中東・アフリカ

イスラム国ではなく「ダーイシュ」、
弱点を突いて解体せよ
元バアス党員と元イラク軍人たちが夢想した世界とは

2015.02.06(金)  松本 太

ダーイシュ内部の勢力争いの向こうに見えるもの

 しかし、昨年来、これらの元バアス党員や元イラク軍人たちも、組織の幹部の地位にいまだ多くついているとはいえ、急速に拡大し変化する組織の中で次第に台頭する過激なサラフィー・ジハード主義者たちに意志決定権を脅かされつつあるという見方もむしろ強くなってきている。

 ダーイシュが驚くほどのスピードで変化する中で、現在、その内部に起きつつあるこの複雑なダイナミズムが様々な現象の背後にあることも同時に認識しておく必要がある。これは、悪魔の外套をまとっていたはずの人々が、悪魔そのものに変わりつつあるのかもしれないということなのだ。

 人質を斬首するという行為も、このようなめまぐるしく変わりゆくコンテキストの中で、昨年8月から確信的に連続的に行われてきていることを理解する必要がある。

 サラフィー・ジハード主義者と元バアス党員や元イラク軍人という二項対立の果てに何が見えるのだろうか。そして現在、継続されている有志国による空爆が、現在の組織の幹部をも次第に根絶やしにしていくとすれば、我々は来るべきダーイシュの変化の行く末に一層目を凝らして見極めるべきなのだ。

 2003年に終わったはずのイラク戦争は、実はまだ終わっていない。イラクの本当の戦後は、ダーイシュとの戦いの末にようやくやってくるのだろう。そして、その未来の姿は、ダーイシュの本当の正体を見定めて初めてようやく始まるのだ。

 イラクの復興にコミットした私たちは、イラクやヨルダンなどの周辺国への心からの支援を止めてはならない。私たちのコミットメントが揺らげば、ダーイシュはその影響力を伸張させることになろう。

 私たちにひるんでいる暇はない。ダーイシュとの戦いにおいては、地域全体の秩序回復と真の復興への、私たち自身の一貫した真摯な姿勢が問われているのだから。

(本稿は筆者個人の見解である)

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