西村宏治
2015年2月13日07時25分
関西電力の高浜原発3、4号機が12日、再稼働に一歩近づいた。約2年前、関電は原発停止を受けて値上げした。再稼働すれば理由が少し薄らぐ上、最近は原油価格も下がっている。それでも関電は4月の再値上げを申請中だ。いったいなぜなのか?
「低価格の電気を届けるため、再稼働は大変重要。その一歩」。高浜3、4号機の申請を原子力規制委員会が許可したことを受け、記者会見した関電の豊松秀己副社長は語った。
関電の電気代は2011年の東日本大震災後、相次ぐ原発停止で火力発電の燃料費が増え、急上昇した。月300キロワット時を使う標準的な家庭なら、震災前の月6400円ほどから、今年2月は8097円に。2割超も上がった。
家庭の電気代のうち、最も金額が大きいのは「本体料金」だ。電力会社が、原発や火力など、どの発電所でどれだけ発電し、いくらかかるかをあらかじめ計画してはじき出す。電力会社が不当に高くしていないかどうか、経済産業省が審査して認める。
その本体料金を、関電は13年5月に値上げした。前提にしていた原発による発電が見込めなくなったからだ。もともとの計画を超えて火力で燃料を使う分を、値上げで補わざるを得なくなった。
電気代には、本体料金に加減される「燃料費調整部分」もある。ただ、これは計画した量の燃料を買うときの価格の上下分を、毎月の料金に反映させる仕組みだ。今回の関電のように、何で発電するかという根本の想定が崩れた分は調整されない。
前回値上げの際、関電は原発が「4基」動くという前提で計算していた。高浜3、4号機と大飯原発3、4号機だ。
だが、実際は「0基」になった。また根本の想定が崩れた。経営的には赤字が続き、4月の再値上げ申請に至った。申請通り実現すれば、標準家庭の電気代は月8967円。すでに再値上げした北海道電力に次ぐ高さになる。
今回の再値上げでも、原発は高浜の「2基」が11月に動く前提を立てている。ただ、工事計画などの審査はこれからで、「越えるべき課題はかなりある」(豊松副社長)。また、住民らが高浜の再稼働禁止の仮処分を福井地裁などに申し立てており、禁止となれば再稼働は遠のく。
原発「0基」が続けば、再値上げの前提も崩れる。1月、経済産業省の会合で関電の八木誠社長は言った。「懸念しているのは訴訟。(原発ゼロが)長期化する場合は、総合的判断が必要だ」。再々値上げの可能性もある。
PR比べてお得!