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高浜3、4号新基準合格 地元判断、十分時間かけよ
(2015年2月13日午前7時30分)
関西電力高浜原発3、4号機が原子力規制委員会の新規制基準に合格した。九州電力川内1、2号機(鹿児島県)に次いで2例目。再稼働は今夏以降とみられる。経済最重視の政府、経営環境が厳しい関電は再稼働を急ぎたいだろうが、安全性への住民理解が不十分なまま拙速に手続きを進めれば、世論の過半数を占める「再稼働反対、慎重」の声が増すだけだ。スケジュールありきでなく、地元や県は同意手続きに十分時間をかけるべきだ。
再稼働への工程は、先行する鹿児島県方式がモデルになる。今後、工事計画審査や保安規定審査、使用前検査などの設備チェックが必要。政府は「世界で一番厳しい規制基準により安全性が確認された原発は再稼働を進める」との方針だ。
地元同意は単なる手続き論とも読めるが、川内原発のケースでは保安規定の認可が出る前に鹿児島県が同意した。現場重視の姿勢で原子力行政に厳しい取り組みを積み重ねてきた福井県だ。このような軽々な判断はありえない。
西川知事は「原発の重要性と再稼働の必要性について国民理解を得るため国が前面に立つべき」と再三指摘している。原発の意義とともに、東京電力福島第1原発事故の教訓がどう生かされ、事故制圧と防災体制がどこまで強化されたか、政府、規制当局は丁寧に説明責任を果たすべきだ。
再稼働同意に関わる知事、県会、地元高浜町会議員は今春の統一地方選で改選となる。疲弊する地元経済の活性化を期待する地元町には改選前の同意判断を視野に入れる向きもある。
重要なのは地域住民の不安や意思をどう尊重し、反映していくかだ。国のスケジュールには「住民説明会」が盛り込まれている。鹿児島県も実施したが、野瀬豊高浜町長や県は消極的で、「ビデオ説明会」として町民に視聴してもらい、意見を聞く考えのようだ。
反対派の「妨害」を懸念しての判断だろうが、反対も「民意」の表れだ。自己閉鎖的対応は行政不信を増幅させる。慎重に準備を進め、全ての住民に開かれた説明会になるようリスク軽減に努めてもらいたい。
今後の手続きに向けては質の高い「福井方式」を確立すべきだ。県原子力安全専門委員会による検証も厳格な検討を加えるよう熟議を求めたい。万一の事故に備えた住民避難計画の課題もある。規制委は原発のハード面だけを規制の対象としており、肝心な住民安全に向けた防災への視点に欠ける。県や地元の計画に対する「第三者」の客観的な検証が必要ではないか。
もう一つの難題は、原発から半径30キロ圏に一部が入る京都府や滋賀県への対応だ。「同じような負担を強いられる」と反発する隣接県に対し、政府は「地元」の範囲を示さないままだ。
厳密な「地元同意」は立地自治体に限定したとしても、立地県以外では全国で唯一、京都府舞鶴市の一部が5キロ圏に入る。福島事故を教訓にすれば、電力事業者との安全協定締結や立地並みの説明が求められよう。関電は本県はじめ周辺の関係自治体に、より積極的な情報開示と協力姿勢を示すべきである。
