こんにちは、デザイナー兼イラストレーターのもりたです。
最近、うら若い後輩たちが意外とフォントのあれこれについて知らないということに気付きました。なので、フォントのことについて何回かに分けて書いていきたいと思います。
第1回目は、プロになりたてのデザイナーだとうっかり間違えることも多い、「フリーフォント」について。
初歩的な話しかしていないので、もう何年もデザイナーをやってる人にとっては常識なことばかりだと思います。
いろんな人に叱られたり肝を冷やしたりしながら覚えてきたことだと思うので、若手の子が迷ったとき、こんなことも知らないの?と言う前に、ぜひこの記事のURLをそっと渡してあげてください。
「いろんなフォントを使いたい……。でもお金を払うのは嫌」そんなことを思ってませんか?
有料フォントのほうが文字の形もきれいで使いやすいですし、「優れたコンテンツには、それを作ってくれた感謝に見合うお金を払うべき」が私のポリシーです。
しかし、フリーフォントを便利に感じる気持ちも分かります。必要な場面に合わせて、無料と有料を使い分けるのが一番良いのではないでしょうか。
そして使い分ける場面を見極めるためにも、「フリーフォント」を正しく賢く使うための知識を確認しておきましょう。
フリーフォントとは、慣習的にフォントファイルが無料でダウンロードできるものすべてを指します。
無料でダウンロードできるとはいえ、権利者(多くは制作したデザイナー)が著作権を放棄しているわけではないので、フリーフォントでも権利者が存在しない場合(著作権切れとか)を除いて、フォントをどのように使用していいのかは権利者が指定することができます。
つまり、「これには使っちゃダメ」と権利者が禁止することもできるわけです。フリーフォントでも。
「なんで!」とか「無料で配ってるんだからどう使われても文句言うべきじゃない!」とかそんな発言は却下です。
そういうふうに法律で決まってるんだ! 黙ってろ!
ざっくり言うと権利者の厚意で無料で配布されているフォントや著作権切れのフォントなどをフリーフォントと呼ぶってことです。
とは言え、フリーフォントという言葉は便利に使われているため、「無料でダウンロード可能な、有料フォントのデモ版」もフリーフォントとして紹介されていることがあります。
もちろんデモ版ですから、そのまま制作物に使用することはできません。気をつけましょう。
このように一口にフリーフォントと言っても使用を許可されている範囲は千差万別です。
そのため、フリーフォントを使用するときは、以下のことを確認する必要があります。
デザイン系ブログでたびたびフリーフォントが紹介されていますが、使用の際は規約をご確認くださいと書かれているのはこのためです。
海外のフリーフォント配布サイトには、利用規約の正確性が怪しいサイトがたくさんあります。どこで探したらいいか悩んだときは、ここに紹介するサイトを使ってみてください。
10年近く前から運営されているので登録数が多く、知名度もある海外のフリーフォント投稿・配布サイトです。やや時代遅れの感はありますが、なんだかんだで登録数は増えてますし活発に使われているようです。
海外のフリーフォント配布サイトは権利者ではない人間が勝手にフォントファイルをアップロードしているものが多い中で、ここは本人がアップロードしていることが多く、比較的信頼できます(あくまで比較的)。
ここではフォントを投稿する際に、投稿者が以下の中から利用規約を選べるようになっています。
この中で商用無料で使えるものはPublic domain / GPL / OFLと100% Freeです。
dafont.comでフォントを探す際に、利用規約で絞込をかけられるので活用しましょう。
カテゴリーを選んで、「More options」をクリックします。
利用規約を絞り込みます。
また、商用使用無料でも著作権表示や著作者サイトへのリンクが必要な物もあるので、必ず著作者のサイトなどで詳細を確認しましょう。
上図のところにリンクが付いている場合はアップロードユーザーのサイト情報が入力されています。
説明は必要ないですね、安心安全のGoogle Fontsです。
オープンソースフォント(後述します)だけを集めているので、基本的に目的を問わず自由に使用することができます。もちろんGoogleのサーバーから呼び出してウェブフォントとして使用することも可能です。
あとGoogleが制作した「Open Sans」や「Noto Sans」、「Roboto」などのフォントもここに収録されています。
個人的には、「Open Sans」が好きです。
前述のdafont.comやGoogleFonts、FONTSPRINGなどに登録されたものの中から、商用利用無料なフォントをまとめて掲載しているサイトがこちら(つまりGoogle Fontsのものは全部入ってる)!
フォント販売サイトの「FONTSPRING」と同じところが運営しているので、安心して使うことができます。
人力で利用規約の詳細を確かめているので、利用規約がないもの・怪しいものは入っていません。更新速度はそれほど高くないので、最新のものも含めて探したいときは直接それぞれのサイトを利用しましょう。
上記のように配布サイトから探すのも手ですが、「Behance」や「Dribbble」といったデザイナーが自分の作品を投稿しているSNSで、フォントファイルを配布しているケースも多くあります。
探すのに手間はかかりますが、質が高く、権利元のはっきりしているフォントを探すことができます。
個人が運営している(?)日本語の数少ないフリーフォントまとめサイトです。日本語フリーフォントに関しては一番充実していると思います。
配布ページのどこからダウンロードできるかまで掲載している親切さ。各フォントにつけられたコメントがなんとも温かいです。
ユーザーが勝手にフォントファイルをアップロードする形式ではなく、フリーフォントを配布しているURLを管理者に連絡して掲載されるスタイルのまとめなので、権利元が分からないフォントは掲載されていません。
基本的には信頼できるdafont.comですが、下記ユーザーが投稿しているフォントはよく見ると有料フォントに酷似したものが多くアップされています。
特にChopin Script(ショパンスクリプト)は人気で、英語・日本語問わずいろんなブログで紹介されていますが、Polonaiseという有料フォントの改変ではないかとコメント欄で指摘されています。
https://www.fontshop.com/families/urw-polonaisee
これがPolonaise。有料です。
こっちがChopin Script。無料で商用利用可能として配布されています。
いやーそっくりですね!
アップロードユーザー本人は「ある雑誌に掲載されていたフォントを紙から起こしてデータ化した」と説明していますが、有料フォントと酷似した無料フォントを使うことはあまり好ましいとはいえません。
このように出所の怪しいフォントは、どんな配布サイトにおいてもアップロードしたユーザーのプロフィールやポートフォリオサイトなど詳細な情報が載っていません。
デザイナーが商用利用も許可してフォントを配布する場合、自分の他の作品を見てもらう呼び水にしていることがほとんどですので、何も載せていないのは後ろ暗い理由がある可能性が高いです。
ついうっかり・・・を防ぐためにも、アップロードユーザーのサイトへのリンクがない、あるいはプロフィール詳細が分からないフォントは、使用しないほうが無難でしょう。
厳しいことを言うようですが、英語が読めない、だから規約が理解できない、またはどこに規約が書かれているか探せないという方は、海外サイトで配布される素材を使用すべきではないと個人的には考えています。
例えば試食の文化を知らない人が試食品と売り物の差が分からずに売り物を食べてしまったら、一度は故意ではないと判断されるかも知れません。しかし、試食という文化を知った二度目以降は、意図的にルールを無視したと言えるでしょう。
あなたは今、どんなフリーフォントにも規約が存在し、使用の制限があることを知りました。それなのに自分が英語を理解していないと分かった上で、英語で規約が書かれたフォントを使うということは、つまり意図的にルールを無視している状況ということになります。
大丈夫、単語をひとつひとつ調べるだけでも文章の意味を把握することは難しくありません。読めないと言って無視せずに、必ず理解する努力をしましょう。
自信がないときには、身近な英語の得意な人に相談してください。
近年、漢字が収録されている商用使用可能かつ無料の日本語フォントが増えましたね。はんなり明朝しかり、うつくし明朝しかり。
これらのフォントの共通点はなにか?
それは、漢字部分にオープンソースフォントを使用していることです。
まずは、オープンソースとはなにか確認してみましょう。
オープンソース 【 open source 】 オープンソースソフトウェア / OSS / Open Source Software
ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを、インターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行えるようにすること。また、そのようなソフトウェア。
引用元:IT用語辞典
http://e-words.jp/w/E382AAE383BCE38397E383B3E382BDE383BCE382B9.html
つまり簡単に言うとオープンソースフォントとは、フォントを作成・編集するためのファイルが公開されていて、以下のことが明言されているフォントのことです。
上記に当てはまるのは、厳密には「オープンソースライセンス」と「フリーソフトウェアライセンス」があり、またそれぞれにいくつかの種類があるようなのですが、細かいことはWikipediaのリンク張っておいたんでそちらを読んでください!
そしてこれから紹介するフォントの3つの内2つは、派生のフォントは再配布時にライセンスを追加してはいけないと利用規約で決められています。
これはオープンソースライセンスの「再配布において追加ライセンスを必要としないこと」という定義要件や、フリーソフトウェアライセンスの「コピーレフト」の概念によるものです。
ざっくり言うと、例えばオープンソースフォントの漢字と自作のひらがなを合成して制作されたフォントでも、ひらがなの制作者が勝手に有料フォントにして利益を得たり、著作表示記載必須にするなど、ライセンスを変更することができないわけです。
つまり、なんで漢字が使える無料の日本語フォントが増えてるかというと・・・。
からなんですね! オープンソースバンザイ!
喜んだところで、現在公開されている日本語の主なオープンソースフォントをまとめてご紹介しましょう。
IPA(情報処理推進機構)という法人が配布している、おそらく現時点では一番派生フォントが多い日本語オープンソースフォント。
デザイナーが作成した仮名や英数字に、IPAフォントで漢字を補うという使われ方が最も多いと思います。ゴシック体と明朝体、両方用意されています。
https://store1.adobe.com/cfusion/store/html/?store=OLS-JP&event=displayFontPackage&code=1967
2014年の夏にリリースされた新しいオープンソースフォントで、英語での名前は「Source Han Sans」。AdobeがGoogleと共同開発したフォントです。名前の通り、ゴシック体のみのフォント。
Googleでは、NatoSansという名前のさまざまな言語に対応できるフォントを作るプロジェクトを行っていて、こちらでは「Noto Sans CJK」という名称で配布されています。
ウェイトの名前が違ったりしますが、中身は一緒です。源ノ角ゴシックの方が名前としては浸透しているのでこちらで呼ぶことにしますね。
http://mplus-fonts.sourceforge.jp/mplus-outline-fonts/index.html
デザイナーの森下浩司さんが制作したフォント。
厳密に言うとオープンソースライセンスじゃないんだけど、「SourceForge.JP」で公開してるから“オープンソース系”ってことでよくないですかね? ダメ?
こちらもゴシック体のみですが、文字の形がとてもきれいで、正方形に収まる丸っぽいフォルムが特徴的です。設計の違う2種類の仮名と、仮名に合わせることを前提に作られた4種類の英数字が用意されています。
実は現在公開されているのは「公開試験版」、よく言うところのβ版で、漢字は随時開発中だそう。そのため、今回紹介する3つの中では一番漢字の収録数が少なく、派生フォントではIPAゴシックの漢字と合わせているものが多いです。
デザイナーなら、一度は本文をウェブフォントで表示させるサイトを作ってみたいと思ったことがあるでしょう。あるでしょ?
しかし、ウェブフォントとして使うということは、フォントファイルをインターネット上にアップしないといけないわけです。
フォントファイルをインターネット上にアップロードすることは、多くのフォントの規約で禁止されていて、例えばモリサワパスポートの契約をしていてフォントファイルが手元にあるから勝手にアップしてサイトの本文に使おう!ということはできません。
その点、オープンソースフォントは使用する用途に制限がないので、自由にウェブフォントとして活用することができます。サブセット化などの軽量化対策は必要だと思いますが、IPAフォントや源ノ角ゴシックであれば、日常的な文章なら表示できない漢字もありません。
ついでに、スマホサイトで使えばBoldが表示されない!なんてこともなくなるわけです。
まだちょっとだけハードルの高い「本文がウェブフォント」なデザイン、オープンソースフォントで挑戦してみてはいかがでしょう。
最後にオープンソースフォントを本文に使用しているサイトを紹介したいと思います。
使用フォント : フロップデザインフォント+ http://www.flopdesign.com/freefont/flopdesignfont.html
「新人デザイナーに口で説明するより、これ読んどいてで済ませられる記事」を目指して書きましたが、いかがだったでしょうか?
アマチュアデザイナーやデザイン勉強中の人にも知っておいてほしい内容をまとめたつもりなので、ぜひ拡散してください。ぜひ。また、説明を簡易にした部分も多いので、ご指摘などありましたら教えていただけると幸いです。
次回は
の3本立てを予定しています。次回もよろしくお願いします。
もりたでした。
【もっと知りたい!そんな方にはこちら。】
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