川崎重工から供与を受けて東北新幹線「はやて」の技術を応用してそれより速い高速鉄道列車を作り、「自主開発」と称して海外に輸出する行為は契約違反である。川崎重工は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、中国が「自主開発」と主張して中国で運行している高速鉄道車両は、技術を供与した我々のものと瓜二つ。その上、それより速いものを作り海外に輸出し始めたことに不満を表明した。川崎重工によると中国政府との契約では供与した技術は中国国内だけでしか使用できず、その技術を応用して作った製品を輸出することはできないことになっていた。「中国の高速鉄道技術は海外の技術を盗んだもの」との考えが国際社会で広まっているが、中国鉄道部は「350kmの技術があるのに、なぜ250kmの技術を盗まなければならないのか」とこれを一蹴した。中国側は「技術供与を受ける際、巨額の特許料を支払っている。合法的な使用は“盗作”にはあたらない」と反論している。
中国の北京-上海間で運行している中国版新幹線「和諧(わかい)号」について、「技術は日本やドイツから導入されたものがほとんど。安全性を無視して最高速度を設定した」と中国鉄道省の元幹部が中国紙に暴露し、中国の「独自技術」とする主張の信憑性は大きく揺らいだ。
関係者は日本側の、特に川崎重工のお家の事情を明かす。新幹線では技術流出の恐れはあったのに、川重はどうして技術を供与したのか。「技術流出は懸念したが、社内で何度も話し合って輸出を決めた。ビジネスチャンスを求めなければならないからだ」。日本国内の鉄道網の整備が飽和状態となる中、海外に活路を求めざるを得ない。高速鉄道に加え、地下鉄などの数多くの大型の都市鉄道計画を持つ巨大市場、中国に目がくらんだのだ。
(文=編集部/敬称略)