中東・アフリカ

イスラム国ではなく「ダーイシュ」、
弱点を突いて解体せよ
元バアス党員と元イラク軍人たちが夢想した世界とは

2015.02.06(金)  松本 太

 本稿では、わずか12年弱ほどのイラク戦争後の戦後史を明らかにしつつ、ダーイシュの真の姿=その組織、戦略、そして戦術を皆さんと共有したい。そうすることによって、彼らが一体いかなる組織なのか、彼らの行き着く先がどこなのか、白日の下にさらされるだろう。

 これはダーイシュという幻の脱構築であり、その誤った認識論的な存在に終止符を打つことである。

イラク元政権関係者が築きあげた「ダーイシュ」

 ダーイシュは実にイラク的なのだ。この認識を持つことが始まりとなる。彼らは、イラクという大地から生まれた過激派組織なのだ。その秘密結社的な紐帯、そして、極度の残虐性。いずれもイラクという土壌を抜きにしては語れない。

 そして、ダーイシュを成立させしめたのは、イラク南部にあった米軍キャンプ「キャンプ・ブッカ」の拘置所であったことを決して忘れてはならない。拘置所において、旧バアス党や旧イラク軍の関係者がイスラム主義の過激なイデオロギーに目覚めていくのだ。

 それは彼らが心底からイスラム主義に感化されたというよりは、むしろ、そのあまりの実利に気がついたといった方がより的確なのかもしれない。その隠された歴史はいまだよく記述されていない。しかし、私たちは、それがいかなるものであったのか、想像することはできる。

 イラク戦争後、自らが権勢をふるったかつての国家と社会から、身ぐるみを剥がされるように追い出されたイラクのスンニ派の前政権関係者たちは、根なし草となった。いかに、戦後を生き抜くか。この大きな悩みこそが、彼らをイスラム主義の過激な思想に近づけることになる。

 自称カリフのアブ・バクル・アルバグダーディをはじめ…
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