原子力規制委員会が12日に関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の事実上の審査合格を決定したことに関し、西川一誠福井県知事はコメントを発表し「国は原子力の重要性についてしっかりと国民に対し説明・説得を行うべき」とあらためて強調。野瀬豊高浜町長も「国が責任をもって原子力に取り組むメッセージをしっかりいただきたい」と述べた。審査合格で再稼働に向けて前進はしたが、政府が原発の必要性について明確な“覚悟”を示すことが地元同意の条件となる。
地元の同意手続きは政府の要請を受けた上で、高浜町会の議論を受けた町長の意向と、県議会の議論、県原子力安全専門委員会での安全性の確認を踏まえた上で知事判断となるとみられる。
野瀬町長は同町役場で記者団に、同意手続きの判断材料として▽町会の判断▽審査書の内容をまとめたビデオを町内で放送し町民の質問に答える▽エネルギー政策に関する国の覚悟▽防災対策の課題について国が支援し解決策を示す―の4点を挙げた。
判断のスケジュール感については「年度末か4月にかけて想定もされるが、かなりタイト。町民向けの放送も一定期間が掛かる」と述べた。
同町会の的場輝夫議長は、今月26日に議会運営委員会を開き、審査合格を受けた対応について3月定例会で決めることを明らかにした。4月の統一地方選で改選を迎えるため「できれば現在の任期中に結論を出したいと思う議員が多い」としたが、国からの要請内容なども踏まえる必要があると述べた。
一方、知事は原発に対する国民の理解が進んでない上、高浜の審査も工事計画や保安規定の認可などの残りの手続きが残っており、まだ同意判断をするタイミングではないとの考えとみられる。
背景には、九州電力川内(せんだい)原発をめぐって、鹿児島県の再稼働同意後も規制委の審査が長期化していることがある。知事は「規制委は今後の審査を遅滞なく進める必要がある」と指摘。今後の審査状況を含めて「プラントの安全性や事業者の運営体制を厳正に確認していかなければならない」とし、早期の判断に慎重な姿勢を示した。
再稼働に向けては重大事故時の広域避難計画も重要なポイントとなる。先行する川内をみると、規制委が審査書を決定した昨年9月、政府は原子力防災会議を開いて避難計画の内容を点検し、安倍晋三首相が了承した。福井県の避難計画は県境をまたぐ広域避難に関する課題がまだ残っており、県議の1人は「課題を解決して国の防災会議に諮られることも要件」とみている。
電力消費地の関西地方の動向も影響しそうだ。特に高浜原発から30キロ圏内に7市町が含まれる京都府は立地地域の安全協定に準じた内容の協定締結を関電に求め、関電も再稼働までに結びたい考えだ。山田啓二知事は規制委や関電に高浜の審査結果の説明を求める方針だが「(再稼働の)同意権は難しい」とも述べており、地元同意の範囲については問題にならない可能性が高い。