何故か車でブラジルを旅している。
サンパウロから出発、ブラジリアを経由し北上する。
ブラジリア辺りから縦横無尽に複雑に入り組んだ国道から迷いつつ抜け出し、
一本の山間部の間をほぼ真っ直ぐ北上する国道を延々と走り続ける。
道路標識には1??(1で始まる3桁)と、日本の国道の番号のような表示がされている。
そして、ブラジル北部の中央辺りで東西に走る他の国道に突き当たる。
地図を見ながらどちらに進むか悩んでいる。
道端の教会の前で会話しているおばちゃん達に尋ねるが言葉が通じない。
進むべき方向が決まらず、この辺りに一時滞在する事にした。
個人宅?で退屈に過ごしていたが、寅さんの映画DVDを1本持っている事を思い出し、
滞在先のおばちゃんにDVDプレイヤー貸して欲しいと身振り手振りで示した。
すると、大きな機械を運んできてテーブルの上に置いた。
この部屋にはテレビもモニターらしき物も無いのだが、
この機械のカバーを外し確認すると、プロジェクターで壁に直接投影する
8ミリ映写機のようなものだった。
無理無理、これはDVDディスクだから・・・
おばちゃんはDVDディスクをよこせと指差し、見るとDVDカートリッジがある。
レトロで古臭い外観なのに、DVDが映し出せる事に驚いた。
これで寅さんの何らかの映画作品をちらっとだけ観賞した。
隣の部屋を覗くと、数人の作業員が小さい金属部品を手作業で作っていた。
自分がひとつ部品を摘み確認すると、左右対象と思われる部品の片方が
若干幅が狭い。
これは不良品では?身振り手振りで教えると、皆は困った表情をしている。
自分が、部品を通して加工する細長いゲージの片方の幅が違う事に気付き、
しかも加工前の部品も左右の幅が若干違っていた。
ならばゲージ前後の向きを逆に変えれば、偏磨耗により片減りしたゲージと、
寸法が左右違う加工前部品との寸法の差が相殺され、左右が均等に加工され
安定した製品が作れると気付き、自分が自ら改良した。
そこの作業員達に握手され感謝された後、手を振りその民家を出て
車に乗り込み、突き当たった国道の左方向に進む事を決め再び走り出す。
少し大きな川に架かる鉄橋を渡り向こう岸に渡ったところで目が覚めた。
ブラジルには行った事が無いが、以前道場運営していた頃、
日本に働きに来ていたブラジル人、ペルー人が多く在籍していた。
実はブラジル人とペルー人は言葉が違うのと、国民性の違い?で
仲が悪いと聞いていたが、道場内では皆が協力し助け合っていた。
リーマンショック後、多くの生徒は職を失い帰国してしまったが、
生徒達との縁もあって、現在でも南米大陸には愛着がある。
力が強く、大きくて体重が重い彼らとのスパーリングは常に大変だった。
自分も彼らも切磋琢磨し、お互いの攻撃で平然としていられる位に鍛えた。
肉体のぶつかり合いで得た信用、信頼はとても重要で、彼らは自分に対して常に
礼儀を通し、立ててくれていた。
彼ら南米の人達は、相手を認めるまでは疑った見方をするようだが、認めると
手の平返したように従順になり、家族のように接してくれるのだ。