「白鵬審判批判 33度目V台無し」「慢心発言 審判を侮辱」と、スポーツ新聞の一面に辛辣な活字が躍った。それは歴史的な記録更新のニュースよりも、格段に大きいものだった。前人未踏の記録を達成した翌日の一夜明け会見で、白鵬は自らこう口を開いた。
「疑惑の相撲があった。13日目の取り直しの一番です」
母国語ではない事情を汲んでも「疑惑」という文言は最大のタブーだ。かつて相撲協会が血を流すこととなった“八百長”をも連想させかねない、横綱にあるまじき不用意な言葉だった。13日目、優勝を決める大一番となった稀勢の里との取り直しの相撲について、「自分が勝ってる相撲だった。子どもが見てもわかる」とその舌鋒は鋭かった。さらに、「本当に肌の色は関係ないんだよね。土俵に上がってマゲ結ってることは日本の魂なんですよ。みんな同じ人間です」との言葉が続く。「外国人差別があるのではないか」と、脳裏にそんな思考回路があることも、匂わせることとなってしまった。
大相撲、日本国への愛が“片思い”で苛立っている?
かねてから「外国人」「モンゴル人」と括られることを、白鵬は快く思っていない。それは、時としてヒール扱いされる、外国出身力士の誰もの思いである。なかでも、「土俵に上がったらみんな同じ力士ですから」と、白鵬はその語気を強めることが、ままあった。
そして、「大相撲への愛、日本国への愛」を、過剰なまでに口にする。その素直で純粋な思いに偽りはないはずだ。しかし、その愛が一方通行で“片思い”でしかないことを悟り、ひとり苛立っているように思えてならない。
たとえば、和製力士代表の天敵、稀勢の里に沸き上がる、手拍子や応援コール。かつては白鵬に土を付けた稀勢の里を喜び、万歳三唱までが沸き起こったことがある。愛すべき土俵がホームとなり得ず、いつまでも自分はアウェイの異邦人でしかないのだろうか――。
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