ウクライナ東部で激しさを増している政府軍と親ロシア派武装勢力による戦闘は止められるのか。ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナの4カ国首脳が長時間の協議の末、停戦合意文書をまとめた。関係国や当事者はこんどこそ合意内容を着実に履行し、恒久停戦と和平につなげてほしい。
4カ国会談は独仏首脳の仲介によって実現した。戦闘の長期化は欧州の安全を脅かす。さらに米国がウクライナ軍への武器供与を検討するなか、このまま放置すれば紛争が一段と泥沼化しかねないとの危機感が根強かったようだ。
合意文書は13項目からなり、重火器の撤去、東部国境の管理、親ロ派への自治権の付与など、停戦履行のための具体的な措置を定めた。政府側、親ロ派がともに署名し、15日から停戦に入る予定だ。
これで完全に戦火が止まるかはなお予断を許さない。相互不信は根強く、昨年9月の停戦合意は破られた。今回の合意も双方の境界画定を先送りするなど、紛争再燃の火種は残っている。だが、この機会を逃せば危機打開と和平への道は完全に閉ざされかねない。
長引く戦闘でウクライナ経済は破綻の瀬戸際にある。ポロシェンコ政権はこうした現実も直視し、自制をもって親ロ派との粘り強い和平協議を進めるべきだ。
ロシアの責務も重い。親ロ派が合意を順守するよう圧力をかけていくのは当然だ。ロシアは否定しているが、欧米が批判する親ロ派への軍事支援が事実なら、直ちに兵員や武器を撤収すべきだ。国際社会はロシアへの監視の目を一段と強めていく必要があろう。
折から日本とロシアはほぼ1年ぶりに外務次官級協議を開いた。年内を見込むプーチン大統領の来日準備を進めるのが狙いだ。
安倍晋三首相は日ロの平和条約締結に強い意欲を示している。その前提となる北方領土問題の解決策を探るうえでも、ロシアにウクライナ和平への前向きな行動を促すためにも、日ロが対話を深める重要性は増している。