自称カリフのアブ・バクル・アルバグダーディをはじめとして、現在の「ダーイシュ」の幹部の相当数が実際にキャンプ・ブッカの出身者なのである。この点で、最近公表された元MI6のプロフェッショナル、ロバート・バレットによる「イスラム国」と名付けられた詳細な分析は、巷で出版されている凡百の解説書や断片的な新聞記事をその明晰さにおいてはるかに凌いでいる。
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彼らは、幸いにも拘置所や刑務所に入れられたがために、米軍とイラク治安軍、そしてイラクの部族からなる覚醒評議会による徹底的な攻撃(サージ)を生き延びることができた。その間に当時の「イラクのイスラム国」が、その幹部を立て続けに失った結果、拘置所にいた人々がその穴を埋め、世代交代が起きるのである。
例えば、「ダーイシュ」のナンバー2とされるアブ・ムスリム・トルコマーニは、同じキャンプ・ブッカの拘置所の出身者である。アブ・ムスリムは、元々イラク特殊部隊および軍情報部の出身のバアス党員であり、現在は、イラク全体のオペレーションを担当している(注:「バアス党」は汎アラブ主義を掲げる政党)。サッダーム・フセインの側近として仕えた革命指導評議会副議長のイッザト・イブラヒーム・アルドゥーリの子飼いと言ってもよいだろう。
さらに、アブ・アブドルラフマーン・アルビラーウィとして知られたアドナーン・アルドレイミーについて語る必要がある。なぜなら、同人の軌跡は、ダーイシュの成り立ちを語っているからだ。
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