお〜!イヌワシは翼を広げると2メートルを超えます。
鷹匠たちはこのイヌワシと共に生き抜いてきました。
この大平原で生きる糧となっているのは牧畜です。
羊やヤギを飼う遊牧生活を送っています。
この大切な家畜を守るためにはイヌワシが欠かせません。
オオカミなどの外敵をしとめるのもその大事な役割です。
鷹狩りのもう一つの目的はキツネやウサギなどの毛皮を取る事です。
冬には氷点下40度を下回る事もあるという酷寒の地。
動物の毛皮は何にも代え難い防寒具なのです。
鷹匠は地域の長として尊敬を集め4,000年もの間その伝統を受け継いできました。
その中でも父のアグライさんはモンゴルで一番の名手だとか。
へえ!アイちゃんは偉大な父に憧れて鷹匠となる事を決意したのです。
格好いい。
去年の夏アイちゃんは初めて自分のイヌワシを持ちました。
ヒナを巣から取り世話を続けています。
鷹匠となったもののまだ狩りに成功した事のない半人前です。
狩りを成功させるため最も大切なのが餌の管理です。
それ何ですか?餌は獲物となるキツネやウサギの肉。
鷹匠に従えば好物がもらえる事を植え付けるのです。
しかし飼いならし過ぎると野性を失ってしまいます。
ふだん与えるのは乾燥した赤身の肉をお湯で戻したもの。
食欲をそそる血や脂肪分をあえて落とします。
狩りに向け餌の量も減らしイヌワシの狩猟本能を呼び覚ますのです。
餌は1日何回あげるんですか?狩りで得た肉はイヌワシ毛皮は人間。
分け前は平等です。
ちょっと怖くて…。
翌朝。
一族の鷹狩りに同行させてもらいました。
(イヌワシの鳴き声)緊張してる?じゃあうまくいくといいね。
鷹狩りは動物の毛が伸びる冬が本番。
馬で1時間ほどの距離にある狩り場へと向かいます。
やって来たのは標高2,000メートルの岩山。
気温は氷点下10度を下回っています。
そんなに…大丈夫?眼下に広がる無機質な茶色の世界。
この岩陰のどこかにキツネやウサギが息を潜めています。
鷹匠と麓で獲物を追い立てる勢子との呼吸が狩りの成否を分けます。
勢子は石を投げ大きな声で獲物を威嚇していきます。
(威嚇する声)山の両脇から追い立て鷹匠が身構える真下に獲物をおびき出すのです。
キツネやウサギが姿を現すのは岩から岩へ飛び移る一瞬。
それを逃さずにイヌワシを放てるかが勝負です。
氷点下の山での神経戦。
その時でした。
アイちゃんは反応できず代わりにお父さんが飛ばしました。
どこ行っちゃったの?放つのが遅れた僅か3秒の間にウサギは岩の下に逃げ込んでしまいました。
はあびっくりした。
やっぱ速いですね。
真剣勝負。
いつ来るか分かんないから。
アイちゃん千載一遇のチャンスを逃してしまいました。
僅か数秒の遅れ。
しかしそれが半人前と一人前とを隔てる大きな溝なのです。
(風音)午後になると猛烈な風が吹き体感温度はマイナス30度に。
自然との闘い。
1週間通っても何も取れない時もあります。
この日も狩りを諦める事にしました。
1時間後帰宅したアイちゃんに異変が起きていました。
寒さで指が凍傷になりかけていたのです。
氷を当て急激に温め過ぎないようにするのがカザフ族に伝わるやり方です。
頑張って。
我慢だ…。
唯一の女性鷹匠となった娘を母のアルマさんはどう思っているのでしょうか?あっドアドアドア。
アイちゃんが初めて狩りを成功させる姿を見届けたい。
生活を共にする事にしました。
彼らの家の隣にゲルを建て寝泊まりします。
木の枠に毛皮や布を張り合わせた移動式テント。
設置を始めて1時間あっという間に完成です。
引っ張って引っ張って。
佐津川さんも働かないとね。
オッパイ!オッパイ?オッパイ!「オッパイ」って何?「よいしょ」って意味。
「よいしょ」っていう意味だって。
オッパイ!オッパイ!フフフフ!オッパイ!うん暖かい。
中暖かいですね。
これ風吹いたら怖くない?フフフフフ。
お母さんこのゲル風で倒れない?一緒に住んでないですね。
うん!
(風音)おお!風?やっぱり風危ないよ〜!そうしましょ。
そうしましょ。
フフフフフフフ!寝ますよ〜。
はいよ。
寝袋でみんな寝ますよ〜。
は〜い。
おやすみなさ〜い。
早朝。
一家の仕事は家畜の世話から始まります。
この日も気温は氷点下20度以下。
遊牧民は一人一人自分の馬を持っています。
もちろんその世話は自分の仕事です。
アイちゃんの相棒は16歳。
物心付いた頃から乗り続け一緒に育ってきました。
イヌワシと馬とアイちゃんと3人はどんな関係かな?遊牧民として動物と共に暮らすカザフ族の守り神とされてきたのがイヌワシです。
イヌワシは不毛の地で生きる彼らに富をもたらす存在として語り継がれてきました。
頂きます。
あっあっ。
誇り高き鷹匠は4,000年前ある一人の男から始まったと伝えられています。
キツネを襲うイヌワシの勇猛な姿にほれ込み狩りに使ったその男は一代で財を築きました。
以来カザフ族は鷹匠の民となり今もイヌワシを神聖なものとして5年で野生に返す掟が守られています。
若き鷹匠の末裔アイちゃんが通う学校は1山越えた村の中心部にあります。
(歓声)アイちゃんは今中学1年生。
月曜から金曜までは学校の寮で生活しています。
やっぱりここでは普通の女の子。
放課後はいつも友達と宿題をします。
全員に教科書が行き渡らないため1冊をみんなで共有しています。
努力家のアイちゃん成績も優秀です。
みんなは好きな人とかいないの?アハハハ!ちょっと格好いいなって思う人はいない?
(笑い声)アハハハ!アイちゃん。
ごめんね。
フフフ。
モンゴルでは遊牧生活を続ける人は急速に減っています。
この20年の間にその割合は半分に減りました。
遊牧民になりたい子はいないのかな?実は鷹匠の数もこの10年で1/3に激減。
モンゴル全土で僅か100人しか残っていません。
それだけに久しぶりの新人鷹匠アイちゃんにかかる期待は大きいのです。
一方この時家では大事件が起こっていました。
大切な家畜がオオカミに襲われ10匹の羊が食べられてしまったのです。
この犠牲は一家にとって小さなものではありません。
8万円は一家の年収のおよそ半分。
現金収入は家畜の毛皮を売る事でしか得られません。
家畜は財産そのものなのです。
生活に欠かせない水も家から離れた平原の真ん中までくみに行きます。
辺りに水道はなくこの井戸だけが頼りです。
かつてここには豊かな牧草地が広がり20世帯が暮らす集落がありました。
しかし町での便利な暮らしを求めて皆この地を去っていきました。
それでもアイちゃん一家は狩り場が近く鷹匠の伝統を守れるこの場所を離れるつもりはないといいます。
イヌワシとの暮らしを続ける大草原の小さな家。
この広大な平原に暮らすのは今アイちゃんの一家だけです。
金曜日の夕方。

(クラクション)学校の寮にお父さんが迎えに来ました。
週末アイちゃんは中学生から鷹匠へと戻っていきます。
帰宅後真っ先に行うのがイヌワシの世話です。
狩りを始めて1年。
イヌワシと気持ちを合わせてきました。
翌日。
師匠であるお父さんと鷹狩りへ。
風はない。
空気も澄み切っている。
狩りをするには絶好の日だ。
勢子が追い込みを始めた。
その時だった。
アイちゃんが放ったイヌワシが…。
捕らえた!初めての狩りの成功です。
分かりましたか?岩の間から飛び出したキツネを目がけアイちゃんが目隠しを外しイヌワシを飛ばします。
獲物まで一直線。
見事捕らえる事ができました。
捕らえたのは体長1メートルほどのキツネです。
(笑い声)すごい!見てたよ!格好よかった!すごい緊張感だった。
何か急に空気変わった…。
獲物を見つけた時の…。
アイちゃん飛ばした時何かすごい感動しちゃった。
すごい…。
突然お父さんが捕らえたキツネにイヌワシをけしかけました。
分け前の肉を食べさせるのです。
何か今イヌワシにキツネの…。
おお…!息止めてお肉あげるらしい。
ちょっと…ちょっと見れない…。
うう…。
初めて自分の手で狩りを成功させたアイちゃん。
ついに一人前の鷹匠となったのです。
お祝いに飴をまきイヌワシに感謝を伝える儀式を行います。
4,000年の歴史を誇る鷹匠に立派な後継ぎが出来ました。
早速お父さんはキツネの毛皮を剥いでいきます。
家畜を襲う獣を狩りその毛皮で寒さをしのぐ。
こうして厳しい環境を生き抜いてきました。
ところがお父さんが思わぬ事を口にします。
決して豊かとはいえない彼らの精いっぱいのもてなしの気持ちでした。
ん〜…。
うん…難しい。
カザフの人とかが寒いからキツネの毛皮帽子とかにして寒さしのいで生きていくとかっていうのは何か分かるけど…私に絶対必要なものでもないし…。
そして旅の最終日。
ありがとう。
アイちゃん一家との別れです。
うん…ありがとう。
うん。
大切にみんなで使って下さい。
お気持ちだけもらって帰ります。
ありがとう。
ありがとう楽しかったよ。
ああ泣かないで…。
ありがとう。
動物と暮らす事って私には難しい考え方がいっぱいあったけど…人間だけの世界よりみんなすごい笑顔で楽しそうで何か豊かなのかなって。
日本に帰ったらどうやって生きていこうかなって今思ってる。
週末彼らはまた狩りに出ます。
地球最古のイーグルハンター。
その未来を担うアイちゃんに夢を聞きました。
2015/02/05(木) 02:30〜03:22
NHK総合1・神戸
地球イチバン「地球最古のイーグルハンター」[字][再]

翼を広げると2m以上!世界最強の鳥を自在に操る鷹匠の世界。モンゴルの大平原、4千年の歴史で初めて誕生した女性の鷹匠。13歳の女の子のデビュー戦。人と鷹と命の物語

詳細情報
番組内容
翼を広げると2m以上!世界最強の猛きん類「イヌワシ」を自在に操るイーグルハンターの世界。モンゴルの大平原、マイナス40度の極寒の地。広漠としたアルタイ山脈で遊牧生活を送ってきた鷹(たか)匠の民に、4千年の歴史で初めて女性が名乗りをあげた。13歳の女の子のデビュー戦に密着。果たして彼女は狩りを成功させ、一人前になれるのか!?ハイスピードカメラや鳥の視点など、多角的な映像美で迫る「人と鷹と命の物語」。
出演者
【ナビゲーター】役所広司,【旅人】佐津川愛美

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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